こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「サロンに解約を伝えたのに、翌月もカードから引き落とされました」
分割払いの契約は2本あります。サロンとの契約と、信販会社とのクレジット契約です。サロンに解約を伝えても、信販会社への支払いは自動では止まりません。止めるには信販会社へ別に「支払停止等の申出書」を出します。根拠は割賦販売法の支払停止の抗弁で、サロンに主張できる事由があれば信販会社の請求を拒めます。ただし支払い方法と金額で使えない場合があり、申出をしないまま口座を空にすると単なる延滞になります。
サロンに言っても、信販会社には届かない
サロンで「分割払いで」と案内されて書いた書類は、たいていサロンの契約書と信販会社のクレジット契約書の2通です。割賦販売法はこの形を「個別信用購入あっせん」と呼びます。信販会社が施術代金をサロンにまとめて払い、あなたは信販会社に毎月返す仕組みです。
だからサロンが解約に応じても、信販会社の請求はそれとは別の話。止めたいなら、信販会社に自分から申し出る。ご相談でいちばん多くつまずくのがここ。「サロンには言いました」で止まってしまっている方が本当に多いんです。
手順1 まずサロンへ解約と返金を伝える
申出はサロンとの交渉が先です。日本クレジット協会の案内も、まず取扱店(サロン・クリニック)に連絡して解決を交渉するよう求めています。連絡がとれないとき、交渉しても解決しないときが申し出る場面です。伝えた日付・相手・内容は記録に残してください。返金額の計算はエステ・脱毛の中途解約とクーリング・オフで整理しています。
手順2 信販会社へ「支払停止等の申出書」を出す
割賦販売法35条の3の19は、個別クレジットについて、サロン側に対して生じている事由をもって信販会社の請求に対抗できると定めています。これに反する特約で消費者に不利なものは無効(同条2項)。同条3項は、信販会社から事由の内容を記載した書面の提出を求められたら提出するよう努めなければならないとしています。書面で出しておけば、この求めにもすぐ応えられます。
カードの分割払いなら30条の4、リボ払いなら30条の5第1項が30条の4を準用します。事由として案内されているのは、役務を提供してくれない、提供内容に問題がある、契約内容等に問題があるといったもの。エステなら「回数が残っているのに予約が取れない」「解約を受け付けてもらえない」です。
日本クレジット協会が記入例を公開していますが、あくまで様式見本で定型フォームではないと明記されています。書面以外の方法で申し出る場合もあるので、契約書か請求書に載っている窓口に、提出先の部署名と方法を先に確認してください。
手順3 引き落とし口座は空にしない
やってはいけないのが、申出をしないまま引き落とし口座の残高を抜くこと。それは抗弁ではなく、ただの延滞になります。信販会社は、支払の義務が履行されていない債務の額を指定信用情報機関に提供する仕組みです(割賦販売法35条の3の56)。あとのローンやカードの審査に響きます。
申出後も、受付日によっては振替停止の事務が間に合わず、その月は引き落とされることがあります。協会の案内は、後日その申出が支払停止事由に該当すると認められれば、申出の時から請求を停止したものとして精算するとしています。引き落とされても、申出をしてあれば後で精算される。
金額と支払い方法で、使えないことがある
- サロンで組む個別クレジット … 35条の3の19。支払総額4万円未満は対象外(施行令26条)
- カードの分割払い … 30条の4。支払総額4万円未満は対象外(施行令21条1項)
- カードのリボ払い … 30条の5第1項が30条の4を準用。読替えで基準が支払総額ではなく「現金販売価格又は現金提供価格」になり、エステや美容医療は役務なので現金提供価格が3万8千円未満だと対象外(施行令21条2項)
- カードの1回払い・翌月一括払い … そもそも割賦販売法の対象外(2条3項1号・4項で、契約から2か月を超えない範囲で受領するものが除かれている)
1回払いで支払ったエステ代は、この抗弁では止められません。銀行などから自分で借りて一括で払った場合も、信販会社が入らないので対象外です。ほかに、購入が営業のためのものである場合や、支払停止が信義に反する場合も申し出はできません。
8日以内なら、止めるより強い手が使える
エステティックと美容医療は、特定商取引法の特定継続的役務提供にあたります(政令別表第四の一の項・二の項)。対象は期間1か月超・金額5万円超の契約(施行令24条)。医療脱毛はクリニックの医療行為ですが、美容を目的とする医学的処置として二の項に入ります。クリニックだから制度の外、ではありません。
個別クレジットなら、法定の書面を受け取った日から8日以内はクレジット契約をクーリング・オフできます(割賦販売法35条の3の11)。このとき信販会社は、受け取っていたお金を速やかに返還しなければなりません(同条11項)。サロンとの契約も解除されたとみなされます(同条7項)。
8日を過ぎていても、勧誘の際に支払総額や施術の内容・効果、提供期間について事実と違うことを告げられた場合は、クレジット契約の意思表示を取り消せます(35条の3の15)。このときも信販会社に払ったお金の返還を請求できます(35条の3の13第4項の準用)。ただし既払金の返還は、サロンやクリニックとの契約のほうも取消しなどで初めから無効になっていることが前提です。実務では特定商取引法にもとづいてサロン側の契約も取り消すので、両方をセットで進めます。なおこの取消権は、追認できる時から1年、契約から5年で時効になります。
抗弁は「これから先を止める」手段、クーリング・オフと取消しは「払った分も戻す」手段です。申出書に既払金を返せという効力はありません。まず見るのは、書面を受け取った日から8日を過ぎているかどうか。飛ばすと、戻せたはずのお金を取り逃がします。
動く順番
- 契約書面を受け取った日を確認。8日以内ならクーリング・オフ
- サロンへ解約と返金を伝え、日付・相手・内容を記録に残す
- 解決しなければ信販会社へ「支払停止等の申出書」を出す
- 口座はそのままにしておく
- 進まないときは188へ
よくある質問
申出書を出せば払わなくてよくなりますか
いいえ。抗弁は「サロンに主張できる事由がある間、請求を拒める」制度です。事由がないと判断されれば請求は続きます。
サロンが閉店していて連絡がつきません
その場合も申し出できます。協会の案内も、取扱店と連絡がとれないときの申出先を信販会社としています。詳しくはエステ店が倒産したときの返金にまとめています。
医療脱毛でも同じですか
クリニックで組んだ個別クレジットやカードの分割・リボなら同じです。脱毛サロンと医療脱毛の解約の違いもあわせて。
おわりに
引き落としが止まらないのは、伝え方が悪かったからではありません。契約が2本あるという仕組みを知らないと、誰でも同じところでつまずきます。順番どおりに、書面で、記録を残して。それだけで進められる手続きです。進まないときは消費者ホットライン188へ。契約まわりの話は X(@tax_kiichan)でも書いています。
高額な継続契約をいったん整理し、自宅で使うものを表示条件から選び直したい方は、メイク落としは種類より4条件で選ぶも参考にしてください。
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※本記事は執筆時点(2026年9月)の法令にもとづく一般的な情報提供です。個別の契約の可否や手続きは、契約書の内容や信販会社によって異なります。困ったときは消費者ホットライン(188)や最寄りの消費生活センターにご相談ください。

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