こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「スマホ代とネット代、高い気はするんです。でも、何から手を付ければいいのか分からなくて」
答えは、契約を替える前に、いま何にいくら払っているかを1枚に並べることです。順番は、①棚卸し ②使っていないオプション・サブスクの停止 ③データ量の実測 ④プラン変更 ⑤回線そのものの乗り換え。効果がいちばん大きいのは⑤ですが、いちばん面倒で、いちばん挫折するのも⑤です。だから最後に置きます。
通信費は、金額の割に効き続ける固定費
総務省の家計調査(家計収支編)2025年(令和7年)平均によると、二人以上の世帯の「通信」への支出は1か月平均11,672円でした。これは統計上の「通信」という費目で、スマホと自宅回線だけの平均額ではありません。公開資料だけでは最新の詳しい内訳まで確認できないため、個別契約との単純比較はできません。消費支出の平均314,001円に対して約3.7%を占めるため、自分の契約内容を定期的に確認するきっかけにはなります。
3.7%は小さく見えます。それでも通信費から手を付ける価値があるのは、一度下げると、何もしなくても毎月下がり続けるからです。月1,000円下げれば年12,000円、月3,000円なら年36,000円。食費を毎月3,000円削るのは意志の力が要りますが、通信費は手続きが終われば意志が要りません。固定費の見直しの中でも、いちばん長持ちします。
順番を守る。5つのステップ
① 棚卸し ― 紙1枚に全部書き出す
家族全員のスマホ、自宅の回線、モバイルルーター、通信会社経由の月額サービス。名義・月額・契約日を1行ずつ。ここで「これ、何の料金だっけ」という行が必ず1つ出てきます。それが最初の獲物です。
② 止める ― 使っていないものを外す
忘れたままの補償サービス、音楽や動画のオプション、有料の留守番電話。まずは契約一覧を開き、本当に使っていないものだけを候補にします。料金と解約条件はサービスごとに違い、補償を外すと元へ戻せない場合もあるので、金額だけで決めず必要性を確認してから手続きしてください。
③ 実測 ― 何ギガ使っているかを3か月分見る
ここを飛ばす人がとても多いです。実測しないと「足りないと困るから」で大きいほうを選んでしまう。スマホの設定か通信会社のアプリで直近3か月分を。1か月だけだと、旅行で跳ねた月を平常時と勘違いします。
自宅に回線があるのにモバイルデータ使用量が多い場合は、端末が自宅のWi-Fiへ接続できているかを確認します。節約できる容量は使い方によって変わるため、変更前後の1か月分を端末や通信会社の画面で比べてください。
④ プラン変更 ― 同じ会社の中で直す
③の実測値に合わせて、いまの会社の中でプランを変えます。番号もメールもそのままです。乗り換えの前に、同じ会社でできることを全部やる。ここで満足できたなら、⑤には進まなくて構いません。
⑤ 乗り換え ― 最後に、余力のあるときだけ
効果はいちばん大きいのですが、番号の引き継ぎ、本人確認、開通までの空白と、やることが増えます。①〜④を済ませておけば「何をいくらで使っているか」が見えているぶん、判断が速い。引っ越しの予定があるなら、そこに合わせるのが楽です。
スマホと自宅回線は、別々に考えない
別々に最適化すると失敗します。同じ会社にまとめると割引が付くことが多く、片方だけ替えると、もう片方の割引が消えて総額が上がるからです。比べるときはスマホ+自宅回線+家族全員分の「合計月額」で見る。1回線ごとの単価で比べないでください。
ただし、まとめるほど解約しづらくなり、1つ替えようとすると全部の割引が崩れます。安さと身軽さのどちらを取るか、という話です。
事業で使っているなら、家事按分の考え方を先に決める
フリーランスや個人事業主にとって、通信費は家事按分の代表例です。この「家事と業務の両方にかかる支出」を、税法では家事関連費と呼びます。
原則として家事上の経費は必要経費になりません。例外は所得税法施行令96条に2つあります。すべての人に共通するのが1号で、主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合の、その区分できる部分です。青色申告をしている方には、同条2号に、取引の記録等に基づいて事業所得などを生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分、という定めもあります。国税庁のタックスアンサー「No.2210 必要経費の知識」も、必要経費になるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」としています。この言い回しは2号に近いものです。青色申告をしていない方は1号で判定するので、この文言をそのまま自分に当てはめて「うちは按分できない」と決めてしまわないでください。
「主たる部分」の目安は所得税基本通達45-2にあります。業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかで判定するのが原則です。ただし続きがあって、50%以下でも、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には必要経費に算入して差し支えない、とされています(2026年9月時点)。
実務で大事なのは、割合そのものよりその割合をどう数えて決めたかです。法令に「スマホは何%」という一律の数字はありません。使用時間や稼働日数といった合理的な基準で区分し、計算の過程を残す。稼働日のカレンダー、通話明細、按分率のメモ。A4で1枚あれば十分です。何も残さず「だいたい半分」と言うのが、いちばん弱い形になります。
いちばん確実なのは、按分の議論自体をなくすことです。仕事用のスマホを1台、あるいは回線を1本、生活と分けて契約する。契約を組み替えるときは、この「分ける」も選択肢に。
落とし穴と、やらなくていいこと
⑤に進むなら、先に次の5つを。後から気づくと戻せないものもあります。
- 解約金と契約期間の縛り。更新月を1か月ずらすだけで負担が変わります
- 工事費の残債。分割払いの途中で解約すると、残りを一括請求されるのが一般的です
- キャッシュバックの受け取り忘れ。数か月後に案内が届き、期限を過ぎると消えます
- プロバイダのメールアドレス。解約すると使えなくなることがあります(有料でメールだけ継続できる事業者もあります)。ログインIDにしていると後始末が重いので、先に別のメールへ移しておくと安心です
- 家族分の同時手続き。一人の本人確認が止まると全員分が止まります
逆に、特典だけを目的に毎年乗り換え続ける必要はありません。手続き、端末代の残債、解約条件、回線が使えない期間まで含めると、月額だけでは得かどうかを判断できないからです。次回の確認時期は一律に決めず、割引終了、更新月、引っ越し、使用量の変化など、自分の契約が変わるタイミングをカレンダーへ残しておきます。
今日やる順番
- スマホ・自宅回線・家族分を1枚に書き出す
- 使っていないオプションとサブスクを止める
- 直近3か月のデータ使用量を見る
- 同じ会社の中でプランを変える
- 余力があれば、回線ごと乗り換える
おわりに
通信費の見直しは、途中でやめてしまう人がとても多い分野です。たいていの人が、いきなり⑤から始めるからです。比較サイトを開いて、条件が多すぎて、疲れて、閉じる。
でも、①と②だけなら今夜から着手できます。不要な契約が見つかって外せれば、その月額分は以後の請求から減ります。全部やりきらないと意味がない、ということはありません。確認できるところまでで大丈夫ですよ。
Xでも、お金と税金の話をすこしずつ書いています。よかったら @tax_kiichan をのぞいてみてください。
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※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度・情報にもとづく一般的な情報提供です。金額はあくまで例であり、適切な配分は収入や生活状況によって異なります。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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