こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「車って、結局は持ったほうが得なんでしょうか。それとも手放して電車とタクシーにしたほうが安いんでしょうか」
毎年いらっしゃるんです。多くの方が「車両価格が安いほうが得」という前提で考えていらっしゃいます。
答えを先に言います。車の損得は、車両価格では決まりません。決まるのは「年間の総維持費」と「年間の走行距離・使う回数」の2つだけです。安く買った車でも、駐車場代の高い地域でほとんど乗らなければ、1回あたりのコストはタクシーを上回ります。
では、その「年間の総維持費」を並べます。以下は2026年8月時点の金額です。
維持費を全部並べてみる
まず、金額が制度で決まっているものから。
| 税・保険 | 軽自動車 | 普通車(1,500cc超2,000cc以下) |
|---|---|---|
| 自動車税・軽自動車税(年額) | 10,800円 | 36,000円 |
| 自動車重量税(車検時・2年分) | 6,600円 | 24,600円(1t超1.5t以下) |
| 自賠責保険料(車検時・24か月分) | 17,540円 | 17,650円 |
10,800円は2015年4月1日以降に最初の新規検査を受けた自家用乗用の軽自動車の税額です。それより前の車は7,200円、初回検査から13年を超えると12,900円。普通車も13年を超えると重課され、1,500cc超2,000cc以下ならおおむね41,400円になります。普通車の36,000円は2019年10月1日以降に初回新規登録された自家用乗用車の税率で、1,000cc超1,500cc以下なら30,500円。それ以前の登録なら39,500円と34,500円のままです。重量税の6,600円・24,600円は、エコカー減税の対象外で、初回登録(軽自動車は初回検査)から13年未満の場合の額です。13年を超えると軽8,200円・普通車34,200円、18年を超えると軽8,800円・普通車37,800円に上がり、エコカー減税の対象車なら逆に安くなります。自賠責の金額は沖縄県・離島を除く地域のものです。
自賠責保険料は2026年11月1日以降に始まる契約から改定されます。24か月契約で普通車18,560円、軽自動車18,660円。13年ぶりの値上げで、次回の車検から千円ほど増えます。
ここからは人によって変わるものです。任意保険料は年齢や等級、補償内容で動きますが、対人対物無制限の一般的な内容なら年4万円から8万円くらいの幅。車検の基本料は3万円から7万円ほど。駐車場代は地方の戸建てなら0円、都市部の月極なら月1万円から3万円以上と、維持費の中でいちばん差が出る項目です。タイヤ、オイル、バッテリーなどの消耗品が年2万円から3万円くらい。
いちばん見落とされるのが「車両価格の目減り」
実務でいちばん質問が多いのがここです。税金の世界では、車のような高額なものは買った年に全額を費用にせず、使う年数で分けて費用にします。減価償却です。
この考え方は家計でも使えます。200万円で買った車を5年乗って80万円で売れたなら、減った120万円は5年で確かに支払ったコストです。年に24万円。税金や保険料よりずっと大きいのに、通帳から引かれるわけではないので計算から抜け落ちがちです。
本当のコストは「買った値段」ではなく「買った値段と売った値段の差」です。
年間の総額を2パターンで試算してみる
足してみましょう。あくまで例で、地域と使い方で大きく変わります。
パターン1:軽自動車・地方・自宅に駐車場あり・年5,000km
軽自動車税10,800円、重量税と自賠責を1年分に割り戻して約12,000円、任意保険5万円、車検の基本料を年あたり15,000円、駐車場0円、ガソリン代を燃費20km/L・1リットル170円で約42,500円、消耗品2万円。合計年およそ15万円。目減りを年15万円と見れば実質年30万円ほど、月に25,000円です。
パターン2:普通車・都市部・月極駐車場25,000円・年8,000km
自動車税36,000円、重量税と自賠責で年あたり約21,000円、任意保険7万円、車検の基本料を年あたり25,000円、駐車場30万円、ガソリン代を燃費13km/L・1リットル170円で約10万5千円、消耗品3万円。合計年およそ59万円。目減り年30万円を足すと実質年90万円近く、月7万円超です。
同じ「車を持つ」でも、目減りを含めれば年間60万円近い差になります。駐車場代の有無で結論がひっくり返ります。
持たない場合はいくらかかるのか
代わりの手段の年額も出さないといけません。電車とバスは通勤以外なら月3,000円から1万円くらい。タクシーは1回2,000円前後。カーシェアは15分220円前後、6時間パックで4,300円前後。距離料金は6時間以内なら無料という会社が多い一方、最大手では2025年12月から「20kmまで無料、超えた分は1kmあたり20円」に変わりました。月額の基本料金(900円程度)は同額が利用料金に充当される会社が多いので、近所の用事なら実質は時間の料金だけ、遠出をするなら距離料金も見ておくと安全です。レンタカーは1日6,000円から8,000円が相場です。
逆転ラインを見ます。パターン2の月7万円に対し、カーシェアを月3回・1回6時間で13,000円ほど、タクシーを月10回足しても3万円台、電車代を足しても4万円台。都市部で駐車場代を払い、乗るのが週末だけなら持たないほうが安いです。一方パターン1の月25,000円は、レンタカーを週1回借りるのと同じくらいの水準。駐車場代がかからず週に何度も乗るなら、持つほうが安くなります。
お金に換算しにくい価値もある
正直に書いておきます。車には金額に置き換えにくい価値があります。子どもの送迎、夜の急な発熱で病院へ行くとき、親の通院、荷物の多い買い物、土砂降りの日、災害で公共交通が止まったとき。「すぐ動ける手段が家にある」ことは、計算に乗らないけれど確かな安心です。
数字で負けていても、承知のうえで持つという選び方は十分にありです。大事なのは、いくら払っているか知らないまま持ち続けないこと。「この安心に年30万円出す」と決めたなら、納得のいく支出です。
車の損得を出す3ステップ
- 去年1年の走行距離と、車を使った回数を書き出す
- この記事の項目を全部足して年間の総維持費を出す。車両価格の目減りも忘れずに
- 同じ移動を電車・タクシー・カーシェアで置き換えた年額と比べる
よくある質問
事業で使っている車の維持費は経費になりますか
なります。ただしプライベートでも使う車なら全額ではなく、事業に使った割合で按分して、その部分だけを経費にします。自動車税、任意保険料、車検費用、ガソリン代、駐車場代、減価償却費も対象です。割合は使い方で変わるので、迷ったら税務署か税理士に確認してください。
車検を安いところに変えれば維持費は下がりますか
少しは下がりますが、期待するほどではありません。車検で払う税金と自賠責保険料はどこに頼んでも同じ額で、動かせるのは基本料と整備費用だけ。それより駐車場代と任意保険の見直しが効きます。
おわりに
「車は贅沢か」に答えはありません。でも「わが家の車は年いくらか」には必ず答えが出ます。数字が見えると、手放すか持ち続けるかだけでなく、軽に乗り換える、駐車場を安いところに移す、任意保険を見直すといった中間の選択肢も見えてきます。まずは去年の走行距離を調べてみてください。
お金の小さな話はXでも書いています。よかったら @tax_kiichan をのぞいてみてください。
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※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。金額はあくまで例であり、車種・地域・使用状況によって大きく異なります。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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