こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「株の利益って、結局いくら税金を取られるんですか。特定口座にしてあるから確定申告はしなくていい、で合っていますか」
答えは、税率は合計20.315%。そして「特定口座(源泉徴収あり)なら原則として確定申告は不要」で合っています。ただし不要とは「しなくてもいい」で、「してはいけない」ではありません。申告したほうがお金が戻ってくる場面が、はっきり決まった形であります。
以下、2026年8月時点の制度にもとづきます。
20.315%の中身は、3つの税の足し算
上場株式や投資信託の売却益(譲渡益)と、配当・分配金にかかる税率は次の3つの合計です。なお発行済株式の3%以上を持つ大口株主が受ける配当は総合課税になり、この税率とは別のあつかいです。
税率20.315%の内訳
- 所得税 15%
- 復興特別所得税 0.315%(所得税額の2.1%)
- 住民税 5%
この20.315%は、給与などとは合算せず投資の利益だけで計算します(申告分離課税といいます)。だから給与が多い人も少ない人も税率は同じ。累進課税とちがうところで、よく質問されます。
たとえば、年間で50万円の利益が出た場合、税額は10万1,575円。内訳は所得税と復興特別所得税が7万6,575円(50万円×15.315%)、住民税が2万5,000円(50万円×5%)。手元に残るのは39万8,425円です。
「20%」とだけ書いてある記事もありますが、端数の0.315%を落とすと計算が合わなくなります。なお復興特別所得税は令和8年度の税制改正で課税期間が令和29年分(2047年分)まで延長され、令和9年分(2027年分)からは税率が2.1%から1.1%に下がるかわりに、新しく防衛特別所得税1%が加わります。上乗せ分は合計2.1%のままなので、20.315%という数字そのものは変わりません。
口座は3種類。手間と申告義務がまるで違います
証券会社の口座は、課税のあつかいで3種類に分かれます。まず自分がどれなのか確認してください。
特定口座(源泉徴収あり)
証券会社が損益を計算し、売却のたびに税金を差し引いて納めてくれます。だから原則として確定申告は不要。いちばん手間が少ない口座です。
特定口座(源泉徴収なし)
「特定口座年間取引報告書」は作ってもらえますが、税金は引かれていません。原則として確定申告を自分でします。報告書の数字を写すだけなので、申告そのものは比較的かんたんです。ただし給与を1か所から受けて年末調整を受けている方(給与収入2,000万円以下)で、給与と退職金以外の所得の合計が年20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくてもかまいません(この場合でも住民税の申告は必要です)。なお医療費控除やふるさと納税などで確定申告書を出すときは、20万円以下でもこの利益を申告書に含める必要があります。
一般口座
損益の計算まで自分でやる口座です。取得費がわからなくなっている古い株が出てくると、ここでいちばん苦労します。実務でも一般口座の集計に時間がかかる方が毎年いらっしゃいます。これから始めるなら、特定口座(源泉徴収あり)で問題ありません。
NISAは非課税。ただし損失は「なかったもの」になります
NISA口座で得た売却益や配当は非課税です。先ほどの50万円の利益なら、税金を1円も引かれず50万円がそのまま手元に残ります。本来かかる10万1,575円が、まるごと残るということです。
いっぽうで、あまり知られていない弱点があります。NISA口座で出た損失は、税務上「なかったもの」として扱われます。特定口座の利益と相殺することも、翌年以降に繰り越すこともできません。利益に税金がかからない代わりに、損失も税金の計算に使えないということなんです。
「源泉徴収あり」でも、申告したほうが得な3つの場面
ここが本題です。申告不要でいい人が、あえて申告して税金を取り戻すケースは主に3つです。
1. 複数の証券会社の損益を通算する
A証券で30万円の利益、B証券で20万円の損失が出たとします。A証券では30万円に対して6万945円が源泉徴収済み。B証券は損失なので何も引かれていません。
確定申告で両方を合算すると、利益は差し引き10万円。本来の税額は2万315円です。すでに6万945円払っているので、差額の4万630円が戻ってきます。内訳は、所得税と復興特別所得税の分3万630円が確定申告による還付、住民税の分1万円は翌年度の住民税の計算で精算されるという流れです。
証券会社どうしは連携していないので、申告しないかぎり自動では戻ってきません。なお、まだ確定申告書を出していない年の分なら、翌年1月1日から5年間は還付の申告ができます。
2. 損失が出た年に、3年間の繰越控除を使う
年間の損益がマイナスになった年は、その損失を翌年以後3年間くりこして将来の利益から差し引けます。今年40万円の損失を申告しておけば、来年30万円の利益が出ても課税対象はゼロ、残りの10万円はさらに翌年へ回せます。
ここに落とし穴があります。損失が出た年に申告するだけでは足りません。繰越を続けるには、その後の年も毎年、株の売買がまったくなかった年であっても、確定申告書を出し続ける必要があります。1年でも出し忘れると、そこで繰越が切れます。「去年は取引しなかったから出さなかった」という相談は、実務でいちばん多い後悔かもしれません。
3. 配当を申告して配当控除を使う
配当は申告不要のまま20.315%で終わらせてもよいのですが、総合課税を選んで申告すると配当控除という税額控除が使えます。課税所得が低めの方だと、こちらが有利になることがあります。ただし外国法人の配当(米国株など)やJ-REITの分配金は配当控除の対象外です。また譲渡損失と配当を相殺したい場合は申告分離課税を選ぶ必要があり、そのときは配当控除は使えません。どちらか一方の選択です。
申告すると、税金以外に影響することがあります
ここは慎重に書きます。確定申告をすると、その利益が合計所得金額に含まれます。この数字は、国民健康保険料の算定、配偶者控除・扶養控除の判定、自治体の各種制度の所得判定にも使われます。申告不要のままなら入らなかったものが、申告することで入ってきます。取り戻せる税金より負担増が大きくなることも、ないとは言えません。
影響の出方は加入している保険や家族構成で変わります。扶養に入っている方、国民健康保険の方、年金を受け取っている方は、還付額と合わせて一度確認してから決めてください。会社員で社会保険に加入している方は、保険料が給与の標準報酬月額で決まるため保険料への影響はありません。ただし住宅ローン控除や配偶者控除など、合計所得金額で判定される制度には影響することがあります。
よくある質問
NISAと特定口座は同時に持てますか
持てます。同じ証券会社でNISA口座と特定口座を並行して使えます。NISAの非課税枠を使い切ってから特定口座で買う、という順番が一般的によく言われる考え方です。ただし売却を予定している時期や損益通算の使い方によって、適した順番は変わります。
年の途中で「源泉徴収あり・なし」を変えられますか
その年の最初の売却が起きる前なら変更できますが、いったん売却してしまうとその年は変えられません。源泉徴収を選ぶ届出は、その年の最初の譲渡までに出す必要があります。その年に最初の配当を受け入れたときも同じです。具体的な期限は口座のある証券会社に確認してください。切り替えたい場合は年初に手続きするのが安全です。
おわりに
投資の税金は、覚えることが多いように見えて押さえどころは少ないです。税率は20.315%。特定口座(源泉徴収あり)なら原則申告不要。損失が出た年と、証券会社が複数ある年は申告を検討する。この3つで、たいていの場面は判断できます。
とくに損失の繰越控除は、知っていた人だけが得をする制度です。負けた年の申告書は書く気になりにくいものですが、あの1枚が3年間効きます。年末に損益がマイナスだったら、取引報告書を開いてみてください。
Xでも税金の話を書いています。よかったら@tax_kiichanをのぞいてみてください。
松井証券
これから口座を開くなら、まず選ぶのは特定口座か一般口座かです。特定口座(源泉徴収あり)を選べるか、年間取引報告書が出るかを先に確かめてください。松井証券は取引画面がシンプルで、分からないことを電話で聞ける窓口があります。手数料と取扱商品は変わることがあるので、開設前に公式サイトでご確認ください。
公式サイトを見る
PR
あわせて読みたい
※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

コメントを残す