こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「国民年金をまとめて払うと安くなると聞きました。でも4月に手続きしていないので、今年はもう無理ですよね?」
いいえ、間に合います。前納は10月分からでも始められます。いちばん手軽な6か月前納なら、令和8年度は口座振替で106,300円、毎月納めるより1,220円安くなります。口座振替とクレジットカードの前納は、4月開始の2年前納を除いて申込期限がありません。9月のうちに手続きすれば、通常は10月分から始まります。
得をする分かれ道が3つあります。同じ前納でも口座振替のほうが割引額が大きいこと。月々でも使える「早割」があること。前納した保険料をどの年の控除に付けるかを選べること。
令和8年度の前納額と割引額
令和8年度の国民年金保険料は月17,920円、令和9年度は月18,290円です。2年前納の割引額は、この2年度分を毎月納めた場合の合計434,520円との差で決まります。2年前納の額は翌年度の保険料額に左右される数字なので、金額を見るときは年度を確かめてください。
| 種類 | 口座振替 | 納付書・クレカ |
|---|---|---|
| 2年前納(24か月分) | 417,150円 (割引17,370円) | 418,510円 (割引16,010円) |
| 1年前納 | 210,530円 (割引4,510円) | 211,220円 (割引3,820円) |
| 6か月前納 | 106,300円 (割引1,220円) | 106,650円 (割引870円) |
| 当月末振替(早割) | 17,860円 (割引60円) | 使えません |
どの段でも口座振替が有利で、2年前納なら差は1,360円。支払う手段を変えるだけで割引額が変わります。
まとめられなくても使える「早割」
半年分を一度に出すのは厳しい、という方には別の選択肢があります。当月末振替、いわゆる早割です。納付期限は対象月の翌月末日ですが、これを1か月早めて当月末日に振り替えるだけで、令和8年度は1か月60円、年間720円割引されます。
早割は口座振替だけの仕組みです。そして申し込んだ振替方法は、辞退の申出がない限り次回以降も自動的に続きます。手続きは一度きりです。
10月からでも前納は始められる
定常時の振替日は、2年前納と1年前納が4月末日、6か月前納が4月末日と10月末日です。ただし年度の途中から始められるのは6か月前納だけではありません。口座振替には「2年前納」と「2年前納(4月開始)」の2つのメニューがあり、前者は初回の振替月に応じて13か月から最大24か月分を割引ありでまとめられます。10月末日が初回なら10月分から翌々年3月分までの18か月分です。納付書も、任意の月分から当年度末または翌年度末までまとめられます。
10月末日が初回だと、6か月前納は6か月分のまま、2年前納は18か月分、1年前納は6か月分になります。つまり6か月前納と変わらない分量まで縮むのは1年前納だけです。
締切が気になりますが、日本年金機構の案内は「いつでも申し込むことができます」。口座振替もクレジットカード納付も、前納の申込に期限はありません。ただし始まるのは手続きをした月の翌月以降で、口座の確認に時間がかかると翌月に間に合わないこともあります。9月中に出しておけば、通常は10月末日の振替で10月分から翌年3月分がまとまります。郵送は早めに。オンラインで申し込めるのは口座振替だけで、マイナポータル経由の「ねんきんネット」なら口座確認が早く済みます。クレジットカード納付の申出書は年金事務所へ出します。
ひとつ落とし穴があります。前納の初回の振替では、前月分の保険料も一緒に引き落とされます。9月に申し込んで10月末日が初回なら、106,300円+9月分17,920円=124,220円が同時に出ていきます。前納額だけを口座に用意していると残高不足になり、後述のとおり前納分は再振替されません。
口座振替とクレジットカードで締切があるのは「2年前納(4月開始)」だけです。直近の4月に24か月分をまとめたいなら、申出書を2月末日までに必着で。現金の2年前納にも別の期限があり、こちらは2月1日から事前受付で、申出書は3月末までに年金事務所へ出します。
前納した保険料は「どの年に控除するか」を選べる
ここが一番の要点です。前納した国民年金保険料は、全額を納めた年の社会保険料控除にするか、各年分に相当する額を各年に分けるかを選べます。
原則は分けるほうで、所得税基本通達では「前納した総額(割引後の金額)×その年中に到来する納付期日の回数÷納付期日の総回数」で計算します。ただし特例があり、前納期間が1年以内のものと、法令に前納の規定があるものは、全額をその年の社会保険料として申告書に記載すればそれが認められます。6か月前納・1年前納・2年前納はいずれも対象です。
所得が振れる方は、控除を重い年に寄せられるのです。令和8年度に始める口座振替の2年前納417,150円を全額その年に控除すれば、所得税・住民税の税率がそれぞれ10%の方で税額はあわせておよそ8万3千円軽くなります(復興特別所得税は考えていません)。今年は税率の段が上がった、来年は落ち着きそう。そういう年こそ寄せる価値があります。逆に所得がほとんどない年なら、分けたほうが無駄になりません。
注意が2つ。この特例を使わずに確定申告書を出してしまうと、あとから更正の請求をしても特例は使えないと通達に明記されています。決めるのは申告のときです。もうひとつ、日本年金機構が各年に分けた控除証明書を送ってくるのは、13か月以上の前納をした場合です。13か月以上前納すると、各年に分けた控除証明書が最大3年分(3枚)届きます。全額をその年に控除するなら3枚とも切り離さずに添付し、各年に分けるならその年分の1枚だけを切り離して添付します(残りは翌年以降に使うので保管してください)。自分で明細書を作る必要はありません。分けたときの端数は、最終年を除いて1円未満切上げ、最終年が残額です。
前納できない人と、つまずきやすい点
免除と前納の関係は、手段ごとに分けて考えます。全額免除・納付猶予の期間は、前払いする保険料そのものがないので前納の対象になりません。一部免除の方は、口座振替なら翌月末振替のみ、クレジットカード納付は利用できません(国民年金の免除と猶予、どちらを選ぶ?将来の年金額で変わる判断)。免除・猶予を受けた期間の保険料は10年以内なら追納できます。
6か月前納が残高不足で振替できなかった場合、前納分の再振替は行われず、次の前納振替まで割引のない翌月末振替が続きます。
月400円の付加保険料も一緒に前納できます。令和8年度の6か月前納は口座振替2,370円、納付書・クレカ2,380円(早割に割引なし)。
よくある質問
納付書で払っている場合も前納できますか
できます。6か月前納の納付期限は4月末日と10月末日。前納用の納付書が必要で、手元にない場合は年金事務所に発行を依頼してください。任意の月分から当年度末または翌年度末までまとめることもできます。たとえば令和8年10月分から令和10年3月分までの18か月分は318,040円で、割引は8,960円です。
1年前納を9月に申し込んだらどうなりますか
初回振替日が10月末日になると、1年前納を選んでも初回は10月分から翌年3月分の6か月分になります。本来の12か月分は翌年度の4月末日から。いま6か月前納で申し込んでも同じです。
おわりに
前納は、手続き1枚で毎年効き続ける数少ない仕組みです。1,220円は大きな額ではありませんが、放っておくと受け取れないお金でもあります。口座振替を選ぶ、まとまった資金があるなら10月開始の2年前納(18か月分)、そうでなければ6か月前納から始める、余裕が出たら翌年度の4月に1年前納へ上げる。それで十分です。手続きの期限ものは X(@tax_kiichan)でも書いています。
前納後も生活費の予備を残せると確認できたら、次は老後資金の置き場所です。使う時期と節税の違いは、NISAとiDeCo、どちらから始める?で比べています。
この記事のまとめ
- 令和8年度は月17,920円。6か月前納は口座振替106,300円(割引1,220円)、納付書・クレカ106,650円(割引870円)
- 10月からでも前納は始められる。6か月前納のほか、口座振替・クレカの「2年前納」は初回の振替月に応じて13〜24か月分をまとめられる。10月開始で6か月分に縮むのは1年前納だけ
- 口座振替・クレカの前納に申込期限はなく、9月中の手続きで通常は10月末日が初回。ただし初回は前月分も同時に引き落とされる(9月申込なら124,220円)
- 前納分は全額をその年に控除するか各年分に分けるかを選べる。各年に分けた控除証明書が機構から届くのは13か月以上の前納。申告後に更正の請求では特例に変えられない
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※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の手続きは年金事務所または市区町村の窓口にご確認ください。

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