こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「エステの解約を申し出たら、規約で中途解約はできないと言われました。払ったお金はもう戻らないのでしょうか」
結論から。中途解約は、法律で認められた権利です。特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たるエステの契約なら、契約書面を受け取った日から8日を過ぎたあとは、同法49条1項で、契約期間中いつでも将来に向かって解約できます(8日以内なら、もっと有利なクーリング・オフが使えます)。同条7項は、これに反して消費者に不利な特約を無効と定めています。契約書に「中途解約不可」「返金は一切なし」と書いてあっても、その部分は効きません。
まず、自分の契約が対象かどうかを見る
エステが特定継続的役務提供になるのは、2026年9月時点で役務の提供期間が1か月を超え、かつ支払う金額が5万円を超える契約です(同法41条、施行令24条・25条と別表第四の一の項)。数回に分けて通うコースや回数券は、たいてい当てはまります(サロン自身が施術する回数券は、「会員権の販売」と称していてもこちらに当たります)。この5万円は、コース料金だけでなく入会金や関連商品の代金も含めた総額で見ます。
契約書もあわせて確認してください。事業者には、契約前と契約時の2回、法定の事項を書いた書面を渡す義務があります(同法42条)。契約時の書面を受け取った日から8日以内なら、無条件で解除できるクーリング・オフ(同法48条1項)が使えます。書面をもらっていない、記載が足りない場合は、8日の数え始めがまだ来ていません。エステ契約書のどこを見るかもどうぞ。
断られたときは、こう言う
電話口で言う4つ
※契約書面を受け取ってから8日以内の方は、下の言い方ではなくクーリング・オフ(特定商取引法48条1項)を使ってください。提供済み分の対価も請求されず、払ったお金は返してもらえます(同条6項・7項)。
- 「特定商取引法49条1項の中途解約として、本日付で解約を申し出ます」
- 「解約できないという規約は、同条7項により無効と理解しています」
- 「精算金は同条2項の上限額の範囲でお支払いします。計算の内訳を書面でください」
- 「同じ内容を書面でも送ります」
大事なのは、口頭のやり取りだけで終わらせないことです。中途解約そのものは法律上の方式が決められておらず、口頭でも成り立ちます。ただ「言った・言わない」になると解約した日が動き、精算金まで変わります。電話で伝えたあと、同じ内容を書面で送って、申し出た日を残してください。内容証明は一般書留とする必要があり、加算料金は内容証明480円+一般書留480円です。内容証明までは要らない、送った記録だけ残したいというときは簡易書留(350円)でもかまいません(いずれも2026年9月時点の加算料金で、基本運賃は別途かかります)。
店が請求できる精算金には天井がある
返金でもめるのはここです。施術が始まったあとの中途解約で、店が請求できるのは次の合計(と、これに対する法定利率の遅延損害金)までと決まっています(同法49条2項1号、施行令30条と別表第四)。
- 提供された施術の対価に相当する額
- 2万円、または「契約残額」の10%に相当する額のいずれか低い額
「契約残額」には別表第四に定義があります。対価の総額から、提供された施術の対価に相当する額を差し引いた額です。契約総額の10%ではありません。
たとえば総額20万円のコースを全額前払いし、6万円分の施術を受けた時点で解約したとします。契約残額は14万円、その10%は1万4千円で、2万円より低いのでこちらが上限。店が請求できるのは6万円+1万4千円=7万4千円までで、差額12万6千円が戻ります。施術が始まる前の解約なら、上限は2万円だけです(同項2号、施行令31条と別表第四の第四欄)。上限を超える違約金は、書いてあっても無効です。
「提供された施術の対価」を、コース料金ではなく1回あたりの正規料金で高く計算してくる、という話は実務でもよく聞きます。消費者庁も、既提供部分の対価は契約時の単価が上限で、解約時だけ高い単価を定めても無効という考え方を示しています。1回いくらで割ったのか、内訳を必ず書面で。
化粧品やサプリを一緒に買っているとき
コースと同時に化粧品やサプリを買っているなら、そちらも解約できます。対象になるのは、それを買わないと施術を受けられない、という形で売られたものです。「おすすめ」で任意に買った推奨品は外れますが、購入が必要と説明されていた場合や、その商品を使う前提で施術が組まれていた場合は対象です。関連商品として政令で指定されているのは、人が摂取する動植物の加工品(いわゆる健康食品)、化粧品・石けん・浴用剤、下着、電気による刺激・電磁波・超音波で肌を清潔にし美化する器具です(施行令29条・別表第五の一号)。中途解約に合わせてこの契約も解除でき(同法49条5項)、請求の上限は、返したときは通常の使用料に相当する額(販売価格から返却時の価値を引いた額がこれを上回るときは、その額)、返さないときは販売価格に相当する額までです(同条6項)。
8日以内のクーリング・オフでは扱いが変わり、健康食品と化粧品・石けん・浴用剤は使ってしまうと対象から外れます。下着や器具は使用済みでも対象です。ただしサロンで使わされた分は、健康食品や化粧品でもこの除外に当たりません(同法48条2項ただし書)。なお、使ったら外れるという扱いは、契約書面の赤枠・赤字の欄に書かれている場合の話です。書かれていなければ、使った分もクーリング・オフできます。関連商品を解約するときの確認順もあわせてどうぞ。
それでも進まないときの相談先
ここまでで進まないなら、ひとりで交渉を続けないでください。
- 消費者ホットライン188(いやや)。全国共通の番号で、住んでいる地域の消費生活センターにつながります
- 国民生活センターのバックアップ相談(03-3446-0999、平日10時〜16時。土日祝日と年末年始は休み)。地元の窓口とは別に、直接電話して相談できます
店で組んだクレジット契約(個別クレジット)や、カードの分割払い・リボ払いで払っている場合は、信販会社・カード会社にも申し出られます。割賦販売法の「抗弁の接続」(個別クレジットは同法35条の3の19、カードの分割払いは30条の4、リボ払いは30条の5が準用する30条の4)で、店に言える事情をそのまま、支払いを求めてきた会社に主張して支払いを止められるしくみです。支払総額が4万円未満だと対象外(リボ払いは、コース料金そのもの=現金提供価格が3万8千円未満だと対象外)ですが、5万円を超えるコースを分割や個別クレジットで組んでいるなら通常は届きます。これに反する特約も無効です。ただしカードの1回払い(翌月一括)は、この抗弁の接続の対象外で、同じ主張はできません。契約書とカード明細で支払方法を確かめてください。
おわりに
その場で「規約なら仕方ない」と思ってしまう方が多いように思います。でも、規約より法律が先に立ちます。契約書と支払いの記録を手元に置いて、申し出た日を書面で残す。この2つだけで、話の進み方は変わります。
暮らしとお金の小さな工夫は、X(@tax_kiichan)でも書いています。
※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。契約内容や事実関係によって結論は個別に異なります。実際の解約や返金の交渉は、契約書と支払いの記録を持って、消費生活センターまたは弁護士等にご相談ください。

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