高額療養費は月をまたぐと合算できない|2026年8月に変わった自己負担限度額

医療費の書類を手に月ごとの高額療養費を確認する税理士きいちゃん

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「入院が月末から月初にまたがったら、高額療養費は2か月分を足して計算してもらえるんですか?」

答えは、足せません。高額療養費は暦月(1日から末日まで)ごとに計算するので、同じ一度の入院でも月をまたげば自己負担限度額は2か月分かかります。もうひとつ。2026年8月の診療分から、限度額そのものが引き上げられました。70歳未満で年収約370万円から約770万円の方なら、月の上限は80,100円+1%から85,800円+1%に変わっています。検索して出てくる「80,100円」の記事は、もう古い数字です。

月をまたぐと、限度額は2回分かかる

高額療養費は「1か月(暦月単位)にかかった医療費」をもとに決まります。全国健康保険協会も、入院期間が2か月にまたがる場合は診療月ごとに申請し、月ごとに限度額を超えた分が払い戻されると案内しています。

9月28日に入院して10月3日に退院すると、9月分と10月分でそれぞれ限度額の判定になります。医療費の総額が同じでも、1日から末日までで収まった人より手元から出るお金は重くなる。日程に融通がきくときだけ思い出せば十分です。

きいちゃんメモ

同じ月・同じ医療機関でも、入院と外来、医科と歯科はそれぞれ別に計算します。「同じ病院にかかったのに合算されない」というご相談は毎年いらっしゃいます。

自己負担限度額は5区分(2026年9月時点)

70歳未満の方の、2026年8月診療分から2027年7月診療分までの上限額です。〈 〉内は多数回該当のときの額です。

年収の目安1か月の上限額
約1,160万円〜270,300円+(総医療費−901,000円)×1%〈140,100円〉
約770万〜約1,160万円179,100円+(総医療費−597,000円)×1%〈93,000円〉
約370万〜約770万円85,800円+(総医療費−286,000円)×1%〈44,400円〉
〜約370万円61,500円〈44,400円〉
住民税非課税36,900円〈24,600円〉

厚生労働省の資料の例で確かめます(資料の例示は「年収約370万円から約510万円の方」として示されています。上の表の約370万〜約770万円の区分に含まれる方です)。この方が医療費100万円の治療を受けた場合、窓口の3割は30万円ですが、最終的な自己負担は85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%=92,940円です。医療費が200万円になっても102,940円、300万円でも112,940円。増えるのは1%分だけです。

2026年8月からは、月の上限とは別に年単位の上限(年間上限)も新しく設けられました。年収約370万円から約770万円なら年53万円、住民税非課税なら年29万円で、ここでいう1年は8月から翌年7月までです。ただし協会けんぽの案内では、年間上限の申請受付が始まるのは2027年8月から。さらに2027年8月からは所得区分がもっと細かく分かれます。

いまは、あとから申請しなくてよくなった

以前は窓口で3割を全額払って、あとから申請して払い戻しを受ける流れでした。いまは違います。厚生労働省は、窓口での支払いを上限額までにとどめる取扱いを受けるにはマイナ保険証を利用するか、事前に限度額適用認定証を入手する必要があると書いています。オンライン資格確認を導入している医療機関なら、認定証を取りに行かなくても窓口の支払いが上限額までで済みます。

ただし例外が2つあります。ひとつは、住民税非課税の区分に当たる方は、マイナ保険証を使う場合でも「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要だということ。もうひとつは、加入している健康保険にマイナンバーの登録をしていない場合も認定証が必要になることです。医療機関の対応だけで決まる話ではありません。

入院が決まったときに「マイナンバーカードで受付できますか」と1回確認しておくだけで、数十万円の立て替えが要らなくなります。

4回目から下がる「多数回該当」と、家族で足せる「世帯合算」

療養を受けた月以前の1年間(直近12か月)に高額療養費を受けた月が3か月以上あると、4か月目から上限額がさらに下がります。これが多数回該当です。年収約370万円から約770万円なら44,400円まで下がり、この額は2026年8月の見直しでも据え置かれました。

注意したいのは、回数の数え方と、適用が続くかどうかが別の話だということです。回数は世帯で数えます。協会けんぽは「療養を受けた月以前の1年間(12か月)に、同一世帯(被保険者とその被扶養者)で3か月以上高額療養費の支給を受けた場合」としているので、家族が支給を受けた月も回数に入ります。

一方、適用が引き継がれるかどうかは、同じ保険者・同じ被保険者で見ます。転職して健康保険が変わった場合や、退職して家族の被扶養者になった場合は、それまでの回数が引き継がれません。ただし同じ被保険者の被扶養者どうしの変更であれば通算できます。

世帯合算は、同じ月にかかった家族の自己負担を足せる仕組みです。70歳未満の方は、1つの医療機関の自己負担(入院・外来・医科・歯科の区分ごと)が21,000円以上のものだけが対象になります。20,000円の負担が3件あっても足せません。

きいちゃんメモ

会社の健康保険でいう世帯は住民票の世帯ではなく、同じ保険者に加入している被保険者とその被扶養者です。共働きで夫婦が別々の健康保険に入っているご家庭は、お互いの分を合算できません。国民健康保険は考え方が違い、同じ世帯に属する国保の被保険者で合算するので、住民票の世帯が基礎になります。

入院時の食事代・差額ベッド代は対象にならない

高額療養費が見ているのは、公的医療保険がきく診療の自己負担分だけです。入院時の食事代、差額ベッド代、保険外の診療分は対象外。先進医療の技術料のように保険がきかない部分も入りません。「上限まで戻ってくる」と思い込んでいると、退院時の請求書で驚くことになります。

医療費控除とは別の制度。でもつながっている

高額療養費は健康保険の給付、医療費控除は所得税の制度です。別の制度ですが、1点だけつながります。医療費控除を計算するときは、高額療養費で戻ってきた分を支払った医療費から差し引く必要があります。国税庁も「保険金などで補てんされる金額」の例として高額療養費を挙げています。窓口で払った総額のまま計算すると、控除額を多く出しすぎてしまいます。

ただし差し引くのは、その給付の目的になった医療費の金額が限度です。引ききれない分が出ても、他の医療費からは差し引きません。医療費控除そのものの条件は医療費控除は10万円を超えなくても使えるにまとめています。

よくある質問

申請の期限はいつまでですか

高額療養費の消滅時効の起算日は「診療月の翌月1日」で、そこから2年です。マイナ保険証も認定証も使えず全額払った月があれば、2年以内ならさかのぼって申請できます。ただし2026年7月以前の診療分は旧い限度額で計算されます(年収約370万〜約770万円なら80,100円+(総医療費−267,000円)×1%)。上の表の額で見積もらないでください。

限度額は世帯の年収で決まるのですか

会社員などが加入する健康保険では、被保険者本人の標準報酬月額で区分が決まります。国民健康保険は世帯の旧ただし書所得で判定します。表の年収は目安なので、自分がどの区分かは加入先に確認するのが確実です。

高額療養費があるなら、民間の医療保険は不要ですか

判断が分かれるところです。保険がきく治療の自己負担は月の上限で止まりますが、食事代・差額ベッド代・保険外の診療は対象外で、働けない期間の収入も埋まりません。貯蓄と働き方次第です。なお払った保険料は生命保険料控除の対象ですが、上限があるので払うほど税が軽くなるわけではありません。

医療保険だけで決めず、毎月の固定費と緊急用の貯蓄を同じ表に置くと判断しやすくなります。家計全体から見直す順番は、固定費の見直し、効果が大きい順に5つで整理しました。

入院が決まったら確認したい3つ

  1. マイナ保険証が使える医療機関か。使えないなら限度額適用認定証を先に取る。住民税非課税の方と、マイナンバーを登録していない方は、マイナ保険証があっても認定証の申請が必要
  2. 入院と退院が同じ暦月に収まるか。またぐと限度額は2か月分
  3. 同じ月に家族が21,000円以上の自己負担をしていないか

おわりに

高額療養費は、入院前に知っていれば打てる手がある制度です。上の3つを押さえておくだけで、実際に手元から出ていくお金が変わります。金額が2026年8月に変わったばかりなので、数字を見つけたら、いつの制度の話なのかを一度確かめてください。制度の細かい話は X(@tax_kiichan)でも書いています。

※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の判断は加入している健康保険の窓口にご相談ください。

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