20代・30代・40代でお金の置き場所はどう変わる?3つの箱で考える

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「年代によって、お金の置き場所は変えたほうがいいんですか」

答えは「変わる部分は2つだけ」です。年代で変わるのは投資の割合ではなく、先に確保しておく生活防衛資金の厚みと、すぐには引き出せない場所に置いてよい割合。ここを取り違えると、20代で解約できないところにお金を寄せてしまったり、40代になって焦ったりします。

お金の置き場所は「3つの箱」で考える

年代の話に入る前に、置き場所を3つに分けます。この分け方自体は年代が変わっても変わりません。

箱1:生活防衛資金。仕事を離れたり、病気で働けなくなったりしたときに生活を止めないためのお金。置き場所は普通預金で、金利は考えません。明日おろせることだけが条件です。

箱2:使う予定が決まっているお金。定期預金のほか、個人向け国債という選択もあります。1万円単位で買えて、発行後1年たてば中途換金できます(そのとき直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます)。金利には年0.05%の下限があります。

箱3:老後まで動かさないお金。NISAやiDeCoの出番です。2024年からのNISAは非課税で持てる期間が無期限で、生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)。年間の投資枠はつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円の合計360万円、18歳以上なら口座をつくれます(2026年8月時点)。

きいちゃんメモ

実務でいちばん多い相談は「投資の割合はどれくらいが正解ですか」です。でも箱1と箱2の中身が決まらないまま割合を決めても、あとで崩すことになります。順番は箱1、箱2、箱3。全年代で共通です。

20代は「箱1」を先に厚くする時期

20代でいちばん動きやすいのは収入そのものです。転職、独立、給与体系の変更。数か月で手取りが変わることも珍しくありません。だから箱1を先につくります。目安としてよく挙がるのが生活費の3〜6か月ぶん。これは正解の額ではなく出発点で、フリーランスの方は厚めに持っておくほうが安心できます。

気をつけたいのはiDeCoです。節税になるという点だけを見て大きく入れてしまう方がいますが、iDeCoの資産は原則60歳になるまで引き出せません。20代にとって60歳はまだ30年以上先。転職や独立でお金が要るときに、この箱には手が届きません。だから掛金を上限まで埋めることを目標にしない。少額で始めて、収入が安定してから増やすほうが続きます。なお、60歳の時点で確定拠出年金の通算加入者等期間が10年に満たないときは、受け取り始められる年齢が61歳から65歳まで繰り下がります。始める年齢によって60歳では受け取れないことがある点も、あわせて見ておいてください。

一方、箱3のうちNISAは売却すれば現金化できます。20代の増やす場所は、まずこちらから。枠の使い分けは新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の使い分けで整理しています。

30代の分かれ目は「5年以内に使うお金」

30代になると、箱2が急にふくらむ方がいます。住宅の頭金、出産や育児の費用、車の買い替え、引っ越し。金額が大きく、時期もだいたい読めるお金です。

ここでの最大の分かれ目は、5年以内に使うと決まっているお金を投資に置かないこと。値動きのある場所に置くと、使う時期を自分で選べなくなります。頭金を入れる月に相場が下がっていたら、下がった値で売るか、購入を遅らせるかの二択です。増えるかどうかではなく、期日を自分で決められるかどうかで選びます。

逆に、時期も金額も決まっていないもの(「そのうち家を買うかもしれない」)を全部箱2に寄せると、今度は箱3が育ちません。決まっているものだけを箱2へ、残りは箱3へ。箱ごとに口座を分けておくと、この判断がぐっと楽になります。口座の数の考え方は銀行口座は何個持つのが正解かに書きました。

40代は「受け取り方」から逆算できるようになる

40代の強みは、老後までの残り時間が見えることです。20代の「30年以上先」が「20年ほど先」になる。ここでようやく、箱3を引き出せない場所に寄せる判断がしやすくなります。

逆算の起点は公的年金です。老齢基礎年金は、保険料納付済期間などを合算した受給資格期間が10年以上あれば65歳から受け取れます。自分の額は、毎年誕生月に届くねんきん定期便で確認できます。50歳未満に届くのは「これまでの加入実績に応じた年金額」で、50歳以上になると、いまの加入条件が60歳まで続いた場合の見込額に表示が変わります。40代のうちは実績ベースの数字だという点だけ、頭に入れて読んでください。

iDeCoは、掛金の上限が加入区分(自営業か会社員か、勤務先に企業年金があるか)で違います。この上限は近年たびたび見直されていて、施行日ごとの図表が厚生労働省のページに出ています。人から聞いた金額ではなく、自分の区分の上限を確認してください。

きいちゃんメモ

40代でよくいただくのが「もう遅いですか」という質問です。遅いかどうかを決めるのは年齢ではなく、箱1が空かどうか。箱1が薄いまま箱3を増やすと、急な出費のたびに投資を売ることになり、いちばん増えにくい形になります。

よくある質問

生活防衛資金も投資に回したほうが有利では

箱1の役割は増やすことではなく、困ったときに投資を売らずに済ませることです。ここが普通預金にあるからこそ箱3を長く置いておけます。役割が違うので、利回りでは比べません。

NISAとiDeCo、どちらを先に始めますか

引き出せるかどうかで考えると整理しやすいです。NISAは売れば現金化できますが、iDeCoは原則60歳まで動かせません。老後まで手をつけない自信があるお金だけをiDeCoへ、という順番が安全です。

置き場所を途中で変えるのは損ですか

むしろ変えるのが前提です。転職も出産も引っ越しも、箱2が動くできごと。NISAは売却した分の非課税枠が翌年以降に復活するので、事情が変わったときに組み替えられます。

3つの箱の見直し手順

  1. 箱1(普通預金)に、いま何か月ぶんあるかを数える
  2. 5年以内に使うと決まっているお金を書き出し、箱2に移す
  3. 残った分だけを箱3へ。iDeCoは引き出せない前提で額を決める

おわりに

年代ごとの正解表があるわけではありません。同じ35歳でも、共働きの会社員の方と、開業したばかりの方では、箱1に必要な厚みがまるで違います。だから「この年代なのにできていない」と自分を採点する必要はないんです。

いま置き場所が混ざっていても、並べ替えるだけで判断はかなり軽くなります。まずは箱1から数えてみてください。回せる額そのものを増やしたいときは、投資先を探す前に毎月の固定費を見るのがいちばん早い道です。

お金や税金の小さな話は、X(@tax_kiichan)でも書いています。

※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。また、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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