国民年金の免除と猶予、どちらを選ぶ?将来の年金額で変わる判断

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「収入が減って、国民年金の保険料が払えません。免除と猶予って、どっちを選べばいいんですか?」

先に答えを書きます。払えないときは、未納のまま放置せず必ず申請してください。そのうえで、免除と猶予のどちらも選べる状況なら、免除のほうが有利です。理由はひとつで、免除された期間は将来の年金額にきちんと反映されるからです。猶予は反映されません。

フリーランスや個人事業主の方の確定申告をお手伝いしていると、売上が落ちた年に「国民年金、しばらく止めてました」とおっしゃる方が毎年いらっしゃいます。その「止めていた」が手続きを踏んだ免除なのか、ただの未納なのかで、10年後・30年後の結果はまったく違ってきます。

免除は4段階、猶予は「支払いの先送り」

まず、名前が似ている2つの制度を整理します。

保険料免除は、所得が一定の基準以下のときに保険料そのものを減らしてもらう制度です。減らす幅は全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の4段階。審査では、本人だけでなく配偶者と世帯主の所得も見られます。実家暮らしで親が世帯主だと、本人の所得が低くても通らないことがあります。

納付猶予は、20歳以上50歳未満の方が対象で、保険料の支払いを先送りにする制度です。こちらは本人と配偶者の所得だけで審査され、世帯主の所得は問われません。学生の方向けには学生納付特例があり、こちらは本人の所得だけで判定されます。

きいちゃんメモ

一部免除(4分の3免除・半額免除・4分の1免除)は、承認されたら終わりではありません。減額後の保険料を納めて初めて免除が成立します。承認されたことに安心して残りを納めずにいると、その期間はまるごと未納扱いになってしまいます。実務でいちばん多い落とし穴です。

決定的な違いは「将来の年金額に反映されるか」

老齢基礎年金の財源は、半分が国庫負担でまかなわれています。だから免除を受けた期間も、納めていない分がまるごと消えるわけではなく、一定の割合が年金額に反映されます。2009年(平成21年)4月以降の期間について、反映される割合は次のとおりです。

  • 全額免除:全額納付した場合の2分の1
  • 4分の3免除:8分の5
  • 半額免除:8分の6(4分の3)
  • 4分の1免除:8分の7

一方、納付猶予と学生納付特例の期間は、年金額には1円も反映されません。受給資格期間(原則10年)にはカウントされるので「年金がもらえなくなる」ことは防げますが、増える効果はゼロです。ここが免除との一番大きな差で、免除にも猶予にも通る条件がそろっているなら、迷わず免除を選ぶべき理由でもあります。

未納は障害年金・遺族年金にも効いてくる

国民年金は老後のためだけの制度ではありません。病気やけがで重い障害が残ったときの障害基礎年金、亡くなったときに家族が受け取る遺族基礎年金も同じ制度から出ます。そしてこれらには「保険料納付要件」があり、未納期間が多いと受け取れないことがあります。

大事なのは、免除も猶予も、この納付要件のうえでは「納めていない期間」として扱われないという点です。手続きをしていれば守られ、放置していれば守られない。事故や病気が起きる日は選べませんから、私が「とにかく申請だけはしてください」とお伝えするのは、老後の金額よりむしろこちらの理由が大きいです。

10年以内なら「追納」で取り戻せる

免除や猶予を受けた期間の保険料は、あとから納めることができます。これが追納です。追納できるのは、追納の承認を受けた月の前10年以内にある免除・猶予期間に限られます。10年を過ぎると、もう納めたくても納められません。

ひとつ注意点があります。免除や猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料額に加算額が上乗せされます。早く納めるほど安く済むということです。とくに猶予や学生納付特例を選んだ方は、追納しない限り年金額がまったく増えないので、収入が戻ったタイミングで優先的に検討する価値があります。

なお、追納した保険料は全額が社会保険料控除の対象になります。所得が回復した年にまとめて納めれば、その年の所得税と住民税が軽くなります。

申請は年度単位。さかのぼりにも期限がある

免除・猶予の申請は年度単位で、対象となる年度は7月から翌年6月までです。過去の分についても、申請書が受理された月の2年1か月前の月分までさかのぼって申請できます。もう遅いと思っている方でも、まだ間に合うことがあります。なお、学生納付特例だけは4月から翌年3月までが1年度になります。

会社を辞めた方には、失業を理由とする特例もあります。離職票や雇用保険受給資格者証を添えて申請すると、退職した本人の前年所得をゼロとみなして判定してもらえるしくみです。ただし配偶者や世帯主の所得は引き続き審査の対象になります。前年に給与収入があった方でも通ることがあるので、退職直後の方はぜひ窓口で確認してください。

申請先は、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所で、マイナポータルからの電子申請にも対応しています。保険料の月額は年度ごとに改定されますので、金額は日本年金機構の最新の案内で確認してください。

免除を使うと、その分だけ年金が減ってしまいますか

減ります。ただし全額免除でも半分は残ります。未納はゼロですから、「減るのが嫌だから何もしない」がいちばん損な選択です。

猶予のほうがよい場面はありますか

あります。実家暮らしなどで世帯主の所得が高く、免除の審査に通らないケースです。50歳未満なら猶予は本人と配偶者の所得だけで判定されるので、免除がだめでも猶予は通ることがあります。

申請は毎年しないといけませんか

全額免除と納付猶予は、申請のときに翌年度以降の継続審査を希望しておけば、翌年度からは自動で審査されます。ただし学生納付特例や、失業を理由とする特例で承認を受けた場合は、あらためて申請が必要です。

払えないときに確認したい3つ

  1. 未納のまま放置しない。免除・猶予は必ず申請する
  2. 両方選べるなら免除。年金額に反映される分だけ有利
  3. 収入が戻ったら10年以内に追納する。早いほど安い

FPカフェ(無料のお金・保険相談)

免除と猟予のどちらを選ぶかは、将来の年金額だけでなく、いまの家計にどれだけ余力があるかで決まります。保険や固定費を含めて全体を見直したい方は、無料で相談できる窓口もあります。対象年齢や申込条件、どんな資格の人が対応するのかは公式サイトで確認してください。

おわりに

収入が落ちているときに年金の窓口へ行くのは、正直しんどいと思います。それでも、申請したかどうかだけで守られる範囲が変わるのがこの制度です。納付書を封筒に入れたまま見ないふりをしている方は、まず一本電話をしてみてください。手続き自体は、思っているよりずっと簡単に終わります。

お金まわりの小さな気づきは、X(@tax_kiichan)でも書いています。

※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく、公的年金についての一般的な情報提供です。免除・納付猶予の所得基準や保険料額は改正・改定されることがあり、承認されるかどうかは個別の状況によって異なります。手続きや適用の可否については、お住まいの市区町村の国民年金窓口または年金事務所へ、税務上の取扱いについては税務署または税理士にご相談ください。

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