こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「年末調整って、会社が全部やってくれるんですよね?」
会社がやってくれるのは計算です。何を申告するかを決めるのは、あなた自身。ここがずれているせいで、本当は戻ってきたはずのお金をそのままにしている方が、毎年いらっしゃいます。
しかも年末調整の書類は、11月には締め切る会社が多いです。12月になってから思い出しても、たいてい間に合いません。今回は申告漏れが特に多い5つの控除と、そもそも年末調整では扱えない控除を整理します。8月のいま読んでおくと、秋に届く封筒を捨てずに済みます。
見落としが多い控除、5つ
1. 生命保険料控除・地震保険料控除
どちらも、保険会社から届く「控除証明書」を会社に出さないと使えません。証明書をなくしたまま黙っていた、という話は本当によく聞きます。
ポイントは2つ。ひとつは、共済(都道府県民共済やJA共済など)の掛金も対象になるものがあること。もうひとつは、契約者が配偶者名義でも、実際に保険料を払っているのが自分であれば自分の控除にできる場合があること(受取人などの要件はあります)。
地震保険料控除は、令和8年分(2026年分)の所得税で最高5万円です。火災保険とセットで契約している方が多く、証明書が火災保険の分厚い書類にまぎれているのがやっかいなところ。生命保険料控除のほうは制度が新旧に分かれていて上限額も細かいので、金額は国税庁の最新の資料で確認してください。
2. iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除)
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、全額が所得控除になります。運用益が非課税というより、こちらのほうが効きます。
注意したいのは払い方です。給与天引きなら会社が把握していますが、自分の口座から振替にしている場合は、自分で申告しないと控除されません。秋ごろに国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届くので、これを会社に提出します。実務でいちばん多い漏れが、正直これです。
3. 家族の分もふくむ社会保険料控除
社会保険料控除は「自分の給料から引かれたぶんだけ」と思われがちですが、そうではありません。生計を一にする配偶者や子ども、親の国民年金保険料・国民健康保険料などを自分が支払ったのであれば、支払った人の控除にできます。しかも全額です。
- 20歳になった学生の子の国民年金保険料を、親が払っている
- 同居している親の国民健康保険料を、自分の口座から払っている
- 転職の空白期間や退職後に、自分で国民年金・国民健康保険を納めた
いずれも給与天引きとは別なので、自己申告しないかぎり誰も気づいてくれません。国民年金は日本年金機構から控除証明書が届きますが、国民健康保険は証明書が発行されない自治体もあり、その場合は自分で納付額を書きます。領収書や口座の記録を残しておいてください。
4. 扶養・ひとり親などの人的控除
家族の状況が変わった年は要注意です。別居の親に仕送りを始めた、離婚してひとり親になった、子どもが働き始めた、逆に学生になった。こうした変化は、会社は知りません。
扶養に入れられるかどうかの所得の基準は、令和7年分(2025年分)に続いて、令和8年分(2026年分)でもさらに引き上げられました。令和8年分は、扶養親族・同一生計配偶者の合計所得金額の要件が62万円以下。収入が給与だけなら年収136万円以下です(改正前は58万円以下、年収では123万円以下)。この改正は令和8年12月1日施行なので、今年12月の年末調整から反映されます。「去年は対象外だったから今年も無理」と決めつけないでください。19歳以上23歳未満の親族については「特定親族特別控除」という制度もあり、令和8年分は合計所得62万円超123万円以下(年収136万円超197万円以下)が対象です。金額と要件は毎年の改正で動くので、必ず国税庁の最新の資料で確認してください。
5. 住宅ローン控除の2年目以降
住宅ローン控除は、1年目だけ確定申告、2年目以降は年末調整で処理します。使うのは、税務署から交付される「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」。受け取り方は1年目の確定申告で選べて、そこで扱いが分かれます(以下は、借入先が「調書方式」に対応した金融機関である場合の流れです)。
- 書面を選んだ場合:入居2年目の11月下旬ごろに、2年目以降の分がまとめて郵送されます。ただし年末残高や控除見込額が記載されているのは2年目分だけ。3年目以降も残高入りの証明書が必要なら、交付申請をしたうえで「電子交付」を希望します
- 電子交付を選んだ場合:毎年11月中旬ごろに、e-Taxのメッセージボックスに届きます。「届かない」と思ったら、まずここを見てください
もうひとつ。借入先が「調書方式」に対応した金融機関なら、年末残高等証明書を会社に出す必要はありません。対応していない借入がある場合だけ、そちらの証明書も用意します。いずれにせよ紛失すると再交付に時間がかかるので、住宅関係の書類は1か所にまとめておくのが安全です。
年末調整ではできない控除もある
ここを勘違いすると、会社に出しても突き返されます。次のものは、年末調整では扱えません。確定申告が必要です。
- 医療費控除:原則として年間10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の方はその5%)を超えた部分が対象
- 寄附金控除:ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合。特例は寄附先が5自治体以内で、申請書は翌年1月10日必着です
- 住宅ローン控除の1年目
- 雑損控除:災害や盗難による損害
ひとつ落とし穴を。ワンストップ特例を申請していても、医療費控除などで確定申告をすると、その特例はすべて無効になります。確定申告書には、ふるさと納税の分も必ず書いてください。書き忘れても、法定申告期限から5年以内なら「更正の請求」でやり直せますが、住民税の通知が届いてから気づく方が多く、手間もかかります。最初から書いておくのが確実です。
8月のいま、やっておくこと
やることは、実はとても地味です。
秋までに準備する3つ
- 控除証明書を入れる封筒やクリアファイルを、いまのうちに1つ用意する。秋から11月にかけて、保険会社・国民年金基金連合会・日本年金機構・金融機関からばらばらに届きます
- 今年、家族に変化がなかったかを書き出す。結婚、離婚、出産、子どもの就職、親の退職や同居
- 医療費の領収書と、ふるさと納税の受領証明書を、別の場所にまとめておく。こちらは年末調整ではなく確定申告で使うものです
控除証明書をなくしてしまいました
再発行してもらえます。保険会社ならコールセンターやマイページ、国民年金なら年金事務所やねんきんダイヤルです。ただ、11月は問い合わせが集中します。届かない・見当たらないと気づいたら、その日のうちに連絡してください。
会社の締切に間に合わなかったら?
あきらめなくて大丈夫です。年末調整で入れられなかった控除は、自分で確定申告すれば適用できます。しかも払いすぎた税金を取り戻す申告は、5年前までさかのぼれます。去年の分、一昨年の分を今から取り戻すことも可能です。
FPカフェ(無料のお金・保険相談)
控除証明書を見返す秋は、加入している保険そのものがいまの暮らしに合っているかを確かめるのにもちょうどよい時期です。自分で比べるのが難しい方は、無料で相談できる窓口もあります。対象年齢や申込条件、相談後に保険の提案があるかどうかは、公式サイトで先に確認してください。
おわりに
年末調整は、会社が用意してくれた「申告のチャンス」です。使うかどうかは、自分が書類を出すかどうかで決まります。難しい知識はいりません。秋に届く封筒を捨てないこと、家族の変化を思い出すこと。この2つだけで、取りこぼしはかなり減ります。
今年こそ、11月に慌てない年末を迎えましょう。
お金まわりの小さな気づきは、X(@tax_kiichan)でも書いています。
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※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。控除の金額や要件は改正で変わることがあります。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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