こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「4月に国民年金を1年分前納したのに、10月から会社員になりました。残りの半年分は払い損ですか?」
答えは、払い損にはなりません。就職した月から先の分は、あとから戻ってきます。会社に入ると厚生年金に加入し、その月からは国民年金保険料を自分で納める必要がなくなります。前納で先に納めていた分のうち重なった月分は、日本年金機構から届く「国民年金保険料還付請求書」を返送すると指定口座へ振り込まれます。口座振替で前納していた方は、請求書を出さなくても振替口座に戻る扱いになっていることが多いです。
ただ、戻ってくるお金には税金の側で1つ注意があります。戻った分は「払った保険料」ではなくなるので、年末調整や確定申告の社会保険料控除から外す必要があります。この記事では、どの月分が戻るのか、手続きの流れ、口座振替の場合の違い、控除証明書をどう読むかを順に整理します。前納の割引額や申し込み方は、姉妹記事の国民年金の前納、10月からでも間に合うにまとめているので、そちらをご覧ください。
どの月分が戻るのか。分かれ目は「就職した月」
国民年金の保険料は月単位で、月の途中で身分が変わった月は「変わった後の身分」の月として扱われます(国民年金法11条の2)。会社員になった月は、最初から厚生年金(国民年金の第2号被保険者)の月とみなされるので、国民年金保険料を自分で納めるのは、就職した月の前月分までです。就職した月の分からは厚生年金保険料が給与から差し引かれ(実際の天引きは翌月の給与からという会社が多いです)、その中に国民年金分も含まれています。
例で見てみます。令和8年4月に、令和8年度分(令和8年4月分から令和9年3月分まで)を口座振替で1年前納した方が、令和8年10月15日に就職したとします。
- 自分で納めた分として残るのは、令和8年4月分から9月分までの6か月分
- 戻ってくるのは、令和8年10月分から令和9年3月分までの6か月分
- 令和8年10月分からは、厚生年金保険料として給与から天引き
就職日が10月1日でも10月31日でも、10月分は厚生年金の月です。日割りはありません。
戻ってくる金額は、月額17,920円(令和8年度)×6か月=107,520円そのものではなく、残りの6か月分をその時点で前納したとした場合の額(前納の割引を反映した額)で計算されます(国民年金法施行令9条)。正確な金額は、還付請求書が届く方はその請求書で、振替口座へ直接戻る方は通帳の入金額で確認できます。分からないときは年金事務所で確認してください。
還付までの流れ。請求書が届いたら返送するだけ
納付書やクレジットカードで前納していた場合の流れは、次の3つです。
還付の3ステップ
- 勤務先が厚生年金の資格取得の届出をし、日本年金機構側で保険料の重複が判明すると、「国民年金保険料還付請求書」が自宅に届く
- 振込先の口座などの必要事項を記入して返送する
- 日本年金機構が請求書を受け付けてから、約1か月で指定口座に振り込まれる
自分から「返してください」と申し出る手続きは要りません。請求書が届くのを待ち、届いたら忘れずに返送する、というだけです。請求書がなかなか届かないときは、年金事務所に基礎年金番号を伝えて確認してください。
口座振替で前納していた場合は、請求書なしで戻ることが多い
口座振替の申出書は、正式には「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書 兼 還付金振込方法(変更)申出書」という名前です。令和6年3月から様式に「還付金振込方法」の欄が加わり、この申出書を出していれば、還付金が発生したときに振替口座へ振り込むことに同意した扱いになります。還付請求書を書いて返送する手間がなく、重複分はそのまま振替口座に戻ります。
申出書の「還付金振込方法」欄で「希望しない」に○をつけた方は、納付書で前納した方と同じく還付請求書が届き、返送してからの振込になります。この場合は、請求書が届くまでの期間も含めて振込まで2〜3か月程度かかると日本年金機構が案内しています(返送した請求書が受け付けられてからは約1か月です)。それより前に口座振替を始めていて欄に記入した覚えがない方も、請求書が届いたら返送すれば同じように戻ります。
年末調整・確定申告では、戻った分を控除から外す
ここが税理士として一番お伝えしたいところです。社会保険料控除の対象になるのは、その年に実際に支払った金額です(国税庁タックスアンサーNo.1130)。前納した保険料のうち還付された分は、結果として支払っていないことになるので、控除の対象には入りません。先ほどの例なら、控除できるのは1年前納の210,530円(令和8年度・口座振替)から還付された額を引いた残り、つまり4月分から9月分までに相当する額です。
控除証明書の読み方も押さえておきましょう。日本年金機構は、その年に国民年金保険料を一度でも納めた方には、年の途中で厚生年金に加入していても控除証明書を送ってきます。令和8年分は、1月から9月までに納付がある方へ、書面なら令和8年10月下旬から11月上旬、マイナポータルで電子データを受け取る設定の方なら10月中旬から下旬に届く予定です。
- 「(1)納付済額」は、1月1日から9月30日までに納付した総額。4月に1年前納した方なら、前納額がそのまま載っていることがあります
- 「(2)見込額」は、第1号被保険者でなくなった方には表示されません。就職後は空欄になるのが正常です
- 納付済額に還付前の金額が載っているときは、戻ってきた金額(還付請求書の金額、または振替口座への入金額)を差し引いた額を保険料控除申告書に書きます
就職後の厚生年金保険料は給与から天引きされ、勤務先が年末調整で集計するので、自分で書く必要はありません。自分で書くのは国民年金の分だけです。保険料控除申告書の社会保険料控除欄に「国民年金保険料」と金額を記入し、控除証明書を添付します。証明書が手元にないときの再発行の窓口は、国民年金の控除証明書をなくした・届かないときの記事にまとめています。
年末調整が終わったあとに還付が決まった場合は、その年の控除額が多すぎたことになります。まず勤務先に年末調整をやり直せるか相談し、間に合わなければ自分で確定申告をして控除額を直します。すでに確定申告を出していた場合は修正申告です。この場面の扱いは国税庁のページに明記がないので、金額が小さくても税務署に状況を伝えて確認してください。
結婚して第3号被保険者になった場合も同じ扱い
前納のあとに会社員や公務員の配偶者に扶養されることになった方も、第3号被保険者になった月以降の分は同じように戻ります。第3号被保険者は自分で保険料を納める必要がなく(国民年金法94条の6)、前納していた保険料のうち第3号被保険者になった月以降の分は還付の対象になるためです(国民年金法施行令9条)。
手続きは、扶養されることになった日から14日以内に「国民年金第3号被保険者関係届」を、健康保険の被扶養者の届出と一緒に配偶者の勤務先へ提出します。還付請求書は、この関係届が出たあとに日本年金機構から送られてきます。関係届が遅れると請求書も遅れるので、結婚の手続きの中で早めに済ませてください。
2年前納をしていた場合はどうなりますか?
考え方は同じで、就職した月から前納期間の最後の月までの分が戻ります。2年前納では翌年度分まで納めているので、戻る金額も大きくなります。なお、2年前納の控除は、納めた年に全額を控除する方法と各年に分けて控除する方法を選べます。どちらの場合も、戻ってきた月の分は控除できません。各年に分けて控除している方は、戻った月が含まれる年それぞれで、その月の分を差し引いてください。4月から始まる2年前納は3つの年にまたがるので、就職した時期によっては、就職した年・翌年・翌々年の3年分を直すことになります。納めた年に全額を控除した方は、その年の控除額を直すことになります。
前納ではなく、就職した月の分を納付書で払ってしまいました
就職した月は厚生年金の月なので、その月分の国民年金保険料は二重払いになります。これも重複納付として還付請求書が届き、同じ流れで戻ります。納付書が手元に残っていても、就職した月以降の分は納めないでください。
FPカフェ(家計のお金・保険相談)
就職や結婚で年金の種別が変わるタイミングは、保険料の払い方だけでなく、民間の保険や貯蓄の配分も見直しやすい時期です。年金と保険をまとめて家計全体で整理したい方向けに、ファイナンシャルプランナーへ相談できる窓口です。相談の条件や対象は公式サイトで確認してください。
おわりに
前納の割引を取りにいった結果、年度の途中で就職が決まると「先に払って損をしたのでは」と不安になりますが、重なった月分はきちんと戻ってきます。やることは、届いた請求書を返送すること、そして年末調整で戻った分を控除から外すこと。この2つだけです。前納を迷っている段階の方も、あとから身分が変わっても取り戻せると分かっていれば、安心して割引を使えると思います。
X(@tax_kiichan)でも、年金や税金の小さな疑問にお答えしています。
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※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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