こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「仕事を辞めてから1年近く、国民年金を払えていません。いまから免除を申請しても、もう遅いですか?」
答えは、遅くありません。免除と納付猶予は、申請した時点から2年1か月前までの月分にさかのぼって申請できます。未納のまま残っている月も、この範囲に入っていれば免除や猶予の期間に変えられる可能性があります。ただし、古い月から順に期限が切れていくので、迷っている時間がいちばんもったいないです。この記事では、困っている方が何から手をつければいいかを、手続きの順番で整理します。
さかのぼれる範囲は「納付期限から2年」
国民年金保険料の納付期限は、その月の翌月末日です。日本年金機構の案内では、納付期限から2年を経過していない月分について、さかのぼって免除等を申請できます。2年を過ぎた月は免除の申請ができず、原則として時効で納付もできなくなります(督促を受けた月は、納付の時効の扱いが変わります。後述)。
具体的な期限は機構が表で出しています。令和8年10月に申請するなら、いちばん古いのは令和6年9月分で、申請期限は令和8年10月30日(金)です(期限の2年後が土曜のため、窓口や郵送では直前の営業日までに受理が必要)。11月に入ると、令和6年10月分(期限は令和8年12月2日)が最も古い月になります。
もう1つ大事なのが、すでに納めた月は免除にできないことです。国民年金法90条は免除の対象から「既に納付されたもの」を除いています。払えた月はそのまま納付済み、払えなかった月を免除や猶予に変える、という整理になります。
年度(7月〜翌年6月)ごとに申請書を出し、前年の所得で審査される
免除・納付猶予の「年度」は7月から翌年6月までで、1枚の申請書で申請できるのは1年度分です。未納の月が7月をまたいでいる方は、年度の数だけ申請書を書きます(1年近くたまっている方は、多くの場合2枚になります)。審査に使う所得も年度ごとに違います。
- 令和6年度分(令和6年7月〜令和7年6月)… 令和5年中の所得で審査
- 令和7年度分(令和7年7月〜令和8年6月)… 令和6年中の所得で審査
- 令和8年度分(令和8年7月〜令和9年6月)… 令和7年中の所得で審査
ここでつまずく方が多いんです。会社を辞めた直後の年度は、審査の対象が会社員だったころの所得になるので、通常の基準では通りにくくなります。そこで使うのが次の特例です。
失業した方は「失業等による特例免除」をあわせて申請する
失業・倒産・事業の廃止などの事実が確認できると、失業した本人の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例があります。対象は失業等のあった月の前月からで、失業した日は離職日の翌日として数えます。機構の表(令和8年4月時点)では、令和7年に失業した方は失業の前月から令和8年6月分までが対象で、令和8年7月以降の分は令和8年7月から申請できると案内されています。いま(令和8年10月)なら、令和7年度分と令和8年度分をそれぞれの申請書で一緒に出せます。令和7年1月〜7月に失業した方(離職日が令和6年12月31日〜令和7年7月30日の方)は、失業の前月が令和6年度(令和6年7月〜令和7年6月)に入るので、令和6年度分の申請書も必要です。この令和6年度の月がいちばん先に期限を迎えます。
添付するのは、雇用保険に入っていた方なら離職票や雇用保険受給資格者証・受給資格通知のコピーです。それが用意できない場合の書類もありますが、その場合は別途「失業の状態にあることの申し立て」が必要になります。
特例で外れるのは「失業した本人の所得」だけです。世帯主や配偶者がいる方は、その人が所得の基準を満たすか、同じく失業等の特例に当たる必要があります。実家に戻って親が世帯主になっている方は、親の所得で通らないことがあります。そのときの次の手は国民年金の免除が通らなかったときの記事にまとめています。
督促状が届いている場合
未納が続くと、最終催告状、督促状と進み、督促状の指定期限を過ぎると延滞金がかかり、財産の差押えに進むことがあります。世帯主や配偶者には連帯して納める義務があり、督促状も届きます。また督促には時効の更新の効力があるので(国民年金法102条5項)、督促を受けた月は2年たっても自然に消えるわけではありません。
督促状まで来ている方は、払えないまま放置せず、指定期限より前に年金事務所へ連絡して、免除等を申請したいことと失業などの事情を伝えてください。どの月が申請の対象になるかは、そこで確認してもらうのが確実です。
免除にした月は年金額にどう反映され、あとから追納できるか
全額免除の月は、納めた場合の2分の1(平成21年4月分以降)が老齢基礎年金に反映されます。納付猶予の月は受給資格期間には数えますが、年金額には反映されません。未納の月はどちらにも入りません。一部免除は、減額された残りの保険料を納めた月だけが免除期間になり、納めていない月は受給資格期間、障害・遺族年金の納付要件、追納のいずれからも外れます。
免除や猶予の承認を受けた月は、追納の承認を受けた月の前10年以内であれば、あとから納めて年金額を満額に近づけられます。免除・猶予の承認を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が上乗せされます。追納した保険料は社会保険料控除の対象です。未納のままの月は追納の対象にならないので、まず免除や猶予に変えておくことが、あとで取り戻すための前提になります。
障害年金の面では「さかのぼり」が効かない
ここだけは早さが結果を分けます。機構は、事故や病気が起きてからさかのぼって申請しても、障害基礎年金の保険料納付要件には算入されないと明記しています。納付要件は初診日の前日において判定するためです。いま元気なうちに申請して承認を受ければ、その月は未納ではなく免除・猶予の月として数えられます(一部免除は、減額された残りの保険料を納めた月に限ります)。詳しくは免除中に病気やケガをしたら障害年金は?で整理しています。
いまからやる順番
- ねんきんネットや年金事務所で、未納になっている月を確認する
- 2年の期限が近い古い月から、年度ごとに申請書を用意する
- 失業した方は離職票などを添えて、失業等による特例免除をあわせて申請する
- 市区町村の国民年金窓口か年金事務所に出す(郵送・電子申請も可)
おわりに
払えなかった月があると、窓口に行くこと自体が気まずく感じるものです。でも免除や猶予は、払えない時期のためにある制度で、申請はいまからでも間に合う月が残っています。まずは未納の月を確かめて、いちばん古い月の期限から逆算して動いてみてください。
X(@tax_kiichan)でも、年金や税金の小さな疑問にお答えしています。
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※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。申請できる月や審査の結果は個別に異なるため、日本年金機構(年金事務所)または市区町村の国民年金担当窓口でご確認ください。

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