こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「収入が減って国民年金の免除を申請しました。払っていない期間に病気やケガをしたら、障害年金はもらえないのでしょうか?」
答えは、申請して承認された免除・納付猶予の期間は、障害年金の保険料納付要件では「納めた期間」と同じように数えます。(一部免除は、減額された残りの保険料を納めていることが条件です。)受け取れなくなるおそれがあるのは、手続きをせずに放っておいた「未納」のほうです。
ただし、老齢基礎年金の額への反映は別の話です。納付要件の中身、免除と未納の違い、年金額との関係を順に整理します。
障害基礎年金を受け取るための3つの条件
日本年金機構の案内では、障害基礎年金は次の3つをすべて満たすときに支給されます。
- 障害の原因になった病気やケガの初診日(はじめて医師または歯科医師の診療を受けた日)が、国民年金に加入している期間などにあること
- 障害認定日(原則として初診日から1年6か月を経過した日)に、障害等級の1級または2級の状態にあること
- 保険料の納付要件を満たしていること
免除を申請したかどうかで結果が変わるのは、3つ目の納付要件です。
納付要件は「原則」と「特例」のどちらかを満たせばよい
保険料の納付要件(どちらか一方でよい)
- 原則:初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること
- 特例:初診日が令和18年3月31日までにあり、初診日に65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
たとえば、20歳から初診日の属する月の前々月までの被保険者期間が144か月ある方なら、納付済期間と免除期間をあわせて96か月以上あれば原則を満たします。届かなくても、直近1年に未納がなければ特例で満たせます。
納付要件は「初診日の前日」の時点で判定されます(国民年金法30条1項)。日本年金機構は、病気やケガが起きてから過去にさかのぼって免除を申請しても、障害基礎年金の納付要件には算入されないと案内しています。さかのぼり申請(2年1か月前まで)は、初診日より前に済ませていてこそ意味があります。
免除・猶予は数に入り、未納は入らない
原則の3分の2でも特例の直近1年でも、保険料免除期間は納付済期間と同じ側に数えます。日本年金機構の一覧表でも、障害・遺族基礎年金への算入は「納付」「全額免除」「一部免除」「納付猶予」がいずれも「あり」で、「未納」だけが「なし」です。
保険料を払えずにいる月で比べると、こうなります。
- 免除を申請して承認された月は、直近1年の「未納」に当たらない(一部免除は、減額された残りの保険料を納めた月に限る)
- 何もしなかった月は未納。直近1年に1か月でもあれば特例は使えず、原則の3分の2だけで判断される
「払えないから払わない」と「払えないから申請する」は、いざというときの結果がまったく違います。免除の申請を後回しにしている方は実務でも少なくありませんが、これは万一の保障をつなぎとめる手続きでもあります。
一つだけ注意があります。4分の3免除・半額免除・4分の1免除は、減額された残りの保険料を納めてはじめて免除期間になります(国民年金法5条4〜6項)。残りを納めていない月は未納と同じ扱いで、障害の納付要件にも、老齢基礎年金の受給資格期間にも入らず、追納もできません。
年金額への反映は、納付要件とは別の話
障害基礎年金の額は、納めた月数で増えたり減ったりしない定額です(国民年金法33条)。令和8年度は2級が年847,300円、1級が年1,059,125円(昭和31年4月2日以後生まれの方)で、生計を維持している子がいれば、2人目までは1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円が加算されます。
一方、65歳から受け取る老齢基礎年金は、納めた月数で額が決まります。全額免除の月は、全額納付した場合の2分の1(平成21年4月分以降)、納付猶予の月は年金額に反映されません。納付要件では「納めた月と同じ」でも、老後の年金額では「納めた月より少ない」というのが正確な位置づけです。
この差は、承認された期間の保険料をあとから納める「追納」で埋められます。追納できるのは追納の承認を受けた月の前10年以内の期間なので、収入が戻ってから検討できます(免除・猶予の承認を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降は、当時の保険料に加算額がつきます)。くわしくは国民年金の追納は10年以内の記事に、免除と猶予のどちらを選ぶかは国民年金の免除と猶予、どちらを選ぶ?にまとめています。
払えないときは、未納にせず申請する
申請先は、住所地の市区役所・町村役場の国民年金の担当窓口か、お近くの年金事務所です。電子申請もできます。免除・納付猶予の年度は7月から翌年6月までで、申請は原則として毎年度必要です(全額免除と納付猶予は継続審査を希望できます)。
退職した方には、離職票などの写しを添えてご本人の前年所得を問わずに審査される「失業等による特例免除」もあります(配偶者や世帯主も所得の基準を満たしているか、失業等の特例に当たっている必要があります)。
すでに通院している病気があります。今から申請しても意味はありませんか?
その病気の納付要件は、その初診日の前日の時点で決まっています。ただ、これから起きるかもしれない別の病気やケガへの備えや、老齢基礎年金の受給資格期間のために、申請する意味は残ります。いま通院している病気で受け取れるかどうかは、初診日や加入記録によって変わるので、年金事務所で確認してください。
FPカフェ(家計のお金・保険相談)
障害基礎年金は定額で、それで暮らしが回るかは家計しだいです。民間の保険や貯蓄をどこまで持つかを、年金とあわせてファイナンシャルプランナーに相談できる窓口です。対象年齢や申込条件は公式サイトで確認してください。
おわりに
保険料が払えない時期は気持ちも沈みがちですが、免除や猶予を申請しておけば、万一のときの障害年金への道はちゃんと残ります。払えないことは恥ずかしいことではありません。未納のままにせず、一度手続きをしておく。それがいまの自分と将来の自分の両方を守ります。
X(@tax_kiichan)でも、年金や税金の小さな疑問にお答えしています。
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※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。障害年金を受け取れるかどうかは、初診日や加入記録、障害の状態によって個別に判断されます。具体的な状況は年金事務所でご確認ください。

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