こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「会計ソフトで帳簿をつけていたら、現金の残高がマイナス3万円になっていました。どこを直せばいいですか?」
答えは、残高を一度にプラスへ戻すのではなく、マイナスになった最初の日を探して、その前後の仕訳を直すです。財布の中のお金がマイナスになることはないので、帳簿の現金がマイナスなら、入金の記録が足りないか、出金の記録が多すぎるかのどちらかです。途中の日付でマイナスが出るときは、次の5つの原因を順に疑ってください。
帳簿をつけ始めた最初の年につまずきやすいのが、この現金のマイナスです。ソフトの画面名やメニューの名前は会社ごとに違い、変わることもあるので、ここでは考え方だけをお伝えします。
現金がマイナスになる原因は5つ
よくある5つの原因
- 個人の財布から払った経費を、事業の「現金」から払ったことにしている
- 預金から現金を引き出した記録が入っていない
- 引き出した日より前の日付で、現金の支払いが入っている
- 現金で受け取った売上を入れていない
- 同じ支払いを、現金とカード(または預金)で二重に入れている
最初に確かめてほしいのは1つ目です。事業用の現金を分けて持っていないのに、レシートを入力するたびに「現金で支払い」を選ぶと、帳簿の現金は減る一方になります。実際には自分のお金で事業の経費を払っているので、相手の科目は現金ではなく事業主借です。
2つ目と3つ目は組みになっています。たとえば預金から3万円を引き出して、その日のうちに文具や交通費を払ったとします。引き出しの仕訳(借方 現金/貸方 普通預金)を入れ忘れると、支払いの分だけ現金がマイナスになります。引き出しを入れていても、レシートの日付が引き出しより前なら、その数日だけマイナスが出ます。年末の残高は合っていても、途中の日付でマイナスが残る形です。
4つ目は、レジやイベントで現金を受け取ったのに売上を入れていないケースです。レジを使っている方は、レジ締めの金額と帳簿の現金売上が合っているかを見てください。5つ目は、カードや口座の連携で取り込まれた明細と、手で入れたレシートが重なっているケースです。
確認は「月末残高→最初の日→前後の仕訳」の順で
次の3段階で範囲を絞ってください。
- 月末ごとの現金残高を並べて見る。多くの会計ソフトに、科目の残高を月別に見られる画面があります
- マイナスになった最初の日を特定する。その月の現金の元帳(現金出納帳)を開き、残高欄がはじめてマイナスになった行を探します
- その日の前後の仕訳を見る。同じ日・近い日に引き出しが入っているか、日付がずれていないか、同じ金額が2回ないかを確かめます
帳簿の最初の日(1月1日。年の途中で開業した方は開業日)からいきなりマイナスなら、開始残高に手元の現金を入れていない可能性があります。前年の年末残高や、開業時に事業用として用意した現金の額が、開始残高に入っているかを確かめてください。
二重計上を見つけたら、どちらを消すかを先に決めてください。カードや預金の連携で取り込んだ明細を残し、手入力の「現金払い」を消すほうが、あとで明細と照合しやすくなります。連携まわりの整え方は銀行口座連携で二重計上を防ぐ手順に書いています。
個人の財布で払ったものは「事業主借」で入れる
国税庁の「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」は、事業主借を「家計用の現金を事業用に充てるような場合に使用する勘定科目」と説明しています。反対に事業主貸は、事業用の現金を家計用に充てるときの科目です。
- 自分の財布から事業の文具代1,100円を払った → 借方 消耗品費 1,100円/貸方 事業主借 1,100円
- 事業用の現金から生活費を出した → 借方 事業主貸/貸方 現金
事業用の現金を別に持っていない方は、自分の財布から現金で払った経費はすべて事業主借で入れ、帳簿の「現金」をそもそも動かさないと決めてしまうのが分かりやすいです。そうすれば現金の残高がマイナスになることもありません。事業主貸と事業主借は利益の計算には影響しないので、この入れ方で経費が減ったり増えたりすることはありません。2つの科目の違いは事業主貸と事業主借の違いで詳しく説明しています。
ただし、原因を調べないまま「マイナスの分を事業主借でまとめて埋める」のはおすすめしません。売上の入れ忘れが混ざっていると、売上として数えるべき金額まで事業主借に紛れてしまいます。原因が分かったものから個別に直し、自分の財布で払ったことがはっきりしている分だけを事業主借にしてください。
年末の現金残高は、手元の事業用現金と合わせる
国税庁の資料『記帳のしかた(青色申告者)』には、現金出納帳は毎日つけて残高も記載し、その日のうちに実際の現金と突き合わせることが大切だと書かれています。毎日が難しくても、少なくとも年末(12月31日)の帳簿の現金残高は、実際に手元にある事業用の現金と同じ金額にしてください。青色申告で貸借対照表を作る方は、この残高がそのまま年末の「現金」になり、翌年の開始残高に引き継がれます。
事業用の現金を持っていない方は、年末の現金残高は0円になるはずです。0円にならないときは、「現金払い」の仕訳や、現金で受け取った売上・引き出しを「現金」のまま入れた仕訳が残っていないかを確かめてください。
前の年にもマイナスがあったら、直したほうがいいですか?
申告が済んだ年の帳簿を直すかどうかは、所得が動くかどうかで分かれます。現金⇄事業主借の付け替えだけなら所得は変わりません。ただし年末の残高が変わり、翌年の開始残高に影響します。売上の入れ忘れが見つかった場合は所得が増えるので、扱いが変わります。迷ったら、直す前に税理士か税務署に相談してください。
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現金のマイナスは、月ごとの残高をすぐに並べて見られるかどうかで、見つけやすさが大きく変わります。科目の残高を月別に確認できるか、預金やカードの明細を取り込んで手入力との重なりに気づけるか、年末の残高から貸借対照表までひと続きで作れるかを、公式サイトで確認してください。
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おわりに
現金のマイナスは、帳簿をつけ始めた方がつまずきやすいところです。マイナスが出たのは、帳簿が入力の間違いを教えてくれたということです。月末残高で範囲を絞り、最初にマイナスになった日の前後を見る。自分の財布で払ったものは事業主借。この2つを覚えておけば、来年からは同じところでつまずかずに済みます。
X(@tax_kiichan)でも、帳簿や確定申告の小さな疑問にお答えしています。
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※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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