事業主貸と事業主借の違い|生活費・立替・税金の仕訳例

家計と事業の資金移動を二方向に分ける女性税理士

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「事業主貸と事業主借は、どちらが生活費で、どちらが立替えですか?毎回迷います」

覚える軸は一つです。事業のお金を家計へ出したら事業主貸、家計のお金を事業へ入れたら事業主借です。どちらも個人事業主本人と事業の間のお金を整理する勘定科目で、通常の売上や必要経費そのものではありません。

名前だけを暗記するより、「事業から見て、お金がどちらへ動いたか」を見ます。この記事では2026年8月29日時点の国税庁資料をもとに、生活費、立替え、税金、個人口座への売上入金を仕訳例で整理します。

事業主貸は、事業のお金を家計側へ出したとき

国税庁の青色申告決算書の書き方では、事業主貸に、生活費などの家事上の費用、所得税・住民税など事業所得の必要経費にならない租税公課、商品の家事消費など、事業から支出した金額を記入すると案内しています。

たとえば事業用普通預金から生活費10万円を引き出した一般的な仕訳は、「事業主貸10万円/普通預金10万円」です。事業主貸を使うことで、通帳残高は減らしつつ、必要経費には入れません。

事業用口座から所得税3万円や住民税2万円を払った場合も、一般には「事業主貸/普通預金」で処理します。税金ならすべて同じではなく、個人事業税、固定資産税の事業使用分など必要経費になり得る税もあるため、税目を見ずに一括で事業主貸へ入れないでください。

事業主貸になりやすい場面

  • 事業用口座から生活費を引き出した
  • 事業用カードで私物を買った
  • 事業用口座から所得税・住民税を払った
  • 事業の商品を家庭で消費した
  • 売上代金が個人用口座へ直接入った

事業主借は、家計のお金を事業側へ入れたとき

事業主借は、個人のお金で事業経費を立て替えたときや、個人口座から事業資金を入れたときに使います。国税庁は、事業資金として事業主から受け入れた金額や、預金通帳に記帳された利息など事業所得以外の収入を事業へ受け入れた金額を事業主借へ記入すると案内しています。

個人の現金で事業用文具3,000円を買った一般的な仕訳は、「消耗品費3,000円/事業主借3,000円」です。支払口座が事業用でなくても、事業の必要経費であることは変わりません。領収書と事業目的を残します。

個人口座から事業用普通預金へ20万円を移したなら、「普通預金20万円/事業主借20万円」です。これは売上ではないため、雑収入へ入れません。資金不足を補った事実を記録する仕訳です。

きいちゃんメモ

「借」という字を借金だと考えると迷います。事業の帳簿が、家計からお金を一時的に受け入れた、と見ると整理しやすくなります。

個人口座へ売上が入ったら、売上を消さない

売上10万円が個人口座へ直接入った場合は、「事業主貸10万円/売上10万円」が一般的な形です。入金先が個人口座でも、事業の売上である事実は変わりません。入金を帳簿から省くと売上漏れになります。

反対に、事業用口座へ家計のお金が入っただけなら売上ではなく事業主借です。通帳の入金をすべて売上として自動登録するのではなく、請求書、振込名義、資金移動の元口座を確認しましょう。年をまたぐ売上は入金日ではなく仕事の完了日で考える売上計上も参考になります。

家事按分では、事業分を経費・家事分を事業主貸にする

自宅兼事務所の通信費など、仕事と生活が混ざる支出は、合理的な基準で事業分と家事分に分けます。事業用口座から1万円を払い、事業分が6,000円、家事分が4,000円なら、一般的には「通信費6,000円、事業主貸4,000円/普通預金1万円」です。

全額を経費へ入れてから年末に家事分を事業主貸へ振り替える方法もあります。大切なのは、面積、利用時間、使用量などの基準を決め、毎年同じ考え方で説明できることです。経費の範囲はフリーランスの経費一覧で見直せます。

事業主貸・事業主借の多さだけで利益は変わらない

事業主貸が増えても、それ自体が必要経費になって所得を下げるわけではありません。事業主借が増えても、売上が増えるわけではありません。損益ではなく、貸借対照表で家計との資金移動をつなぐ科目です。

青色申告の貸借対照表では、事業主貸と事業主借が翌年の元入金の計算へつながります。会計ソフトは通常、年度更新時に残高を引き継ぐ処理を行います。年末に理由なく両科目を相殺したり、雑費・雑収入へ振り替えたりせず、ソフトの年度締め手順を確認してください。

迷った取引は3つの質問で分ける

仕訳前の確認順

  1. その入出金は、事業の売上・必要経費・資産・負債か
  2. 家計と事業のどちらから、どちらへお金が動いたか
  3. 必要経費でない個人支出なら事業主貸、個人立替なら事業主借か
  4. 請求書・領収書・振替元口座で根拠を確認する
  5. 摘要に「生活費」「個人立替・文具」など内容を残す

日々の自動取込で同じ誤りが続く方は、会計ソフトを比較するときの見方を確認し、家計口座と事業口座を分けるところから整えましょう。青色申告特別控除を目指す方は65万円控除の条件も一緒に確認してください。

やよいの青色申告 オンライン

家計と事業のお金が混ざりやすい方は、口座やカードの明細を取り込んで仕訳を登録できる会計ソフトを使うと、事業主貸・事業主借の入れ忘れに気づきやすくなります。明細の取込に対応する金融機関や、無料で使える期間の条件は、公式サイトで確認してください。

おわりに

事業主貸は事業から家計へ、事業主借は家計から事業への資金移動を記録します。生活費や所得税の支払いは事業主貸、個人のお金で事業経費を立て替えたときは事業主借が基本です。

科目名に迷ったら、通帳の入出金だけでなく、お金の出発点と行き先を書く。それだけで、売上・経費と家計の移動を分けやすくなります。

税金と仕事のお金の話はX(tax_kiichan)でも書いています。

※本記事は2026年8月29日時点の国税庁公表資料にもとづく一般的な情報です。仕訳は、口座・カードの管理方法、税込・税抜経理、資産区分、家事按分、会計ソフトの設定で異なることがあります。個別の取引は税務署または税理士へご相談ください。

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