簡易課税をやめたいとき|不適用届出書の期限と、2年間は戻れないルール

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「簡易課税を選んでみたら、思っていたより不利でした。やめるには、いつまでに何を出せばいいですか?」

答えは「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を1枚、原則としてやめたい課税期間の初日の前日までに、納税地の所轄税務署長へ提出する、です。暦年で申告する個人事業主が令和9年分から本則課税に戻したいなら、令和8年12月31日までに出します。

ただし、この届出書には出したくても出せない期間があります。簡易課税は選ぶと2年間は続けることになっていて、暦年で申告する個人事業主なら、1年目のうちは受け付けてもらえません。上の例も、簡易課税が令和8年分より前から始まっていることが前提です。

やめるときに出す書類は、1枚だけ

消費税法37条5項は、簡易課税制度の適用を受けることをやめようとするとき、または事業を廃止したときは、その旨を記載した届出書を提出しなければならない、と定めています。書面でもe-Taxでも提出できます。

期限の考え方は、国税庁の記載要領がそのまま書いています。「この届出書の効力は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から生じます」。効力が翌課税期間からなので、やめたい課税期間の初日の前日までに出すことになります。

きいちゃんメモ

用紙には「簡易課税制度の適用開始日」を書く欄があり、ここには先に出した選択届出書の適用開始課税期間の初日を書きます。選択届出書の控えは残しておいてください。

2年間は、出したくても出せない

消費税法37条6項の書き方は、少し独特です。選択届出書を提出した事業者は「事業を廃止した場合を除き、同項に規定する翌課税期間の初日から二年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ」不適用届出書を提出することができない、と定められています。引用のなかの「同項」は37条1項、つまり簡易課税が始まる課税期間のことです。

その日付が実際にいつなのかは、記載要領が示しています。国税庁は「簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出することはできません」とし、その注で「個人事業者又は事業年度が1年の法人の場合には、原則として簡易課税制度を選択した課税期間の翌課税期間の初日となります」と補っています。この「選択した課税期間」は、届出書を出した年ではなく適用が始まった課税期間です。

暦年で申告する個人事業主にあてはめます。令和8年分から簡易課税が始まった方は、不適用届出書を出せるようになるのが令和9年1月1日。令和9年12月31日までに出せば、令和10年分から本則課税に戻れます。つまり令和8年分と令和9年分の2回は簡易課税で申告することになります。例外は廃業で、条文が「事業を廃止した場合を除き」と定めているため、このときは縛りが外れます。この届出書に廃止した旨を書けば「事業廃止届出書」は別に出さなくてよい、とも記載要領は書いています。

出し忘れると、翌期も簡易課税のまま

選択届出書の効力は、不適用届出書を出すまで続きます。期限に間に合わなければ、翌課税期間も自動的に簡易課税で計算することになります。

勘違いされやすいのが「基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた年があったから、簡易課税はもう終わっているはず」というものです。これは違います。消費税法基本通達13-1-3は、5,000万円を超えて適用できなくなった場合や1,000万円以下で免税事業者になった場合でも、その後に基準期間の課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下となった課税期間は、その初日の前日までに不適用届出書を提出している場合を除き、再び簡易課税制度が適用される、としています。売上で消費税の立場が変わる話は売上1,000万円を超えそうなときに考えることにまとめています。

救済はあります。消費税法施行令57条の2第2項は、やむを得ない事情で期限までに提出できなかった場合、税務署長の承認を受ければ初日の前日に提出したものとみなす、としています。申請は事情がやんだ日から2か月以内(消費税法基本通達13-1-5の2、1-4-17)。ただし国税庁は、提出を忘れていた場合はこれに当たらないと明記しています。

災害の特例は、もう少し強く働きます。消費税法37条の2第6項は、災害その他やむを得ない理由で被害を受けて簡易課税の適用を受ける必要がなくなった場合、承認を受ければその課税期間の初日の前日に不適用届出書を出したものとみなす、としています。この承認を受けたときは、2年間の縛りも適用されません。申請は災害等のやんだ日から原則2か月以内です。

本則課税に戻ると、保存する書類が変わる

簡易課税は売上の消費税額にみなし仕入率をかけて計算するので、その課税期間は仕入税額控除の要件として請求書等の保存を求められていません。本則課税に戻ると、ここが変わります。

課税仕入れの消費税額を控除するには、区分経理に対応した帳簿と、事実を証する請求書等の両方を保存することが要件になります。請求書等には適格請求書・適格簡易請求書のほか、仕入明細書等やその電磁的記録も含まれます。保存期間は、帳簿はその閉鎖の日、請求書等は受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。ただし6年目と7年目は、帳簿と請求書等のいずれか一方を保存すれば足ります。

負担を軽くする特例もあります。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行った税込1万円未満の課税仕入れは、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。なお納付税額も変わるので、翌期以降の消費税の中間申告の回数が動くこともあります。

設備投資のために戻るなら、3年は戻れない

やめる理由として多い大きな設備投資には、もう一つの縛りがあります。簡易課税の適用を受けない課税期間中に「高額特定資産」の仕入れ等を行うと、消費税法37条3項3号により、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間は、簡易課税制度選択届出書を提出できません。高額特定資産とは、棚卸資産と調整対象固定資産のうち、一の取引の単位につき税抜1,000万円以上のものです(消費税法12条の4第1項、同法施行令25条の5第1項)。

令和10年中に買ったなら、令和10年分・令和11年分・令和12年分は本則課税のままで、簡易課税に戻せるのは令和13年分からです。消費税法基本通達13-1-4の3は、その資産を廃棄・売却しても提出制限は継続して適用されると念を押しています。課税事業者を選択して2年間の縛りの中にいる方が税抜100万円以上の調整対象固定資産を買った場合も同じ3年です(消費税法9条7項、37条3項1号)。

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簡易課税から本則課税に戻すと、仕入れや経費の一つひとつに税率と税区分を付けて集計する作業が始まります。帳簿の入力画面で税区分が選べるか、本則課税の消費税申告書まで作れるか、課税方式を切り替えた年の設定がどうなるかを、公式サイトで確認してください。

おわりに

やめる手続そのものは、届出書1枚です。むずかしいのは書き方ではなく日付のほうで、簡易課税が始まった課税期間の初日さえ確認できれば、出せる日と締切はどちらも決まります。出し忘れの取り返しがきかない書類なので、迷ったら自分の状況を書き出して税務署に確認してください。

消費税や確定申告の細かい話は、X(@tax_kiichan)でもつぶやいています。

※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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