業務委託に年末調整はない?報酬の源泉徴収と確定申告で自分がやること

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「周りは年末調整の書類を書いているのに、業務委託の私にはなにも届きません。放っておいて大丈夫ですか?」

答えは、書類が来ないのは正常です。年末調整は、会社から給与をもらう人のための制度です。業務委託の報酬は給与ではなく、事業所得か雑所得として扱われるので、年末調整の対象にそもそも入っていません。

そのかわり、会社が年末調整でやってくれていた「1年分の税金の精算」を、翌年の確定申告で自分がやります。報酬から引かれている源泉所得税は税金の前払いなので、申告で精算すると戻ってくる方が多いです。秋になると「書類が来ない」と不安になる方が毎年いらっしゃいますが、やることは決まっています。

年末調整は「給与」をもらう人の制度

年末調整の対象になるのは、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出している給与所得者です(1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人などは除きます)。会社は毎月の給与から所得税を天引きし、12月にその年の正しい税額と突き合わせて差額を精算します。

業務委託の報酬は、雇われて働いた対価ではなく、仕事の成果への対価です。事業として継続的に行っていれば事業所得、副業程度の規模なら雑所得になるのが一般的で、どちらにしても給与所得ではありません。だから取引先は年末調整をしませんし、する義務もありません。会社員との手取りの違いは、業務委託と会社員の手取りの差の記事にまとめています。

報酬から引かれている源泉所得税は「前払い」

請求額より少ない金額が振り込まれている方は、報酬から源泉所得税が引かれています。対象になる報酬は所得税法204条で決まっていて、原稿料・デザイン料・講演料、弁護士や税理士などの業務の報酬、外交員の報酬などが列挙されています。業務委託の報酬がすべて源泉徴収されるわけではありません。一般的な事務作業の代行やシステム開発の報酬は列挙されていないので、引かれないのが通常です。また、源泉徴収をするのは、会社などの法人と、人を雇って給与を払っている個人です。給与を払っていない個人のお客様から直接受ける仕事は、原稿料のような内容でも引かれません。

税率は2026年時点で、1回の支払金額が100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。税抜の報酬22万円なら22,462円が引かれます(消費税22,000円を加えた振込額は219,538円です)。請求書で報酬と消費税を分けて書いていれば、税抜の報酬額だけを対象にしてよいことになっています(取引先の処理によっては税込額に掛けられることもあります)。

大事なのは、源泉徴収は所得税の前払いであって、税金の確定ではないということです。10.21%は、経費も所得控除も考えずに報酬額にそのまま掛けた率です。確定申告で経費や控除を引いて計算した本来の税額のほうが少なければ、差額が還付されます。

きいちゃんメモ

令和9年1月1日以後の支払分は、復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税1%が加わります。上乗せの合計は2.1%のままなので、10.21%・20.42%は変わりません。

年末調整で受けていた控除を、自分で申告書に書く

会社員のころは、証明書を会社に出せば、社会保険料控除も生命保険料控除も基礎控除も会社が計算してくれました。業務委託では、この控除を自分で確定申告書に書かないと、1円も引かれません。

とくに金額が大きいのが社会保険料控除です。国民年金保険料と国民健康保険料は、その年に実際に払った全額が控除になります。国民年金は日本年金機構から届く控除証明書を申告書に添付するか提示する必要があるので、申告まで保管してください(e-Taxで申告する場合は証明書の内容を入力すれば添付を省略できますが、法定申告期限から5年間は保管します。また令和8年分の申告書を令和9年1月1日以後に出す場合は、一定の事項を書いた明細書の添付で代えることもできます)。国民健康保険は証明書の添付は求められていませんが、市区町村から送られてくる納付額のお知らせや領収書で金額を確かめて書きます(お知らせがない場合は市区町村の窓口で納付額を確認できます)。実務でいちばん多い抜けは、この国民健康保険の金額を調べずに申告してしまうことです。

基礎控除は申告書に書くだけで受けられます。令和8年分の所得税では、合計所得金額が489万円以下の方で104万円です(令和8年分・令和9年分の特例の額です)。生命保険料控除などは、保険会社から届く証明書の数字を転記します。

支払調書は待たなくていい。請求書と入金記録で集計する

年明けに取引先から「支払調書」が届くことがありますが、これは取引先が税務署に出す書類で、あなたに渡す義務も、確定申告書に添付する義務もありません。届かなくても申告はできます。

自分でやるのは、1年分の請求書から「税抜の報酬額」「引かれた源泉所得税」「入金額」を取引先ごとに集計することです。売上に計上するのは入金額ではなく、引かれる前の報酬額です。源泉所得税の合計は、申告書の「源泉徴収税額」欄に書きます。金額が合わないときの確認方法は、支払調書が届かないときの売上・源泉税の確認方法の記事で詳しく書いています。

申告の時期と、「20万円」の話

令和8年分の確定申告の期間は、2027年2月16日から3月15日までです。源泉徴収された税金が戻る還付申告は、この期間を待たずに翌年1月1日から出せます。なお、青色申告特別控除(55万円・65万円)のように期限内の提出が条件の特例を使う場合は、還付申告でも3月15日までに出します。

申告が必要かどうかの目安は、所得の合計が所得控除の合計を超えるかどうかです。「20万円以下なら申告不要」という話は、給与をもらっている人の、所得税だけの特例です。住民税には同じ特例がなく、業務委託が本業の方には関係のない話なので、切り分けて考えてください。

本業が会社員で、副業として業務委託を受けている方は、本業の給与は勤務先で年末調整を受け、業務委託の報酬分を確定申告で追加する二段構えです。勤務先の源泉徴収票の数字と、業務委託の報酬・経費・源泉所得税を1枚の申告書にまとめます。

取引先に「年末調整をしてほしい」と頼めますか

頼めません。年末調整は給与を払う側の手続きで、報酬を払う取引先にはその仕組みがありません。契約を雇用に変えないかぎり、精算は自分の確定申告で行います。

源泉徴収されていない報酬は、申告しなくていいですか

源泉徴収の有無と、申告が必要かどうかは別の話です。引かれていない報酬は前払いがゼロというだけで、所得があれば申告の対象です。前払いがないぶん納める税額が出やすいので、納税資金を分けておくと安心です。

やよいの青色申告 オンライン

源泉徴収された報酬は、売上と源泉所得税を取引先ごとに分けて集計し、申告書の「源泉徴収税額」欄に合計を入れるところで詰まりがちです。請求書どおりの売上登録から、社会保険料控除などの入力、申告書の作成とe-Tax送信までひと続きで進められるかを、公式サイトで確認してください。

おわりに

年末調整の書類が来ないのは、忘れられているのではなく、制度の対象外だからです。やる内容は「請求書から売上と源泉税を集計する」「控除の証明書と国保の納付額をそろえる」「翌年1月以降に申告書を出す」の3つ。秋のうちに証明書の置き場所を決めておけば、年明けの作業はかなり軽くなります。

X(@tax_kiichan)でも、フリーランスの確定申告でつまずきやすいところを日々発信しています。

※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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