こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「夏のボーナスが出たのに、気づいたら半分くらい減っていました。貯金と投資と、どういう比率で分けるのが正解ですか」
答えを先に書きます。黄金比そのものは人によって違います。ただ、うまくいっている人に共通しているのは、受け取った直後に「貯める・増やす・使う」の3つに分けてしまうことだけです。比率を何対何にするか悩んでいるあいだ口座に置いておくと、決める前に残高が減っていきます。比率より先に「分ける」を実行してください。
ボーナスが出たのに残らない、というご相談は毎年この時期に増えます。夏の賞与から2か月ほど経ったころ。まだ手をつけていない方も、少し減ってしまった方も、いま仕切り直せば間に合います。
まず、ボーナスは額面どおりには入りません
ここを外すと計画が全部ずれます。賞与は、明細の額面がそのまま口座に入るわけではありません。給与と同じように、賞与からも社会保険料と税金が引かれます。
- 健康保険料(40歳以上65歳未満の方は介護保険料も)
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税(源泉徴収)
引かれる額は収入や扶養の状況で変わるので一律には言えませんが、手取りは額面の8割前後になることが多いという感覚で見ておくと、ずれが小さくなります。あくまで目安で、賞与や毎月の給与が大きい方は7割台、6割台になることもあります。
典型的な失敗が、額面の数字を見て使い道を決めてしまうことです。額面60万円のつもりで予定を立てたら、入金は50万円弱。そこから「思ったより余裕がないな」と気持ちが崩れて、細かい支出がふくらむ。実務でよく聞くのはこのパターンです。配分を考えるときは、必ず入金された金額を見てからにしてください。
なお、住民税は賞与から引かれません。前年の所得をもとにした税額を、6月から翌年5月にかけて毎月の給与から引く仕組みです。かからないわけではなく、月々の給与のほうで払っている、と考えてください。
配分は「生活防衛資金があるか」で決まる
比率の正解が人によって違うのは、スタート地点が違うからです。判断の分かれ目は、生活防衛資金があるかどうかです。
生活防衛資金とは、収入が止まっても暮らしていける現金のこと。目安は生活費の3か月から6か月分です。会社員で収入が安定している方は3か月分、フリーランスや歩合の比率が高い方は6か月分あると安心できます。これが無い状態で投資に厚く回すと、お金が必要になったときに値下がりしている資産を売る、という事故が起きます。
配分の例をいくつか挙げます。あくまで例で、そのまま当てはめるものではありません。
- 生活防衛資金がまだ無い方/貯める5・増やす3・使う2。まずは現金を積むことが最優先。それでも「使う」を2は残します
- 生活防衛資金が貯まっている方/貯める2・増やす5・使う3。守りの現金は確保できているので、増やすほうに軸を移します
- 数年内に大きな支出が決まっている方(住宅の頭金、車、出産など)/貯める6・増やす1・使う3。使う時期が決まっているお金は、増やすより減らさないことを優先します
3つめは補足します。使う時期が5年以内に決まっているお金を投資に回すのは、おすすめしません。必要なタイミングで下がっていたら、待つ選択ができないからです。投資に回すのは「いつ使うか決まっていないお金」だけ、と線を引いておくと迷いません。
「使う」をゼロにすると、かえって崩れます
意識の高い方がやりがちなのが、「使う」枠をゼロにして全額を貯金と投資に振ることです。気持ちはとてもよくわかるのですが、これは長続きしません。
理由は単純です。使う枠を決めていないと、決めていない支出が全部そこから出ていくからです。ボーナスをまるごと投資に入れたあと、外食が続いた、家電が壊れた。そのたびに「これは特別だから」と、翌月の生活費を削ることになります。ゼロにしたはずの「使う」が、いちばん管理されない形で復活してしまうわけです。
金額が小さくてもいいので「使う」枠を先に切り出しておいてください。その枠のなかであれば、罪悪感なく使っていい。予算を決めた支出は、家計にとっては貯金と同じくらい健全なものです。
「増やす」に回すときの3つの注意
3つに分けたあと、「増やす」の枠をどう扱うか。ここで気をつけたいことを挙げます。
一括か積立かは、好みの問題
まとめて入れるか、何か月かに分けて入れるか。どちらが有利かは事前にはわかりません。値動きが気になるなら分けたほうがいいし、先送りすると結局使ってしまうタイプなら一括が向いています。性格で決めていい部分です。
NISAの枠は年単位。使い切りを急がない
NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠があり、それぞれに年間の投資上限が決められています。2つは併用できるので、年間で投資できる金額はその合算になります(2026年8月時点の制度)。その年の枠は翌年に持ち越せません。だからといって、枠を埋めることを目的に全額入れるのは順番が逆です。枠は毎年あらたに与えられます。
投資に入れて生活費を分割払いで埋めるのは本末転倒
いちばん避けたいのがこれです。ボーナス全額を投資に入れ、翌月の生活費をカードの分割払いやリボ払いで埋める。分割払いの手数料は年率で見るとかなり高く、投資で期待できるリターンより大きくなることが普通です。増やしているつもりで、実際は減っています。手元の現金がいくら残るかを確認してから、投資額を決めてください。
ボーナスを分けるときの3つ
- 入金された金額(手取り)を確認する。額面で計画を立てない
- 受け取った直後に「貯める・増やす・使う」の3口座・3枠に分けてしまう
- 生活防衛資金が生活費の3〜6か月分あるかで、貯めると増やすの比率を決める
よくある質問
住宅ローンの繰上返済に全額入れるのはどうですか
気持ちのよさは大きいのですが、全額はおすすめしません。繰上返済に使ったお金は、あとで「返して」と言えないからです。生活防衛資金を確保したうえで、余った部分から回してください。判断材料は金利で、低い状態なら急ぐ効果は限られます。あわせて、住宅ローン控除を受けている期間中は、繰上返済で返済期間が短くなりすぎると控除の要件を満たさなくなる場合があります。控除中の方は事前に確認してください。
独身と家族ありで、比率は変えるべきですか
変わるのは比率よりも、生活防衛資金の金額のほうです。家族がいる方は生活費が大きいぶん3か月分の金額も大きく、同じ比率でも達成に時間がかかります。もうひとつ違うのが「使う」枠の性質です。家族がいる場合は使い道を先に話し合っておかないと、あとから不満が出やすい。金額を決めるより、何に使うかを共有しておくほうが効きます。
おわりに
お金が残る人は、意志が強いわけではありません。残る仕組みを先に作っているだけです。ボーナスも、比率の精度を上げることより、受け取った日に分けてしまうことのほうが結果を左右します。今年の夏の分がもう減っていても、落ち込まなくて大丈夫。次の冬に向けて分け方を決めておけば、そのときは同じことになりません。
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※本記事は一般的な家計管理の考え方を紹介するものです。金額はあくまで例であり、適切な配分は収入や生活状況によって異なります。制度の内容は執筆時点(2026年8月)のものです。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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