こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「領収書をもらい忘れました。カードの明細があれば代わりになりますか?」
所得税(経費にできるか)の話なら、領収書でなければいけないという決まりはありません。いつ、誰に、何のために、いくら払ったかを示せればよく、カード明細やメールの控えはその材料になります。ただし、消費税の課税事業者で本則課税の方は別で、カード明細だけでは仕入税額控除を受けられません。書類は1枚で完結させようとせず、組み合わせて弱点を埋めるのが基本です。
領収書をなくしてしまったときの手順は領収書をなくしたら経費にできない?取引記録を残す7項目にまとめました。ここでは、代わりの書類ごとの強さと弱さを見ていきます。
所得税と消費税で、求められるものが違う
所得税では、帳簿に経費の取引の年月日・事由・支払先・金額を書き、取引で受け取った請求書や領収書などの書類を保存します(国税庁「記帳・帳簿等の保存について」)。領収書は、支出を裏付ける書類のひとつです。
消費税の本則課税では、仕入税額控除を受けるために帳簿と請求書等の両方の保存が必要です。この請求書等には、適格請求書、適格簡易請求書、それらの電磁的記録などが含まれます(国税庁 No.6496)。一方、免税事業者の方や、2割特例・3割特例・簡易課税を使う年は、請求書等の保存が仕入税額控除の要件になりません(所得税のための書類の保存は必要です)。実務で「カード明細で大丈夫?」と聞かれたら、まずどちらの話かを確認します。
カード利用明細は「払った事実」に強く、「中身」に弱い
カード明細には利用日・利用先・金額が載るので、払った事実の裏付けに強い書類です。弱点は、何を買ったかが出ないこと。家電量販店の1行だけでは、仕事用か私用か見分けがつきません。該当行に品名と用途をメモし、購入メールやレシートと一緒に保存すると補えます。
消費税では、国税庁の質疑応答事例が、カード会社が交付する請求明細書は消費税法30条9項の請求書等に該当せず、これを保存しても仕入税額控除は受けられないとしています。認められるのは、原則としてお店(カード加盟店)から受け取った適格請求書等を保存した場合です。本則課税の方は、少額特例などで帳簿だけの保存が認められる取引を除き、カード払いでもお店のレシートを残してください。
ネット購入のメール控えは「中身」に強い。データのまま残す
注文確認メールや購入履歴の領収書には、日付・品名・金額・販売者が並ぶので、何を買ったかの説明に強い書類です。支払った事実はカード明細と合わせると固まります。販売者がインボイス発行事業者で、登録番号など必要な記載があるPDFなら、それ自体が適格請求書の電磁的記録になり得ます。出品者によっては未登録のこともあるので、登録番号の有無を見ておきましょう。
保存の方法にも注意が必要です。メールやPDFで受け取った取引データは、令和6年1月から、印刷して消すのではなくデータのまま保存するのが原則です。国税庁のリーフレットは、改ざん防止のルール(事務処理規程)を決めて守ること、2課税年度前の売上高が5,000万円以下の方はデータのダウンロードの求めに応じられれば検索の要件は不要なことを挙げています。くわしくは電子帳簿保存法、個人事業主が最低限やることをどうぞ。
通帳の振込記録は、契約書や請求書とセットで
通帳には日付・振込先の名義・金額が残るので、誰にいくら払ったかははっきりします。ただ、何の代金かは出ません。請求書や契約書と一緒に保存して、中身はそちらで示します。
消費税でもこの組み合わせは使えます。家賃を口座振替や口座振込で払っている場合、インボイスの記載事項の一部が書かれた契約書と、取引の年月日を示す通帳を合わせて保存すれば、仕入税額控除の要件を満たすとされています。振込なら、銀行の振込金受取書でもかまいません(インボイスQ&A問95)。貸主が途中で登録をやめても連絡が来るとは限らないので、公表サイトで確認を。
出金伝票は自分で作る記録。領収書が出ない支出を補う
出金伝票は、自分で日付・支払先・内容・金額を書く記録です。相手が出した書類ではないぶん、裏付けの力はいちばん弱いと考えてください。向いているのは、取引先の香典やご祝儀、自販機のように領収書が出ない支出。慶弔なら会葬礼状や招待状も残すと、業務との関係を説明しやすくなります。
本則課税でも、請求書等を受け取るのが難しい取引には、一定の事項を記載した帳簿だけの保存で仕入税額控除が認められる特例があります。税込3万円未満の公共交通機関(電車・バスなど)の運賃や、税込3万円未満の自動販売機・自動サービス機からの購入などが対象です(No.6496)。3万円以上の運賃は、原則として適格請求書の保存が要件です(インボイスQ&A問105)。
「3万円未満なら何でも帳簿だけでよい」はインボイス制度が始まる前(令和5年9月まで)のルールです。いまは対象の取引が決まっています。別枠として、基準期間の課税売上高1億円以下などの事業者の、令和11年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れには少額特例があります。
レシートは、領収書の代わりとして十分
レシートには日付・店名・品名・金額が並ぶので、所得税ではふつうこれで足ります。消費税でも、小売店や飲食店などのインボイス発行事業者が出すレシートは、登録番号などの記載事項がそろっていれば適格簡易請求書にあたり、宛名は要りません。手書きの領収書でも、必要な事項が書かれていれば適格簡易請求書になります(インボイスQ&A問58-2)。宛名入りの領収書に出し直してもらう必要はありません。
組み合わせの目安
- カード払い … カード明細+レシート(または購入メール)
- ネット購入 … 購入メール・PDFをデータのまま保存+カード明細
- 振込・口座振替 … 通帳+請求書または契約書
- 領収書が出ない支出 … 出金伝票+会葬礼状・招待状などの関連書類
保存期間は、青色と白色で違う
代わりの書類も保存が必要です。青色申告の方は帳簿書類を原則7年保存し、5年でよいのは請求書・見積書・納品書・送り状などで、領収書は原則7年のほうに入ります(国税庁 No.2070)。白色申告の方は、領収書などの書類は5年、収入や経費を書いた帳簿は7年です。消費税の本則課税で仕入税額控除を受ける帳簿と請求書等は7年保存で、6年目と7年目はどちらか一方でよいとされています(No.6496)。
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領収書の代わりの書類は、帳簿の1行とひも付いていてはじめて説明の材料になります。レシートや明細を取り込んで仕訳と一緒に残せるか、メールやPDFで受け取った取引データをどこに保存する仕組みかを、公式サイトで確認してください。
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おわりに
領収書がないだけで経費をあきらめてしまう方は、毎年いらっしゃいます。でも、カード明細は払った事実、メールは中身、通帳は相手と金額と、それぞれ得意なことがあります。足りないところを別の書類で補えば、説明できることは多いんです。本則課税の方は、少額特例などで帳簿だけの保存が認められる取引を除き、お店のレシートを残すのを忘れずに。
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※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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