こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「インボイスの登録は済みました。でも、請求書はどこをどう変えればいいんでしょう」
登録の手続きより、こちらで手が止まる方が多いんです。答えを先に書きます。登録前の請求書に書き足すのは、実質3つだけ。登録番号、適用税率、そして税率ごとに分けた消費税額です。軽減税率の対象がある場合の印と、税率ごとに分けた合計額は、登録の前からすでに必要だったものです。宛名や日付、品目はそのままで大丈夫です。
まだ登録を迷っている段階なら、インボイス制度、免税事業者は登録すべき?判断の3ステップと2割特例を先に。この記事は「登録した後」の話です。
記載事項は6つ。請求書のどこに書くか
1. 自分の氏名または名称と登録番号――差出人欄。屋号の下に登録番号を足します。
2. 取引をした年月日――明細の日付欄。1か月分をまとめるときは「10月1日〜10月31日」と期間で書く形も認められます。
3. 取引の内容――品目名。軽減税率(8%)の対象がまざる行に「※」をつけ、欄外に「※は軽減税率対象」と添えます。
4. 税率ごとに区分して合計した金額と適用税率――合計欄の下に「10%対象 60,000円」「8%対象 40,000円」。税抜でも税込でも構いません。
5. 税率ごとに区分した消費税額等――同じ場所に「10%対象 60,000円(消費税 5,454円)」「8%対象 40,000円(消費税 2,962円)」のように、税率ごとに1つずつ。合計欄の「消費税 8,416円」だけでは足りません。
6. 宛名――「○○株式会社 御中」。空欄のままの請求書は、適格請求書になりません。
6つを1枚に収める必要はありません。請求書と納品書のように、複数の書類を合わせて満たす形でも認められます。ただし、消費税額等を納品書に書く場合は、1円未満の端数処理は納品書につき税率ごとに1回となります。
登録番号は「T」+13桁。公表サイトで確認できる
登録番号は、法人なら「T」+法人番号(13桁)、個人事業主なら「T」+13桁の数字。個人の13桁は、法人番号と重複しない新しい番号が割り振られます。マイナンバーが請求書に載ることはありませんので、安心してください。
番号が有効かどうかは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べられます。「T」を除いた13桁を入れて検索します。このサイトは、受け取った請求書の番号が取引の時点で有効かを確かめるためのものです。登録には取消し・失効がありますので、一度調べたら以後ずっと大丈夫、とは言い切れません。続けて取引する相手は、年に一度など区切りを決めて見ておくと安心です。
通知が届く前の取引はどうする
登録は「登録簿に載った日」から効力を持ちます。通知が届いた日ではありません。そのため、番号を知らないまま登録日以後の請求書を出す期間ができてしまいます。
このときは、番号を知ってから足りなかった事項を書面などで相手に知らせれば、すでに渡した請求書と合わせて記載事項を満たしたものとして扱われます。ただし、先に渡した請求書とのつながりが相手に分かる形であること(どの請求書のことかが特定できること)が条件です。番号入りで出し直しても構いません。境目の月は、登録日の前と後で分けて考えてください。
端数処理は1つの適格請求書につき、税率ごとに1回
実務でいちばん間違いが多いのがここです。ルールはひとつだけ。1円未満の端数処理は、1つの適格請求書につき、税率ごとに1回。切上げ・切捨て・四捨五入のどれを選ぶかは自由です。
たとえば10%対象が60,000円(税込)、8%対象が40,000円(税込)なら、60,000×10/110で約5,454円、40,000×8/108で約2,962円。端数処理はこの2回だけです。
逆に明細行ごとに端数処理して足し上げた金額を消費税額等として書くことは認められていません。自作の請求書は行ごとに税額列を作りがちなので、登録後にいちど様式を見直してください。
レシートで足りる事業もある(適格簡易請求書)
不特定多数のお客さんを相手にする事業――小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業(不特定多数に対するものに限る)、これらに準ずる事業――なら、適格請求書のかわりに「適格簡易請求書」を出せます。レジのレシートです。
通常との違いは2つ。宛名(6番)が要らないことと、「税率ごとに区分した消費税額等」か「適用税率」のどちらか一方でよいことです。両方書いても構いません。手書きの領収書でも、項目がそろえば適格簡易請求書です。
該当するかは個々の事業の性質で判断します。迷うなら、宛名と「適用税率」「税率ごとの消費税額等」を全部入れておけば、通常の適格請求書として通ります。
受け取る側でも見る場所がある
登録すると、あなたは消費税を納める側になります。ただし、納める額の計算方法によって、もらった請求書の扱いが変わります。2割特例(令和8年分まで)、3割特例(令和9年分・令和10年分。個人事業主のみ)、簡易課税を使う年は、売上から納付額を計算するので、仕入税額控除の要件として請求書を保存する必要はありません(所得税のための帳簿と書類の保存は、これまでどおり必要です)。それぞれ要件がありますので、使えるかどうかは確認してください。
払った消費税を実額で差し引く「一般課税」で申告する年は、もらった請求書の確認が必要です。見るのは、登録番号があるか、税率ごとの合計額と適用税率、税率ごとの消費税額等がそろっているか。レシートのような適格簡易請求書には宛名がなくてかまいませんので、宛名の有無で判断しないでください(適格簡易請求書は、消費税額等と適用税率のどちらか一方でも足ります)。
相手が免税事業者で登録番号がない場合は、経過措置があります。2026年8月時点で確定している割合と期間は次のとおり。
令和5年10月1日〜令和8年9月30日は仕入税額相当額の80%/令和8年10月1日〜令和10年9月30日は70%/令和10年10月1日〜令和12年9月30日は50%/令和12年10月1日〜令和13年9月30日は30%。
つまり2026年(令和8年)9月30日で80%の期間が終わり、10月1日からは70%に下がります。もとは10月から50%になる予定でしたが、令和8年度の税制改正で70%・50%・30%と段階を踏む形に見直されました。「10月から半分」と覚えている方は直してください。
この経過措置を使うには、帳簿に「80%控除対象」(令和8年10月以後の仕入れなら「70%控除対象」)や「免」など、対象である旨を書く必要があります。「※」の記号をつけて欄外で示す形でも構いません。請求書は登録番号のない従来型でよく、軽減税率対象である旨と税率ごとの税込価額が抜けている場合に限り、受け取った側で追記して保存できます。
メールでPDFを送るとき、受け取るとき
適格請求書は紙でなくてもよく、PDFをメールで送る形でも成立します。ただ、写しを残す義務があります。交付した日が属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間。
メールでのやりとりは電子帳簿保存法の「電子取引」にも当たります。消費税の仕入税額控除の要件としては紙に出力して保存する方法も認められていますが、所得税の側では、原則として受け取ったデータそのものを残す必要があります。詳しくは電子帳簿保存法、個人事業主が最低限やること|メールのPDFはどうするに書きました。
おわりに
請求書の様式を直す作業は、一度やれば終わりです。登録番号を足して、合計欄を税率ごとに分けて、端数処理を税率ごとに1回にそろえる。雛形ができれば、来月からは何も考えずに出せます。
変えたあとの1枚目だけ、送る前に6項目を指で追ってみてください。抜けやすいのは宛名と「※は軽減税率対象」の一行です。
マネーフォワード クラウド確定申告
請求書に登録番号を入れて、税率ごとの合計と消費税額を自動で分けて出してくれます。端数処理を税率ごとに1回にそろえるところも様式側で決まるので、雛形を作り直す手間がかかりません。受け取った請求書の保存まで同じ画面で完結するのも、インボイス開始後は効いてきます。
公式サイトを見る
PR
あわせて読みたい
制度が変わったときの短い注意書きは、X(@tax_kiichan)でも書いています。
※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

コメントを残す