こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「納品して2か月たつのに振り込まれません。請求書を送ったメールにも返事がなくて、どうしたらいいのか」
先に順番を書きます。事実の確認、支払期日の確認、書面での督促、窓口と裁判所の4つです。催促のメールを重ねるより、この順に上げていくほうが早く終わります。あわせて、税務では未払いのままでも売上を計上します。
手順1 「言った・言わない」にならない材料をそろえる
- 金額と納期が書かれた契約書、発注書、または見積りを承諾したメール
- 納品した記録(送信メール、アップロードの履歴、受領の連絡)
- 請求書を出した記録と、それが相手に届いたと分かる記録
ご相談でつまずくのは、たいてい3つ目です。担当者個人のアドレスやチャットに送っただけ、というケースが多いんです。請求書は経理あての窓口にも同時に送ってください。保存の年数は帳簿と領収書は何年保存?に書きました。
手順2 法律の支払期日を確認する
2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、通称フリーランス新法)が施行されました。対象の発注者は、給付を受領した日から60日以内で、できる限り短い期間内に支払期日を定めなければなりません。役務の提供なら、提供を受けた日が起算日です。
大事なのは、期日を決めていなかった場合です。定めがなければ受領した日そのものが支払期日、60日を超える期日を定めていれば受領日から60日を経過する日が支払期日と、法律の側でみなされます。月末締めなら翌月末払いまでがラインで、翌々月払いは通りません。
ただし義務がかかる発注者は限られます。従業員(週20時間以上かつ31日以上雇われる見込みの人)を使用している個人と、役員が2人以上いるか従業員を使用している法人です。相手が完全にひとりなら、この義務はかかりません。逆に、あなたの側も「従業員を使用していない個人(または役員が自分だけで従業員のいない法人)」であることが条件です。人を雇っていると、この法律の保護からは外れます。取引条件を明示する義務のほうは、業務委託をする事業者に広くかかります。
下請法(今の取適法)が使える場面との違い
2026年1月1日から、下請代金支払遅延等防止法(下請法)は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わりました。略称は中小受託取引適正化法、通称は取適法です。
違いは相手の規模です。原稿や画像などの情報成果物作成委託、役務提供委託なら、発注者の資本金が5,000万円超か、1,000万円超5,000万円以下で受け手が個人などの場合に適用されます。改正で常時使用する従業員100人超という基準も加わりました(製造委託等は300人超)。ただしプログラムの作成と、運送・倉庫での保管・情報処理の役務は、製造委託などと同じ3億円(従業員300人超)の区分です。支払期日はこちらも60日以内です。
取適法が使える取引なら、年14.6%の遅延利息を請求できます。フリーランス法にはこの規定がないので、契約に定めがなければ民法の法定利率です。2026年8月時点で年3%、2029年3月31日までは3%のままと告示されています。
手順3 内容証明郵便で督促する
メールが読まれていないなら、紙で送ります。内容証明郵便は、いつ誰がどんな文書を出したかを郵便局が証明する仕組みです。加算料金は480円(2枚目以降は1枚ごとに290円)、一般書留にする必要があるため書留の480円が加わり、配達証明を付けるとさらに350円です。
金額と入金期限、振込先、期限までに入金がなければ法的手続をとることを、感情を入れずに書きます。報酬の請求権は、権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかりますが、催告をすればその時から6か月間は時効が完成しません。ただし効くのは1回だけで、その6か月のあいだにもう一度催告しても延びません。6か月のうちに次の手を打ってください。
手順4 無料の窓口を先に、裁判所は後に
まず、お金のかからない窓口です。
- フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の事業)。契約や仕事上のトラブルを弁護士に無料で相談できます
- 取引かけこみ寺。2026年1月1日に「下請かけこみ寺」から改称。全国48か所、相談無料、匿名相談もできます
- フリーランス法違反の申出は厚生労働省のホームページのフォームに集約され、入力内容は公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に届きます
それでも動かなければ裁判所です。支払督促は相手の住所地の簡易裁判所の書記官に申し立てる手続で、手数料は訴えの半分が基本。郵便費用を含めた実額は、書面での申立てなら請求額30万円で4,200円、60万円で5,700円です。相手が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ仮執行宣言を得て強制執行に進めますが、異議が出ると通常の訴訟に移ります。
ただし支払督促は、相手に書類が届いて初めて効力が出る手続きです。相手の住所が分からないときは、公示送達が認められていないため申し立てられません。
少額訴訟は60万円以下の請求で使え、原則1回の審理で判決が出ます。同じ簡易裁判所で1人年10回まで、証拠はその日に調べられるものに限られます。手数料は通常の訴えと同じで、書面での申立てなら請求額60万円で8,500円です。
未払いでも売上は計上します
事業所得の収入は、年末までに実際にお金を受け取っていなくても、収入すべき権利が確定した金額で計上します。12月に納品して入金が翌年でも、売上は納品した年です。
回収できないと決まったら、その年の必要経費として貸倒損失にします。相手の資産状況や支払能力からみて全額回収できないことが明らかになった場合か、取引を停止した時(最後の弁済期などのうち最も遅い時)から1年以上経った売掛債権が対象で、後者は備忘価額を残します。ただしこの1年のルールは、継続して取引していた相手の支払能力が悪化して取引をやめた場合の取扱いです。たまたま1回だけ受けた仕事の未払いには使えません。連絡がつかないだけでも足りません。
青色申告なら貸倒引当金も使えます。年末の貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業は3.3%)を繰り入れれば必要経費になり、翌年に戻し入れます。消費税を納めている方は、貸倒れの課税期間に税込額の110分の7.8(軽減税率なら108分の6.24)を控除できます。こちらは貸倒れの事実を明らかにする書類を残しておく必要があります。
「回収できないなら請求書を取り消して売上をなかったことにしたい」と言われることがありますが、それはできません。売上はいったん立てて、回収できないと決まった年に貸倒れとして落とす。この順番です。
おわりに
払ってもらえないと、自分の仕事が軽く扱われた気がして落ち込みます。でもこれは相手の支払いの問題で、あなたの仕事の値打ちの問題ではありません。材料をそろえて、期日を確認して、紙で送る。ひとりで抱えなくて大丈夫です。
並行して、入金が1か月遅れても回る状態にしておくと、交渉でも強く出られます。削る順番は固定費の見直し、効果が大きい順に5つにまとめました。
X(@tax_kiichan)でも、フリーランスのお金まわりの話をぽつぽつ書いています。
※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は税務署または税理士に、法的手続については弁護士や相談窓口にご相談ください。

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