売上1,000万円を超えそうなときに考えること|消費税は2年遅れで来ます

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「今年の売上が1,000万円を超えそうです。来年から消費税を納めることになりますか?」

いいえ、来年ではありません。個人事業主が消費税の課税事業者になるのは、原則として課税売上高が1,000万円を超えた年の「翌々年」から。2年の時間差があります。実務でいちばん質問が多いのが、まさにこの時期のズレなんです。

ただしこの2年遅れが当てはまらないケースもあって、代表的なものが2つ。それを知らないと、思っていたより早く課税事業者になっていたことに後から気づきます。確認したいことを3つに絞って整理します。なお、このほかに事業を相続した場合や、課税事業者選択届出書を出している場合も別扱いになります。以下は2026年8月時点の制度にもとづいています。

1. 基準期間は「前々年」を見る

消費税の納税義務があるかどうかは、その年ではなく「基準期間」の課税売上高で決まります。基準期間とは、個人事業主の場合はその年の前々年です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます。

つまり令和8年(2026年)の課税売上高が1,000万円を超えたら、課税事業者になるのは令和10年分から。令和8年分と令和9年分は、これまでと同じ免税事業者のままです。今年たくさん売れても、来年すぐ消費税を納めるわけではありません。

なお1,000万円は「超」で判定します。ちょうど1,000万円なら「1,000万円以下」なので、この判定では免税事業者のままです。

きいちゃんメモ

基準期間に免税事業者だった方は、その期間の売上に消費税が含まれていないため、税抜処理をせずにそのままの金額で1,000万円と比べます。「税抜きにしたら1,000万円以下だった」という計算はできません。ここは毎年勘違いのご相談があります。

2. 特定期間(前年1月〜6月)で1年早まることがある

これが1つめの例外です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務は免除されません。個人事業主の特定期間は、その年の前年1月1日から6月30日までの期間です。

令和8年の1月から6月までで1,000万円を超えていれば、令和10年分を待たず令和9年分から課税事業者。上半期で一気に伸びた年は、ここを必ず見てください。

特定期間の1,000万円の判定は、課税売上高に代えて「給与等支払額の合計額」で行うこともできます。どちらの基準で判定するかは納税者の任意なので、売上は超えたけれど給与の支払いが1,000万円以下という方は、給与等支払額での判定を選べば免税事業者のままでいられます。ひとりで事業をしていて給与の支払いがないなら、この判定はゼロです。

3. インボイス登録をしているなら、そもそも課税事業者

2つめの例外、というより前提の話です。適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている場合は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されません。

売上1,000万円の判定は、あくまで免税事業者でいられるかどうかの話です。すでにインボイス登録をしている方は登録の時点で課税事業者になっているので、「1,000万円を超えたら消費税」という話はご自身には当てはまりません。ここを混同したまま申告を忘れる方がいらっしゃるので、登録済みかどうかを先に確認してください。

課税事業者になると決まったら、出す書類が2つ

超えたあとの手続き

  1. 消費税課税事業者届出書(基準期間用/特定期間用)を、事由が生じた場合に速やかに納税地の所轄税務署長へ提出する
  2. 簡易課税を使うなら、消費税簡易課税制度選択届出書を、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに提出する
  3. すでにインボイス登録をしている、または課税事業者選択届出書を出している場合は、届出書の提出は不要(登録日・提出日の属する課税期間の翌課税期間以後)

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上の消費税額にみなし仕入率(卸売業90%、小売業80%、サービス業50%。ただし飲食店業は60%です)を掛けて仕入れの消費税額としてよい、という制度です。仕入れの少ない業種ではこちらが有利になることが多いのですが、届出の期限が「使いたい年が始まる前日まで」なので、原則として後から遡れません。

ただし例外があります。2割特例または3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間から簡易課税を使いたい場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに、その年から簡易課税の適用を受ける旨を記載した届出書を出せば間に合います(令和8年度税制改正で見直されました)。たとえば令和8年分まで2割特例で申告した方が令和9年分から簡易課税にするなら、令和9年分の申告期限までに出せば大丈夫です。自分がどちらに当たるかは、直前の申告で特例を使ったかどうかで変わります。

この特例に当たらない通常のケースでは、原則どおりです。令和10年分から簡易課税でいきたいなら、令和9年12月31日までに提出しておく必要があります。年末に思い出しても間に合わないことがあるので、課税事業者になると分かった年のうちに決めてしまうのが安全です。なお簡易課税は、原則として2年間は継続して適用します。

よくある質問

2割特例はいつまで使えますか

2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)は、納付税額を売上税額の2割にできる経過措置です。適用できる期間は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間なので、個人事業主にとっては令和8年分の申告が最後になります。事前の届出は不要で、確定申告書に適用を受ける旨を付記すれば使えます。

そのあとは、令和8年度税制改正で「3割特例」が創設されました。個人事業主で、基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下、かつインボイス発行事業者の登録を受けている方が、令和9年分・令和10年分の申告で納付税額を売上税額の3割にできます。3割特例も2割特例と同じく事前の届出は不要ですが、確定申告書に適用を受ける旨を付記する必要があります。なお、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた年は、2割特例も3割特例も使えません。

消費税の申告期限は所得税と同じですか

違います。個人事業主の消費税は、所得税より少し遅い3月31日が期限です。令和7年分の消費税の法定納期限は令和8年3月31日でした。所得税の確定申告を終えて気が抜けたころにもう一件残っている形になるので、初めての年はカレンダーに書いておいてください。

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売上が1,000万円を超えると、2年後から消費税の申告が加わります。帳簿の入力画面で売上や経費に税区分を付けられるか、消費税の申告書まで同じソフトで作れるか、課税事業者になった年の設定をどう切り替えるかを、公式サイトで確認してください。

おわりに

売上が1,000万円に届くのは、それだけで大きなことです。消費税は2年後の話なので、慌てて何かを止める必要はありません。やることは「前々年と、前年の1月から6月を見る」「インボイス登録の有無を確認する」「課税事業者になる年が決まったら、その前年中に簡易課税を決める」の3つだけ。順番どおりに見ていけば、置いていかれることはありません。

お金と税金の話は、X(@tax_kiichan)でも日々つぶやいています。よかったら覗いてみてください。

※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。消費税の判定は事業の形態や取引の内容によって細かい例外があり、経過措置には適用期限もあります。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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