業務委託と会社員、同じ月30万円でも手取りが違う理由|差は4つ

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「同じ月30万円のはずなのに、業務委託で働いている友だちのほうが振込額が多いんです。会社員って損なんでしょうか」

結論から書きます。額面が同じなら、その月に振り込まれる金額は業務委託のほうが多くなりがちです。ただ、得をしているのとは違います。会社員は社会保険料と所得税を引かれたあとの額が振り込まれ、業務委託は引かれる前の額が振り込まれて、あとから自分で国民年金・国民健康保険・所得税・住民税を払う。順番と負担のしかたが違うだけで、負担が消えているわけではありません。

違いは大きく4つです。数字は2026年(令和8年)8月時点のものです。

違い1 社会保険を「折半してもらえるか」

厚生年金保険料率は18.3%で固定されていて、事業主と被保険者が半分ずつ負担します。本人が払うのは9.15%。標準報酬月額が30万円の等級にあてはまる人なら本人負担はおよそ月27,450円で、会社が同じ額をもう一方で納めています。健康保険(協会けんぽ)も、保険料は事業主と被保険者の折半です。

業務委託の人は国民年金と国民健康保険です。国民年金保険料は令和8年度で月17,920円。収入がいくらでも同じです。国民健康保険料は所得などをもとに世帯単位で計算されますが、算定方法は市区町村の条例で決まるため、同じ所得でも住む場所で金額が変わります。市区町村の窓口で確認してください。

きいちゃんメモ

月額だけ見ると、国民年金の保険料は厚生年金の本人負担より安く見えます。でも厚生年金は会社が同じ額を上乗せして納め、その分が将来の年金に反映されます。「保険料が安い」と「得をしている」は一致しません。

106万円・130万円の壁も、この社会保険の入り口の話です。くわしくは扶養の壁をまとめた記事に書きました。

違い2 源泉徴収と年末調整。引かれるタイミングが違う

会社員は毎月の給与から所得税を天引きされ、12月の年末調整で1年分を精算します。だから確定申告をしない人が多い。

業務委託は違います。報酬から源泉徴収されるとは限りません。対象は原稿料・デザイン料・講演料や、弁護士・税理士などへの報酬といった、法律で決められた種類のものだけです。税率は支払金額100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分は20.42%。

業務委託には年末調整がありません。精算の場が確定申告しかないので、源泉徴収されている人は申告してはじめて払いすぎた分が戻ります。源泉税に気づかないまま過ごしていた、という方は毎年いらっしゃいます。申告期限は例年、翌年の3月中旬。直近では令和7年分の所得税が令和8年3月16日でした。

違い3 経費が引けるか。定額か、実額か

給与には、実際にいくら使ったかに関係なく差し引ける「給与所得控除」があります。令和8年度税制改正で最低保障額が65万円から74万円に引き上げられました。領収書を集めなくても自動で引かれます。ただし74万円は令和8年分・令和9年分の特例で、令和10年分以後は「収入金額×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円)」という計算に切り替わります。

業務委託は、実際に使った経費を差し引きます。経費がほとんどかからない仕事なら定額の給与所得控除のほうが大きいこともあるし、材料費や外注費が大きい仕事なら実額が有利です。さらに青色申告なら、複式簿記で記帳して期限内に申告すれば55万円、加えて電子帳簿保存かe-Taxでの提出をすれば65万円、それ以外は10万円の青色申告特別控除が使えます。

青色申告には開業届と青色申告承認申請書が必要です。出すタイミングは開業届はいつ出すかの記事にまとめました。

違い4 雇用保険・労災・有給という「見えない給与」

雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがあれば、パートでもアルバイトでも被保険者になります。仕事を失ったときの基本手当や育児休業給付はここから出ます。業務委託にこの制度はありません。労災保険は令和6年11月1日から、企業などから業務委託を受けているフリーランスも業種・職種を問わず「特別加入」ができるようになりましたが、自動では入りません。保険料も自分で払います。

年次有給休暇は、雇い入れの日から6か月続けて勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日が付与されます。所定労働日数が少ないパートの方にも比例して付与されます。業務委託は、休んだ日はそのまま収入がゼロです。

きいちゃんメモ

契約書の名前が「業務委託契約書」でも、労働者にあたるかどうかは契約の形式や名称ではなく実態で総合的に判断されます。指揮監督を受けて働いている心当たりがあれば、労働基準監督署の相談窓口へ。

将来の年金は、ここでいちばん差がつきます

日本の公的年金は2階建てです。20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金(基礎年金)が1階、会社員・公務員が加入する厚生年金保険が2階。会社員は第2号被保険者として両方に加入しています。業務委託・自営業の人は第1号被保険者で、国民年金だけ。第1号でいる期間について積み上がるのは基礎年金だけです(会社員だった期間があれば、その分の厚生年金は受け取れます)。毎月の手取りにはあらわれない差です。自分で2階部分をつくる制度(国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済)があるのは、そのためです。

手取りを比べるときに見る4つ

  1. 社会保険料を折半してもらえるか
  2. 源泉徴収と年末調整があるか
  3. 経費が実額か、給与所得控除という定額か
  4. 雇用保険・労災・有給などの保障があるか

では、どちらが得なのか

一律には決められません。国民健康保険料は自治体で違い、経費の出方も仕事で違うからです。それでも判断はできます。①1年分の額面、②経費として実際に出ていくお金、③社会保険料(折半か、全額自分か)、④保障がないぶん自分で備える金額。この4つを書き出すと、「額面が同じ」という前提そのものが崩れることが多いです。

副業で業務委託を受けたら、確定申告は必要ですか

給与を1か所から受けていて全部が源泉徴収の対象なら、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。住民税の申告は別に必要になることがあるので、市区町村に確認してください。源泉徴収されていて還付を受けたいなら、20万円以下でも申告することになります。

マネーフォワード クラウド確定申告

業務委託で働くと、帳簿付けと確定申告は自分の仕事になります。銀行口座やカードの明細を取り込めるか、青色申告の決算書まで作れるか、無料で試せる範囲はどこまでかを、公式サイトで確認してください。

おわりに

振込額が多い月の裏側には、まだ払っていない保険料と税金があります。少ない月の裏側には、会社が半分持ってくれた保険料と、休んでも減らない給料がある。自分がどちらの負担のしかたを引き受けたいのか。それを決める材料として、この4つを使ってもらえたらうれしいです。

制度の細かい話や、その年だけの改正の話は、X(@tax_kiichan)でも書いています。

※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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