こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「信託報酬って、年1%くらいですよね。そんなに気にするほどのものですか」
先に答えを書きます。信託報酬は、投資信託を持っているあいだ毎日、資産全体から自動で差し引かれ続けるコストです。買うときに一度だけ払う手数料とは、効き方がまったく違います。毎月3万円を20年積み立てた場合、年0.1%と年1.5%では最終額におよそ180万円の差が出ました。以下、その計算を順に見ていきます。
信託報酬は、だれが何のために受け取るお金か
信託報酬は、投資信託を運用・管理してもらうための年間の手数料です。年率で表示され、純資産総額に対してかかります。受け取るのは1社ではなく、三者で分け合うのが基本です。
- 販売会社(証券会社・銀行)……口座管理や報告書の交付など
- 運用会社……どの資産をどれだけ買うかを決め、実際に運用する
- 信託銀行……預かった資産を自社の財産と分けて保管する
やっかいなのは、この費用が請求書としても引き落としとしても出てこないことです。信託報酬は日々の基準価額を計算する段階ですでに差し引かれています。つまり、私たちが画面で見ている基準価額は「もう手数料を引いたあとの数字」。だから残高照会にも取引明細にも、支払った記録が一行も現れません。
確定申告のご相談で運用状況をうかがうとき、ご自身が持っている投資信託の信託報酬を答えられる方は、正直なところ多くありません。基準価額と評価損益は毎日のように見ていても、コストの欄は一度も開いたことがない、という方がほとんどです。
電卓で確かめる。毎月3万円を20年、0.1%と1.5%
言葉だけではぴんと来ないので、実際に計算してみます。前提はこうです。
- 毎月3万円を20年間、毎月末に積み立てる(元本は720万円)
- 信託報酬を引く前の年利回りを5%と仮定する(この利回りは一定に続くものとする)
- 信託報酬を引いたあとの利回りは、5%−0.1%=4.9%、5%−1.5%=3.5%として計算する(わかりやすさのため単純に差し引いています)
- 税金・分配金・購入時手数料は考慮しない
実際の運用成績はこのとおりには動きません。あくまで「コストだけを比べるための計算」として見てください。
| 信託報酬 | 10年後 | 20年後 |
|---|---|---|
| 年0.1% | およそ463万円 | およそ1,219万円 |
| 年1.5% | およそ430万円 | およそ1,041万円 |
| 差 | およそ33万円 | およそ178万円 |
元本720万円に対して、差は約178万円。元本のおよそ4分の1にあたる金額が、手数料の違いだけで差になっていることになります。しかも10年時点では33万円だった差が、次の10年で145万円ぶん広がっています。信託報酬は「引かれた分が、その後ずっと増えなくなる」ので、後半になるほど効いてくるのです。
まとまったお金でも同じです。100万円を一度に投じて20年置いた場合、同じ前提で0.1%なら約260万円、1.5%なら約199万円。差はおよそ61万円になります。
では「安ければいい」で終わってよいのか
ここまで読むと最安を選べばよさそうに見えますが、そう単純でもありません。
まず、水準が違う理由があります。指数に連動させることを目指すインデックス型は、組み入れる銘柄が指数で決まるので調査の手間が小さく、信託報酬は低めになります。一方、運用会社が銘柄を選んで指数を上回ることを目指すアクティブ型は、調査・分析の人件費がかかるぶん高くなります。高いこと自体が悪いのではなく、その差額に見合う中身があるかどうかが問われている、という話です。ただし、コストは確実に引かれるのに対し、成績が上回るかどうかは事前にはわかりません。ここは冷静に見る必要があります。
また、投資信託のコストは信託報酬だけではありません。
- 購入時手数料……買うときに一度だけかかる。無料のものもある
- 信託報酬……持っているあいだ毎日かかる。合計額がいちばん大きくなりやすい
- 信託財産留保額……解約時に差し引かれ、残る受益者のために信託財産へ組み入れられる。設定のない商品もある
- その他の費用……売買委託手数料や監査費用など。運用状況で変動するため、事前に率が確定しない
信託報酬だけを見比べて安いほうを選んだのに、その他の費用まで含めた実質的な負担では逆転していた、ということも起こり得ます。
目論見書と運用報告書の、どこを見るか
確認先は2つです。
1つめは交付目論見書。買う前に必ず渡される書類で、後半の「ファンドの費用・税金」という欄に、購入時手数料の上限・信託報酬の年率・信託財産留保額がまとめて載っています。信託報酬は「販売会社」「委託会社」「受託会社」への配分まで内訳が書かれているので、誰にいくら払っているかもわかります。なお合計は税込の年率、内訳は税抜の年率で書かれていることがあるので、数字が合わないときは表示のしかたを確かめてください。
2つめは交付運用報告書。こちらは決算後に交付される事後の報告で、「1万口当たりの費用明細」という表があります。実際にかかった費用が金額と比率で書かれているのはこちらで、目論見書に率が載っていない「その他の費用」まで含めた実績を確認できます。信託報酬の率だけでなく実質的な負担を知りたいなら、こちらを見てください。
確認したい3つ
- いま持っている投資信託の信託報酬は、年何%か
- 購入時手数料・信託財産留保額はかかるか
- 運用報告書の費用明細で、実際の負担はいくらだったか
よくある質問
信託報酬は、いつ引き落とされるのですか
引き落としはありません。日割りで計算され、信託財産から日々差し引かれます。表示されている基準価額は、すでに差し引かれたあとの数字です。年1回まとめて請求されるわけではないので、支払った実感が湧きにくいコストです。
値下がりしている年も、信託報酬はかかりますか
かかります。信託報酬は純資産総額に対してかかるもので、運用成績とは連動しません。損益がマイナスの年でも差し引かれ続けます。「成功したときだけ払う費用」ではない、という点は押さえておいてください。
信託報酬は経費や控除の対象になりますか
個人の投資では、事業の経費にはできません。譲渡所得の計算上も、信託報酬は取得のために要した費用ではなく、すでに基準価額から差し引かれているため、取得費として別に足すものではありません。運用リターンが目減りする形で負担している、と理解してください。
おわりに
「たった1%」の正体は、20年でおよそ180万円でした。相場の先行きは誰にも読めませんが、コストだけは買う前に自分で確かめられて、しかも確実に効きます。読める数字から手をつけるのは、堅実なやり方だと思います。
今日はまず、お手元の1本の信託報酬が年何%か、目論見書で見てみてください。5分あれば終わります。
松井証券
信託報酬は商品ごとに決まっているので、同じ指数に連動する投信でも、証券会社の取扱本数によって選べる幅が変わります。低い商品が置いてあるかを、口座を開く前に一覧で確かめてください。松井証券は投資信託の取扱本数が十分にあり、電話で聞ける窓口もあります。最新の手数料と取扱商品は公式サイトでご確認ください。
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※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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