こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「積立投資、もうやめたほうがいいでしょうか」
結論を先に書きます。まず「積立を止める」と「売る」を切り離してください。この2つはまったく別の行為で、必要な判断もまるで違います。そして多くの場合、答えは「やめる」ではなく「減らす」で足ります。毎月1万円の積立を3,000円に下げるだけで、家計の重さは消えて、投資は続きます。売るかどうかは、そのあとでゆっくり考えて間に合います。
やめたい理由は2つあるのに、行き先が同じになってしまう
「やめたい」と思うとき、その理由はだいたい次のどちらかです。
- 相場が下がって、口座の評価額が減っているのが不安
- 収入が減った、支出が増えた。毎月の積立が家計に重い
この2つは原因がまったく違います。前者は気持ちの問題、後者はキャッシュフローの問題です。それなのに、どちらも「やめる」という同じ行動に着地してしまう。ここが落とし穴です。家計が苦しい人に必要なのは毎月の現金であって、これまで積み上げた資産を手放すことではありません。
相場が大きく下がった年の確定申告シーズンに、「こわくなって全部売りました」と伺うことがあります。ご本人にとっては必死の判断なのですが、多くの場合、その方が本当に困っていたのは家計のほうでした。
家計が苦しいなら、売る前に「減額」
積立の設定は、いつでも変えられます。ネット証券の多くは投資信託の積立を100円から設定でき、金額の変更・停止・再開に手数料はかかりません。積立を止めても、これまで買った分はそのまま運用が続きます。止めるのは「これから買う行為」だけで、持っている資産は減りも消えもしません。
だから、家計が苦しいときの順番はこうなります。まず積立額を下げる。それでも足りなければ、いったんゼロにする。売るのはいちばん最後です。とくに、生活費の3〜6か月分ほどの現金(生活防衛資金)がない状態で積立を続けているなら、積立を減らして手元の現金を厚くするのは、むしろ正しい判断です。投資を続けるための土台は、現金だからです。
なお、最低積立金額や変更手続きのルールは金融機関によって違います。ご自分の口座の画面で確認してください。
「下がったから売る」は、安く売るということ
もうひとつの理由、相場が下がって不安、のほうです。ここは数字で見たほうが早いと思います。
基準価額が10,000円だったものが7,000円まで下がったとします。3割の下落です。このとき手放すと、持っている口数は変わらないのに、受け取る金額は3割少なくなります。売るタイミングを決めているのは自分ではなく、値段のほうです。
いっぽうで、毎月3万円ずつ積み立てている人は、基準価額10,000円のときは30,000口、7,000円のときは約42,900口を買っています。下がった月ほど多くの口数を買えているわけです。積立投資の仕組みは、値段が下がった局面を味方につけるようにできています。その局面でやめてしまうのは、仕組みの一番おいしいところを捨てることになります。
もちろん、値段がいつ戻るかは誰にもわかりません。だからこそ、近い将来(数年以内)に使う予定のあるお金は最初から投資に置かない、という線引きが効いてきます。
iDeCoは、そもそも「やめる」ができない制度
ここは勘違いの多いところです。iDeCoは老後資金をつくるための年金制度なので、積み立てた資産は原則として60歳まで引き出せません。「苦しいから解約して現金にする」は、原則できないと考えてください。
できるのは、毎月の掛金を止めることです。運営管理機関に「加入者資格喪失届」を出して拠出をやめると「運用指図者」という立場になり、それまでの資産の運用指図だけを続けます。ただし、掛金を出していなくても口座管理の手数料はかかり続けます。掛金を減額する(下限は月5,000円、1,000円単位)という選択肢もありますが、掛金額の変更は12月分から翌年11月分までの間に1回だけと決まっています。止める前に、まず減額できる状況かどうかを運営管理機関に確認してください(2026年8月時点)。
NISAで売ったら、枠はどうなるのか
2024年に始まった新しいNISAでは、保有している商品を売却すると、その商品を買ったときの金額(簿価)ぶんの非課税保有限度額(生涯投資枠1,800万円)が翌年に復活します。ここは旧制度と大きく違うところです。
ただし、1年間に投資できる年間投資枠は復活しません。つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計360万円という枠は、その年に使い切ったらそれまでです。「売って、買い直す」を同じ年のうちに何度も繰り返す使い方はできない、と理解しておいてください(2026年8月時点の制度)。
積立を止めたら、また始めるのは面倒ですか
いいえ。口座はそのまま残るので、再開は積立設定を入れ直すだけです。口座を解約してしまうと再開に手間がかかるので、迷っているうちは口座は残しておくほうがいいと思います。
損したまま売ると、税金は取り戻せますか
NISA口座での損失は、ほかの口座の利益と相殺すること(損益通算)も、翌年以降に繰り越すこともできません。ここも課税口座とは違う点です。
売る前に確認する4つの順番
- やめたい理由は「不安」か「家計」か、を分ける
- 家計が理由なら、まず積立額を下げる(ゼロにもできる)
- 生活防衛資金(生活費の3〜6か月分が目安)があるかを確認する
- それでも売るなら、そのお金をいつ何に使うのかを先に決める
松井証券
積立をやめるか迷ったときは、売る前に「積立額を減らす」「一時的に止める」がどの画面でできるかを先に確かめておくと慌てずにすみます。いま使っている口座でそれがしにくいと感じたら、つみたて設定の変更や停止の手順、投資信託の取扱本数、電話で相談できる窓口の有無を、公式サイトで確認してみてください。
公式サイトを見る
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おわりに
積立をやめたくなるのは、意志が弱いからではありません。金額が生活に合っていないか、目的をいったん見失っているか、そのどちらかです。何のために積み立て始めたのかを思い出して、いまの家計に合う金額まで下げる。それだけで続けられることは、思っているよりずっと多いです。
日々のお金の話はエックスのきいちゃんでも書いています。よければのぞいてみてください。
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※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。また、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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