青色事業専従者給与の増額|変更届出書の期限と「届出額の範囲内」の意味

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「専従者の給料を上げたいのですが、届出書はまた3月15日まで待たないといけませんか?」

待たなくて大丈夫です。金額を変えるときに出すのは「青色事業専従者給与に関する変更届出書」で、提出期限は「遅滞なく」。3月15日というのは、はじめて届け出るときの期限です。ただし条件があります。必要経費になるのは、届け出た金額の範囲内で払った分だけ。増額後の金額で払い始める前に出しておくのが安全です。

届出書の金額は「ここまでなら経費」の線を引く紙

所得税法57条1項は、青色事業専従者給与が必要経費になる条件を「次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合」と書いています。この「次項の書類」が届出書です。届出書は「いくら払う予定です」という報告ではなく、経費にできる上限を自分で引く紙です。

月15万円と届け出て月12万円しか払わなかった年があっても、必要経費の側で問題は起きません。逆に月12万円と届け出て月15万円払うと、差の3万円は払った月数ぶんまとめて経費から外れます。

きいちゃんメモ

届出書は給料の欄と賞与の欄が分かれています。賞与を出すつもりなら、賞与の欄にも支給期と支給の基準(金額)を書いておきます。空欄のまま賞与だけ払うと、届け出た方法どおりの支払いにならないおそれがあります。

変更届出書の提出期限は「遅滞なく」

この期限は所得税法施行規則36条の4第2項に定められていて、何月何日という日付はありません。同項が書くことにしているのは、氏名や住所のほか、変更する内容とその理由です。届出書に記載した内容とは別に給与規程を定めているなら、その写しも提出します(A1-11の添付書類)。

ただ、日付で区切られていないことと、いつ出してもいいことは別です。必要経費になるのは届け出た金額の範囲内なので、増額後の金額で払い始める前に出しておくのが安全です。

国税庁の書き方の説明は、変更届出書を出す場面を「給与規程を変更する場合、通常の昇給のわくを超えて給与を増額する場合など」の金額の基準の変更と、「新たに専従者が加わった場合」に分けています。裏を返せば、届出書の「昇給の基準」の欄に毎年の昇給のしかたを書いておけば、その枠の中の昇給では出し直しになりません。ただし国税庁の記載例は「記載額を超えて給与を支払う場合は、「変更届出書」を改めて提出する」としています。昇給の基準の枠の中であっても、届け出た月額を超えるなら出しておくほうが安全です。この欄が空欄で、給与規程の写しも出していないなら、上げるたびに変更届出書が必要になると考えておくほうが安全です。

なお、「新たに専従者が加わった場合」だけは、日付の期限もあります。その年の1月16日以後に新たに青色事業専従者を有することとなった場合は、その日から2か月以内です(所得税法施行規則36条の4第3項)。国税庁の質疑応答事例も「青色事業専従者とした日から2か月以内に青色事業専従者に関する届出(変更届出)書を提出しなければなりません」としています。この事例では、退職から年末までの従事可能期間の2分の1を超えて専ら従事していれば、年の中途から専従者になった人にその間に支払った給与を必要経費に算入して差し支えないとされています。期限内に出すことが前提です。用紙は同じ1枚で、はじめてなら「届出」、すでに出している人なら「変更届出」を選ぶだけです。はじめての届出の期限や専従者そのものの条件は、家族に払う給料は経費になる?青色事業専従者給与の条件と届出の期限で詳しく書いています。

「いくらまでなら相当か」は3つの状況で見られる

届け出れば何円でも通るわけではありません。国税庁は、必要経費になる青色事業専従者給与額を「支給した給与の金額が次の状況からみて相当と認められるもので、しかも、この届出書に記載した金額の範囲内のもの」に限るとして、3つの状況に整理しています(所得税法施行令164条1項。届出書の記載要領・A1-11[備考])。

相当かどうかを見る3つの状況

  1. 専従者が労務に従事した期間、労務の性質、その提供の程度
  2. 他の使用人が受ける給与の状況と、同種で規模が似た事業に従事する人が受ける給与の状況
  3. その事業の種類と規模、収益の状況

届出書には、他の使用人に払っている給与の金額と、その支給の方法・形態を書く欄もあります(所得税法施行規則36条の4第1項4号)。過大とされる部分は必要経費になりません。届け出た金額に収まっていても、そこは別に見られます。

金額が上がると、源泉徴収の話がついてくる

家族以外に人を雇っていなくても、専従者に給与を払えば源泉徴収義務者になります。給与の支払事務を取り扱う事務所を開いた日から1か月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を出します。ただし、開業のときに「個人事業の開業・廃業等届出書」を出していれば、この開設届出書は出さなくてよいことになっています(令和8年1月1日以後に開業した場合は除かれます)。増額に合わせて出し直す書類でもありません。

金額と直結するのが、毎月引く税額です。専従者から「給与所得者の扶養控除等申告書」を出してもらっていれば月額表の甲欄を使い、令和8年分の月額表では、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額が105,000円未満なら、扶養親族等の数が7人までは税額は0円です。よく言われる88,000円は令和7年分までの金額です。申告書の提出がないと乙欄になり、1円目から引くことになります。

源泉徴収した所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます。毎月の納付が負担なら、給与の支給人員が常時10人未満であれば納期の特例が使えます。1月から6月までに源泉徴収した分は7月10日、7月から12月までの分は翌年1月20日の年2回にまとまります。申請書は却下の通知がなければ提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、提出した月の翌月に源泉徴収する分から対象です。手順は源泉所得税の納期の特例とは?対象・申請・年2回の納付期限にまとめています。

配偶者控除・配偶者特別控除とは併用できない

金額を決めるときに忘れやすいのが、ここです。青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、配偶者なら同一生計配偶者、子などの親族なら扶養親族から外れます(所得税法2条1項33号・34号)。配偶者特別控除も、条文が青色事業専従者等を除いているので使えません(所得税法83条の2)。

金額を月1万円に抑えても、給与を払っている以上は配偶者控除が戻ってくることはありません。少しだけ払う形がいちばんもったいなくなりやすいので、出すなら労務の実態に見合う金額を届け出て、世帯全体で見るのが基本です。

金額を下げるときも変更届出書は必要ですか

下げた金額は届け出た金額の範囲内なので、必要経費に入らなくなる心配はありません。国税庁ホームページに載っている記載例も、届け出た金額より少なく支払う場合は届出不要としています。ただ、届出が要らないのは支払う金額を下げるときの話です。施行規則は「給与の金額の基準を変更する場合」と書いているだけで増額に限っていないので、届け出た基準そのものを下げるなら変更届出書の対象です。迷うときは所轄の税務署に確認してください。

増額して払ってから、届出を忘れていたと気づきました

気づいた時点ですぐに出してください。用紙には「◯年◯月以後の青色事業専従者給与の支給に関しては次のとおり変更することとした」と適用を始める月を書く欄があります。ただし、遅滞なくとは言えない時期に出した変更届出書で、すでに払ってしまった増額分までさかのぼって経費にできるかどうかは、国税庁の一次情報には書かれていません。確実なのは、変更届出書を出して、それ以後に払う分を届け出た金額の範囲内に収めることです。すでに払った分の扱いは、所轄の税務署に確認してください。年の途中で気づいたなら、残りの月だけでも整えておきます。

やよいの青色申告 オンライン

専従者給与は、毎月の仕訳と源泉徴収の管理がずっと続きます。給与の仕訳が青色申告決算書の「専従者給与」欄に反映されるか、源泉徴収の額を控えておける場所があるか、e-Tax送信までひと続きかを公式サイトで確認してください。

おわりに

専従者給与は、いちど金額を決めたあと「上げたいけれど手続きが面倒そう」で止まってしまうことが多い制度です。必要なのは届出書1枚で、金額を変えるだけなら3月15日を待つ必要はありません。押さえるのは2つ。増額後の金額で払い始める前に出しておくこと。そして、労務の実態に見合う金額にしておくこと。この2つを守れば、家族の働きに見合う金額へ素直に近づけていけます。

日々の税金のちょっとした話は、X(@tax_kiichan)でも書いています。

※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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