こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「個人事業税は所得290万円以下なら必ずゼロで、290万円を超えた分だけ払うのでしょうか?」
個人事業税には、原則として年290万円の「事業主控除」があります。対象業種で一年を通して事業を行い、計算上の所得が290万円以下なら、通常は個人事業税が生じません。超えた場合も、原則として290万円を差し引いた残りへ税率を掛けます。
ただし、確定申告書の「所得金額」をそのまま290万円と比べると間違うことがあります。個人事業税は都道府県税で、対象業種、青色申告特別控除の扱い、事業期間など独自の計算項目があるためです。
個人事業税は、法定業種にかかる都道府県税
個人事業税は、地方税法等で定められた事業を個人で営む場合に、事務所等のある都道府県が課税する税金です。東京都の案内では70の法定業種があり、業種に応じて3%、4%、5%の税率が定められています。
同じ「フリーランス」という呼び方でも、仕事の実態によって該当する業種が異なります。肩書きだけで決めず、具体的に何を提供し、どのように報酬を得ているかで確認します。法定業種に当てはまらない所得へ一律に5%かかるわけではありません。
最初に確認する4点
- 仕事の内容が都道府県の法定業種に該当するか
- その業種の税率が3%・4%・5%のどれか
- 一年の途中で開業・廃業していないか
- 事業所得の計算に繰越控除などの調整がないか
対象業種と税率は都道府県の公式ページで確認してください。住所と事務所の所在地が違う場合や、複数の事業を営む場合は、担当する都道府県税事務所へ確認すると確実です。
290万円は「非課税ライン」より事業主控除
一年を通して事業を行った場合の事業主控除は年290万円です。基本的なイメージは、「個人事業税の計算上の所得-事業主控除290万円」に業種別税率を掛ける形です。所得全額へ税率を掛けるわけではありません。
たとえば、調整後の所得が400万円、税率5%、一年を通じて事業を行ったものと仮定すると、概算は(400万円-290万円)×5%=5万5,000円です。実際には損失の繰越、事業専従者給与、複数業種などを確認して決まります。
年の途中で開業または廃業した場合、290万円をそのまま使わず、事業を行った月数に応じて月割りします。1か月未満の端数があるときの数え方もあるため、「短期間だから必ず税額ゼロ」とは限りません。
所得が290万円を少し超えたら、税額が急に何十万円も増える仕組みではありません。原則として控除後の部分へ税率を掛けるため、まずは概算額を出して納税資金を分けましょう。
青色申告特別控除は個人事業税に使えない
所得税の確定申告で65万円、55万円または10万円の青色申告特別控除を使っていても、個人事業税の所得計算ではこの控除を適用しません。確定申告書の事業所得だけを見て290万円以下と判断すると、見込み違いが起きやすいところです。
たとえば、青色申告特別控除65万円を差し引いた後の事業所得が280万円でも、個人事業税では控除前の345万円を出発点にする場合があります。ほかの調整がない単純な前提なら、345万円-290万円=55万円が税率を掛ける対象です。
青色申告特別控除65万円の要件は所得税の節税に大切ですが、「所得税が下がった額と同じだけ個人事業税も下がる」とは限りません。税目ごとに計算を分けてください。
原則は確定申告データから都道府県が計算する
所得税の確定申告をした人は、通常、個人事業税だけの申告書を改めて出す必要はありません。確定申告書の情報が都道府県へ送られ、対象となる場合は納税通知書が届きます。ただし、年の途中の廃業、損失の繰越など、別途申告や記載が必要になる場面があります。
納付時期は自治体の通知で確認します。東京都では、原則として8月と11月の年2回です。自治体や個別事情により納期限が異なる場合があるため、納税通知書に記載された期限を優先してください。
通知が来ないことだけを理由に、自分は対象外だと断定しないでください。仕事の内容が分かりにくいと、都道府県から業務内容の照会が届くこともあります。契約書、請求書、ウェブサイトの業務案内をそろえ、実態を説明できるようにします。
経費の漏れは所得税にも個人事業税にも影響します。フリーランスの経費一覧で事業関連性を確認し、領収書があるだけで私的支出を入れないようにしましょう。
通知が来る前に概算して資金を残す
年末・申告時の概算手順
- 青色申告特別控除前の事業所得を確認する
- 専従者給与、損失の繰越など個人事業税の調整を確認する
- 事業月数に応じた事業主控除を差し引く
- 該当する法定業種の税率を掛ける
- 都道府県の通知額と概算を照合する
個人事業税は所得税や住民税とは別に届きます。住民税が6月に来る仕組みも確認し、年間の納税カレンダーへ並べておくと、通知後の資金不足を防ぎやすくなります。
おわりに
個人事業税の290万円は、対象業種すべてを一律に非課税にする判定額ではなく、原則として計算上の所得から差し引く事業主控除です。業種、税率、事業月数、青色申告特別控除の扱いを分けて考えます。
青色申告特別控除前の所得を出し、都道府県の業種表で税率を確認すると、通知前でもおおよその納税額が見えます。まず前年の確定申告書を開き、事業所得の内訳から確認してください。
税金と仕事のお金の話はX(tax_kiichan)でも書いています。
※本記事は2026年8月29日時点の東京都主税局等の公表資料にもとづく一般的な情報です。法定業種、税率、事業主控除の月割り、損失控除の可否は事業内容と都道府県で確認が必要です。個別の課税は所管の都道府県税事務所または税理士へご相談ください。

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