こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「自宅で仕事をしています。家賃や電気代はどこまで経費にしていいんでしょうか。青色申告じゃないとだめですか?」
答えは「事業に使っている部分を明らかに区分できるなら、その部分は経費になる」です。そして白色申告の方でも家事按分はできます。青色申告でなければ按分できない、というのはよくある誤解です。
ただし率は自分で決めて、自分で説明できるようにしておく必要があります。
白色でも按分できる。根拠は施行令96条の2本立て
所得税法45条1項1号は、家事上の経費と、これに関連する経費のうち政令で定めるものを必要経費に算入しない、と定めています。その政令が所得税法施行令96条で、次の2つだけが必要経費の側に残ります。
- 1号(誰でも)…家事上の経費に関連する経費の主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合の、その部分に相当する経費
- 2号(青色申告の承認を受けている人)…取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分
1号に青色という条件は付いていません。国税庁のタックスアンサーNo.2210にある「取引の記録などに基づいて」という言い方は2号寄りなので、白色申告の方は1号を見てください。
「主たる部分」の目安は所得税基本通達45-2にあります。業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかで判定するのが原則。ただし50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分できる場合には必要経費に算入して差し支えない、とも書かれています。
面積割・時間割・日数割は、費目で選ぶ
法令に「家賃は何%」「スマホは何%」という一律の率の定めはありません。
- 家賃・地代・火災保険料・固定資産税…面積割。仕事に使う部分の床面積÷総床面積
- 電気代…面積割か、面積割に「1日のうち仕事をしている時間の割合」を掛ける方法
- 通信費(スマホ・自宅の回線)…使用時間割か日数割
- 水道代…事務仕事なら按分しないほうが説明しやすい
家賃10万円、部屋全体が50㎡で、仕事に使っているのが10㎡なら20%。月2万円、年24万円です。所得税率10%の方なら、令和8年分の所得税でおよそ2万4千円、翌年度の住民税(所得割はおおむね10%)でおよそ2万4千円、合わせて4万8千円ほど変わります(復興特別所得税は考慮していません)。
日数割が向くのは、週のうち何日かは客先や店舗にいる方です。稼働5日のうち3日を自宅の仕事にあてているなら、稼働日を分母にして5分の3。暦の7日を分母に取れば7分の3で、率が変わります。実態を説明できるほうの分母を選び、毎年同じ分母で通してください。選んだ分母は、その理由といっしょにメモに書いておきます。
持ち家の方は、家賃ではなく建物の減価償却費と住宅ローンの利息を按分します。ローンの元本は経費になりません。住宅ローン控除を受けている方は、線が2本あります。措置法通達41-29は、居住用部分の床面積が家屋の床面積のおおむね90%以上であれば全部を居住用として扱ってよいとしているので、事業用がおおむね1割までなら控除額は減りません。おおむね1割を超えると居住用の割合で按分されて控除の対象になる借入金が減り、床面積の2分の1以上を専ら居住用にしていないと控除そのものが受けられません(国税庁タックスアンサーNo.1211-1の適用要件)。按分率を決める前に、この2本の線のどちら側にいるかを確かめてください。
按分の根拠に決まった様式はないので、自分でメモを残す
所得税基本通達45-1は、施行令96条1号の「主たる部分」と2号の「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」のどちらの判定も、「業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する」としています。決まった様式はありません。
按分のときに残す4つ
- 間取り図か床面積のメモ。仕事に使う部分に印を付ける
- 按分率と、そこに至る算式(10㎡÷50㎡=20%)
- その基準を選んだ理由(仕事はこの部屋だけでしている、など)
- 毎年同じ基準で通した記録。変えたときは、変えた理由
帳簿では、いったん全額を経費に計上して、決算で家事分を事業主貸へ振り替えるのが一般的です。
生計を一にする家族に払う家賃は、按分の前に経費になりません
所得税法56条は、生計を一にする配偶者その他の親族が事業から対価の支払を受ける場合、その対価は必要経費に算入しない、と定めています。同居の親から部屋を借りて家賃を払っても、按分するまでもなく経費になりません。受け取った側も所得として考えません。
ただし同じ56条の後半で、その親族の側で必要経費に算入されるべき金額は、事業主の側の必要経費に算入するとされています。国税庁も「子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります」と書いています。家賃そのものは通らないが、その部屋にかかる固定資産税の事業割合は通るという形です。
あわせて、所得税と住民税そのものは経費になりません(所得税法45条1項2号・4号)。固定資産税は業務用の部分に限って経費になります。全体像はフリーランスが経費にできるもの一覧で確認してください。
消費税では、家賃だけが別あつかい
消費税を本則課税で申告する方も、按分率の考え方そのものは所得税と大きく変わりませんが、消費税では「合理的な基準」という言い方をします。ただし家賃だけは別です。消費税法基本通達11-1-4は、事業と家事に共通して使うものとして取得した資産について、事業の用途に使う部分を「使用率、使用面積割合等の合理的な基準により計算する」としています。11-1-5は、水道光熱費等のうち課税仕入れになるのは所得税法施行令96条各号に掲げる経費に係る部分に限られる、とも書いています。
落とし穴は家賃です。居住用として借りている部屋は、消費税では住宅の貸付けにあたって非課税。消費税法基本通達6-13-8の注は、住宅として借り受けている建物を賃貸人との契約変更を行わずに事業の用に供したとしても、その借受けは賃借人の課税仕入れに該当しない、と書いています。契約を変えないまま自宅の一部を仕事に使っているだけなら、所得税で家賃の20%を経費にできても、消費税ではその家賃は控除の対象になりません。
逆に、同じ6-13-8の本文は、住宅以外の用途に変更する契約変更をした場合、変更後の貸付けは課税資産の譲渡等になるとしています。住宅と店舗・事務所が併設された建物を一括して借りている場合も、住宅として貸し付けられた部分だけが非課税で、事業用施設として貸し付けられた部分は課税です(6-13-5)。この場合の対価は、住宅部分と事業用施設部分に合理的に区分します。分かれ目は自分の使い方ではなく、賃貸借契約の中身です。
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家事按分は、率を決めたあと毎年同じ形で帳簿に反映させる作業が続きます。会計ソフトを検討するなら、按分の割合を科目ごとに登録できるか、決算でまとめて振り替えられるかを、無料で試せる期間のうちに自分の費目で確かめてください。プランで対応の範囲が違うので公式の表示で確認を。
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おわりに
家事按分でつまずくのは、率の決め方そのものよりも「あとから説明できるかどうか」です。選んだ理由と算式が1枚残っていれば、それがいちばん強い根拠になります。迷ったら税務署に確認してください。
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経費や確定申告の細かい話は、X(@tax_kiichan)でもつぶやいています。
※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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