こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「iDeCoって、受け取るときも税金がかかるんですか?」
答えは、かかります。しかも受け取り方によって手取りが変わります。掛けているあいだの節税(小規模企業共済等掛金控除)はよく知られているのに、出口の税金を知らないまま契約している方が本当に多いんです。実務でいちばん多い誤解が「iDeCoは受け取るときも非課税」。これは違います。
先に結論を書きます。一時金・年金・併用のどれが有利かは、会社の退職金があるか、いつ受け取るか、公的年金がいくらかで変わります。「一時金がいちばん得」と一律には言えません。判断に必要な4点を順に整理します。
受け取り方は3通り、税金のかかり方は2種類
iDeCoの老齢給付金は、原則60歳から75歳になるまでの間に受け取りを始めます。掛金を拠出した期間などを合わせた通算加入者等期間が10年未満の場合は、受け取りを始められる年齢が遅くなります。8年以上10年未満なら61歳、6年以上8年未満なら62歳、4年以上6年未満なら63歳、2年以上4年未満なら64歳、2年未満なら65歳からです。受け取り方は次の3つです。
- 一時金として一括で受け取る
- 年金として分割で受け取る(有期年金は5年以上20年以下。終身年金を扱う金融機関もあります)
- 一部を一時金、残りを年金で受け取る(併用)
税金の側から見ると、一時金は退職所得、年金は公的年金等に係る雑所得です。この2つは計算のしくみがまったく違います。だから「どちらで受け取るか」が手取りを左右します。
一時金は退職所得。覚える計算式はこれだけ
退職所得控除額は、勤続年数にあたる期間(iDeCoでは掛金を拠出した期間)で決まります。
- 20年以下:40万円 × 年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 20年超:800万円 + 70万円 ×(年数 - 20年)
課税されるのは(受取額 - 退職所得控除額)× 1/2 です。たとえば掛金を20年拠出した方なら控除額は800万円。一時金が800万円までなら退職所得はゼロ、つまり所得税も住民税もかかりません。25年なら800万円+70万円×5年で1,150万円が枠になります。
ひとつ例外があります。掛金を拠出した期間が5年以下の場合は短期退職手当等にあたり、受取額から退職所得控除額を引いた残額のうち300万円を超える部分は2分の1にできません。60歳前後で駆け込みで加入した方は、ここが効いてきます。
一時金を受け取るときは「退職所得の受給に関する申告書」を金融機関に提出してください。出し忘れると退職所得控除が反映されないまま源泉徴収され、取り戻すには確定申告が必要になります。
退職金と近い年に受け取ると、控除の枠を分け合う
ここが最大の落とし穴です。退職所得控除の枠は、会社の退職金とiDeCoでそれぞれ一人前もらえるわけではありません。受け取る年が近いと、期間の重なった分だけ枠が調整されます。ルールは受け取る順番で違います。
- iDeCoの一時金を先に受け取り、あとで退職金 → 退職金を受け取る年の前年以前9年内にiDeCoの一時金があると、調整の対象になります
- 退職金を先に受け取り、あとでiDeCoの一時金 → iDeCoの一時金を受け取る年の前年以前19年内に退職金があると、調整の対象になります
前者の「9年内」は新しい年数で、対象になるのは2026年1月1日以後に受け取ったiDeCoの一時金です。2025年12月31日までに受け取った一時金は、これまでどおり「前年以前4年内」で判定します。ですから、2026年以後に60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で退職金を受け取る方は、以前なら調整されなかった組み合わせでも調整の対象になります。すでに一時金を受け取り終えた方は、この9年内のルールはかかりません。ここを昔の情報のまま計画している方が、実務でもよくいらっしゃいます。
いっぽう後者の19年内は変わっていません。「退職金を先に受け取ってから、間をあけてiDeCo」という順番で枠を丸ごと使い切るのは、現実にはかなり難しいということです。
年金は公的年金等の雑所得。国民年金・厚生年金と枠を共有する
年金で受け取ると、公的年金等控除の対象になります。2026年8月時点では、公的年金等以外の所得が1,000万円以下の方の場合、65歳未満は収入130万円未満の範囲で60万円、65歳以上は収入330万円未満の範囲で110万円です。
注意したいのは、この枠を国民年金・厚生年金と合算して使うことです。65歳以上で公的年金が年150万円ある方がiDeCoを年80万円受け取ると、収入は合計230万円。控除110万円を引いた120万円が雑所得になります。iDeCoがなければ雑所得は40万円ですから、差は80万円まるごとです。所得が増えれば住民税にも影響します。医療と介護の保険料も所得をもとに決まるため、74歳までは国民健康保険料、75歳からは後期高齢者医療保険料、あわせて介護保険料が上がることがあります。会社の健康保険に入っている方や、その被扶養者の方は、国民健康保険料の対象外です。
年金で受け取ると、振込のたびに給付手数料がかかります。金額と回数は金融機関ごとに違うので、加入先の資料でご確認ください。
契約前・受け取り前に確認したい4つ
難しい話が続きましたが、確認することはそれほど多くありません。
確認したい4つ
- 会社の退職金の有無と見込額、そして受け取る年
- 自分の掛金拠出期間(=退職所得控除の年数になります)
- iDeCoを受け取り始める年齢と、退職金との間隔
- 65歳以降に受け取る公的年金の見込額
1と2がわかれば退職所得控除の枠に収まるかが見えますし、4がわかれば年金に回したときの負担が読めます。順番としては、まず退職所得控除の枠いっぱいまで一時金で受け取り、あふれた分を年金に回す、という併用が検討の出発点になります。
よくある質問
併用はどの金融機関でもできますか
取扱いは金融機関によって違います。一時金の割合を細かく指定できるところもあれば、選べる型が限られるところもあります。受け取り方の自由度は加入前に確認しておくと安心です。
退職所得控除の枠を超えた分は、そんなに損ですか
超えた部分は2分の1にしてから課税されるので、枠を1円超えたとたんに重くなるわけではありません。ただ、あふれる金額が大きいほど税率の高い層に届きやすくなります。だからこそ、あふれる分を年金に回して公的年金等控除も使う、という発想が出てきます。
おわりに
iDeCoは、契約するときに出口まで決めておける制度ではありません。それでも「会社の退職金がいくらで、いつ出るのか」を早いうちに把握しておくだけで、受け取り方の選択肢はぐっと整理できます。60歳の直前に慌てて考えるより、いまのうちに一度、退職金規程と年金の見込額を確認してみてください。それだけで十分な準備になります。
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※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。また、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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