こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「月々1万4千円って言われて契約したんですけど、これ全部でいくら払うんでしょうか」
答えは、契約書の「支払総額」の欄を見れば書いてあります。そして月額表示だけで判断すると、たいてい思っていたより多く払います。美容医療の分割払いや医療ローンで確認する数字は3つだけ。実質年率・支払回数・支払総額です。この3つを見ないまま署名するのが、いちばんもったいない。
「月々◯円」は、いちばん安く見える書き方
広告やカウンセリングで出てくる「月々◯円」は、回数を増やせばいくらでも小さくできます。数字で見たほうが早いので、一例を出します。施術代30万円を分割で払うとして、実質年率12%・元利均等返済で計算した場合です。
- 24回払い:月々およそ1万4,100円、支払総額はおよそ33万9千円(利息の負担はおよそ3万9千円)
- 36回払い:月々およそ9,960円、支払総額はおよそ35万9千円(利息の負担はおよそ5万9千円)
36回にすると月々は4千円ほど軽くなります。でも総額は2万円増えます。月額が下がったぶん、期間が伸びて利息が乗るからです。あくまで一例で、実際の数字は契約する条件によって変わりますが、「月々が安いほうがお得」は成り立たないということだけは、どの条件でも同じです。
契約前に確認する3つの数字
実務でいちばん質問が多いのが、まさにこの「結局いくら払ったのか」というところです。明細を見せていただくと、ご本人も総額をご存じないことがあります。順番に見てください。
署名する前に見る3つ
- 実質年率(手数料率)。年何パーセントか。「手数料5%」と書いてあっても、それが年率なのか総額に対する割合なのかで意味がまるで違います
- 支払回数と初回・最終回の額。ボーナス月の増額が入っていないかも確認します
- 支払総額。施術代といくら差があるか。この差額が、分割で払うために追加で負担する金額です
3つめの差額を見て「この金額を払ってでも今受けたい」と思えるなら、それは納得した契約です。逆に差額を見て驚くようなら、回数を減らすか、貯めてから受けるかを考える余地があります。
無金利キャンペーンには、たいてい条件がつく
「分割手数料0円」は、うそではありません。手数料をクリニック側が負担する形で、本当に総額が施術代と同じになることがあります。30万円を無金利24回で払えば、月々1万2,500円で総額30万円。さきほどの例と比べて3万9千円の差です。
ただし条件がついているのが普通です。よくあるのは、回数の上限(少ない回数までしか無金利にならない)、対象になる施術やコースが限られること、一定金額以上の契約であること、期間限定であること。「無金利は何回までですか」と口に出して聞くのがいちばん確実です。上限を超えた回数を選んだ瞬間に通常の手数料率へ戻る設計になっていることがあります。
カードのリボ払いは、分割払いとは別物です。リボは残高に対して年率が計算され、毎月の返済額を小さく固定すると期間がどんどん伸びます。一例として30万円を年率15%・毎月1万円の元利定額で返すと、完済までおよそ38回、支払総額はおよそ37万8千円。安心感のある「毎月1万円」が、いちばん高くつく形になることがあります。
途中でやめたいとき、早く返したいとき
覚えておいてほしいのは、施術の契約と、ローンの契約は別の相手との約束だということです。クリニックに「やめます」と伝えただけでは、信販会社への支払いは止まりません。信販会社にも、必ず書面で伝えてください。書面を受け取ってから8日以内であれば、信販会社にクーリング・オフの書面を出すことで、施術の契約も解除されたものとみなされ、すでに払ったお金も返ってきます(割賦販売法第35条の3の11)。8日を過ぎたあとでも、クリニックが閉院した、約束された施術を受けられないといった事情があるときは、割賦販売法の「支払停止の抗弁」によって信販会社への支払いを止められる場合があります。この抗弁についての説明は、契約書面に必ず記載されています。判断に迷ったら、消費者ホットライン188に相談してください。
なお、脱毛やしみ・しわの治療など一定の美容医療は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたります。期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約であることなどが条件で、書面を受け取ってから8日間のクーリング・オフや、その後の中途解約ができます。分割払いの契約もこれに連動します。中途解約のときにクリニックが請求できる金額には、法律で上限があります。美容医療の場合、施術が始まる前なら2万円まで、始まったあとなら「すでに提供された施術の対価+5万円または契約残額の20パーセントのいずれか低い額」までです(特定商取引法第49条、同法施行令別表第四)。契約書に書かれた解約料がこれを超えているなら、その部分は払う必要がありません。契約書と概要書面は必ず残しておいてください。
まとめて先に返す繰上返済は、多くの契約でできます。残りの期間に対応する手数料が軽くなることがある一方、精算方法や手数料の扱いは契約ごとに違います。契約書の繰上返済・一括返済の条項を読んで、わからなければ信販会社に残りいくらで完済できるかを直接聞くのが早いです。
医療費控除は期待しないでください
ここは誤解がとても多いところです。美容目的の施術は、原則として医療費控除の対象になりません。見た目を美しくするための費用は、治療にあたらないからです。医師が治療として必要と判断して行うものは対象になり得ますが、それは施術の目的で決まる話で、名前だけで線引きはできません。
そのうえで、仮に対象になる治療をローンで払った場合の考え方だけお伝えします。信販会社が医療機関に立替払いをした年が、あなたが医療費を支払った年になります。自分が信販会社に返済していく年ごとに分けるのではありません。そしてローンの金利や手数料は医療費ではないので、控除の対象から外れます。「3年かけて返すから3年間控除できる」と思っていた、という方が毎年いらっしゃいます。
よくある質問
実質年率が契約書に見つかりません。手数料の総額と回数しか書かれていないこともあります。その場合でも支払総額は必ず記載されています。総額と施術代の差額を出せば、負担額そのものは把握できます。
カウンセリングの場で決めないといけない雰囲気です。その日に決めなくて大丈夫です。見積書と契約書の写しをもらって持ち帰り、支払総額を確認してから返事をしてください。まともなところは、それを嫌がりません。
おわりに
分割払いそのものが悪いわけではありません。今の自分に必要だと思える施術を、無理なく受けるための手段です。ただ、月額だけを見て決めると、あとから総額を知って後悔することになります。実質年率・回数・支払総額。この3つを見て、差額に納得できたなら、それはあなたが選んだ支出です。堂々と受けてきてください。
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※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。対象になるかどうかは施術の目的や医師の判断によって個別に異なります。

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