こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「保険会社から届いた控除証明書に『旧長期』と書いてあります。これは何ですか?」
旧長期損害保険料とは、平成18年12月31日までに結んだ、満期返戻金のある保険期間10年以上の損害保険の保険料のことです。損害保険料控除は平成19年分から廃止されましたが、この契約の保険料だけは経過措置として、いまも地震保険料控除の対象にできます。所得税の控除額は最高1万5,000円で、地震保険料と合わせて最高5万円です。
地震保険料控除の全体像は地震保険料控除は火災保険料には使えません|上限5万円と旧長期損害保険の経過措置にまとめました。ここでは旧長期損害保険料そのものを、見分け方・計算・申告書の書き方の順に見ていきます。
対象になるのは3つの条件を全部満たす契約だけ
国税庁のタックスアンサー No.1145 が挙げる条件は次の3つです。どれか1つでも欠けると対象になりません。
旧長期損害保険料の3つの条件
- 平成18年12月31日までに締結した契約であること(保険期間・共済期間の始まりが平成19年1月1日以後のものは除く)
- 満期返戻金等のある契約で、保険期間・共済期間が10年以上であること
- 平成19年1月1日以後に、その契約の変更をしていないこと
典型的なのは、満期に返戻金が戻る積立型の長期火災保険です。国税庁の質疑応答事例は、建物や動産の共済期間中の耐存を共済事故とする共済(満期共済金のある建物の共済など)も対象に挙げています。掛け捨ての火災保険は、契約が古くても対象外です。
いちばん見落とされやすいのが3つめの条件です。損害保険会社の案内では「保険料の変更を伴う契約変更」と説明されることが多く、平成19年以後に補償内容や保険金額を見直して保険料が変わった契約は、対象から外れている場合があります。
見分け方は、控除証明書の区分表示
3つの条件を自分で調べる必要はありません。保険会社が発行する控除証明書に、「旧長期損害保険料」「旧長期」といった区分で金額が書かれていれば、その金額が経過措置の対象です(表示のしかたは保険会社によって違います)。地震保険料とだけ書かれていれば、旧長期ではありません。
国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」は、地震保険料控除について保険料の金額の多少に関係なく証明書類が必要としています。旧長期損害保険料も同じなので、少額でも証明書は捨てずに取っておいてください。
所得税の控除額の計算
その年に支払った旧長期損害保険料の合計額に応じて、控除額は次のとおりです(国税庁 No.1145)。
旧長期損害保険料の控除額(所得税)
- 10,000円以下 … 支払金額の全額
- 10,000円超20,000円以下 … 支払金額×1/2+5,000円
- 20,000円超 … 一律15,000円
たとえば年間の旧長期損害保険料が8,000円なら控除額は8,000円、14,800円なら14,800円×1/2+5,000円で12,400円です。計算で1円未満の端数が出たときは切り上げます。
地震保険料もあるときは「合計5万円」と「1契約は選択」
別々の契約で地震保険料と旧長期損害保険料の両方を払っている場合は、それぞれで計算した金額を合計します。上限は5万円です。地震保険料の控除額は、支払額の全額(最高5万円)です。
注意したいのは、1つの契約で地震保険料と旧長期損害保険料の両方を払っている場合です。このときは足し算できず、どちらか一方を選んで控除を受けます。国税庁の質疑応答事例では、1つの契約で地震保険料10,000円と旧長期損害保険料17,000円を払っている方の控除額を13,500円(17,000円×1/2+5,000円)としています。地震保険料で受けると10,000円なので、旧長期で受けるほうが有利というわけです。どちらが得かは契約ごとに計算して比べてください。
住民税の控除額は別の計算になる
住民税にも同じ経過措置がありますが、数字は所得税と違います。根拠は地方税法等の一部を改正する法律(平成18年法律第7号)の附則です。
旧長期損害保険料の控除額(住民税)
- 5,000円以下 … 支払金額の全額
- 5,000円超15,000円以下 … 5,000円+(支払金額−5,000円)×1/2
- 15,000円超 … 一律10,000円
住民税の地震保険料の控除額は支払額の2分の1(最高2万5,000円)で、旧長期と合わせた上限も2万5,000円です。住民税の計算は、年末調整や確定申告の内容をもとに市区町村が行うので、自分で申告し直す必要は通常ありません。
年末調整の保険料控除申告書の書き方
「給与所得者の保険料控除申告書」の地震保険料控除の欄に、保険会社名、保険の種類、保険期間、契約者の氏名などを証明書から写します。そのうえで「地震保険料又は旧長期損害保険料区分」欄の「地震」か「旧長期」のどちらか一方を○で囲みます。1つの契約で両方の金額が証明されている場合は、選んだほうの金額だけを書きます。
申告書の下の計算欄では、地震保険料の合計と旧長期損害保険料の合計を分けて計算し、旧長期は最高15,000円、合計は最高50,000円に収めます。ほかの控除の書き漏れも気になる方は、年末調整で見落としがちな控除5つもあわせてどうぞ。
よくある質問
今年から証明書に「旧長期」の表示がなくなりました。なぜですか?
満期を迎えて保険料の支払いがなくなったか、平成19年以後の契約変更で条件から外れた可能性があります。契約を見直した覚えがある方は、保険会社に区分が変わった理由を確かめてください。
年末調整で書き忘れました。もう間に合いませんか?
確定申告で控除を受けられます。確定申告の必要がない会社員の方の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます(国税庁 No.2030)。すでに確定申告をした方は更正の請求になります。違いは修正申告と更正の請求の違いにまとめています。
おわりに
旧長期損害保険料は、平成18年以前の契約が続いている方だけに残る、少し珍しい控除です。控除額は大きくありませんが、証明書に「旧長期」の文字があれば受けられるものです。毎年よく聞かれる項目なので、秋に届いた証明書の区分を一度だけ見てみてください。
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※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度(令和8年分の所得税)にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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