国民年金の免除が通らなかったら|世帯主の所得で落ちた人が次に出せる申請

執筆者:

カテゴリ:

こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「収入がほとんどないのに、国民年金の免除の申請が却下されました。何かの間違いでしょうか」

間違いではないことが多いです。国民年金の保険料免除は、申請するご本人の所得だけを見る制度ではありません。配偶者や世帯主がいる方は、その方の前年所得もあわせて審査されます(最大で本人・配偶者・世帯主の3人ぶん)。ご自身の所得がゼロでも、同じ世帯の世帯主に一定の所得があれば却下されます。配偶者は、別世帯であっても審査の対象です。ただし配偶者からの暴力で住居が異なる方には、配偶者の所得を見ないDVの特例免除があります(学生納付特例が使える学生の方は除きます。この特例でも、世帯主(父母等の第三者)は所得審査の対象となる場合があります)。そして、そこで打ち止めではありません。世帯主の所得を見ない申請が、まだ残っています。

通らない理由は、たいてい「自分以外の所得」

日本年金機構も「ご本人の所得が少ない場合でも免除等が承認されない場合があります」と書いています。承認の基準になる前年所得の額は、次の式です(2026年9月時点)。

  • 全額免除…(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
  • 4分の3免除…88万円/半額免除…128万円/4分の1免除…168万円(いずれも+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等)
  • 地方税法に定める障害者・寡婦・ひとり親に当たる方は、基準額が変わります

所得で審査される場合は、この所得基準をご本人・配偶者・世帯主のそれぞれが満たす必要があります(天災など、所得以外の事由で認められる場合もあります)。実家で親と同じ世帯の方、配偶者に給与収入がある方が落ちる典型がこれです。

きいちゃんメモ

免除の「年度」は7月から翌年6月まで。令和8年度分(令和8年7月〜令和9年6月)は令和7年中の所得で審査されます。「今年になって収入が減ったのに」という違和感は、見られているのが前年の所得だからです。

次の一手① 納付猶予は、世帯主の所得を見ない

20歳以上50歳未満の方には、免除とは別に「納付猶予」があります。なお学生納付特例の対象校に在学中の方は、免除も猶予も対象外で、次の学生納付特例のほうを使います。納付猶予の審査対象は、ご本人と配偶者だけです。世帯主の所得審査はありません。基準額は全額免除と同じなので、世帯主の所得で免除が落ちた方でも猶予は承認されることがあります。ここが最初に出すべき申請です。

注意は2つ。50歳になったあとの月分には使えないこと(すでに50歳を過ぎた方でも、50歳になる前の月分なら、あとで説明する2年1か月前までの範囲でさかのぼって申請できます)。そして猶予の期間は老齢基礎年金の受給資格期間には入るものの、年金額には反映されないことです。全額免除なら保険料を全額納めた場合の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)が年金額に反映されますが、猶予はゼロ。この違いは国民年金の免除と猶予、どちらを選ぶ?将来の年金額で変わる判断で表にしています。

次の一手② 学生なら、学生納付特例

在学中の方は、学生納付特例なら配偶者と世帯主のどちらの所得も見ません。審査されるのは申請者本人の前年所得だけで、基準は「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」です。なお学生納付特例の年度は4月から翌年3月までで、免除・猶予の7月から翌年6月までとは区切りが違います。夜間・定時制や通信課程を含め、ほとんどの学生が対象です。年金額に反映されないのは猶予と同じです。

次の一手③ 失業したなら、失業等による特例免除

失業・倒産・事業の廃止などがあったときは、その事実が確認できれば、失業等をした方の前年所得にかかわらず免除・猶予を受けられる失業等による特例免除があります。書類は、雇用保険の被保険者だった方なら雇用保険被保険者離職票や雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知のコピー。廃業・休業の届出をしている方は総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写しと、その申請時の添付書類の写しで、これが用意できないときは個人事業の開廃業等届出書の写しなどでも確認できますが、別途「失業の状態にあること」の申し立てを書式で行います。免除が受けられるのは、災害や失業等のあった月の前月からです。

ここに大事な限定があります。機構は「世帯主や配偶者が所得要件を満たしているか、失業等の特例に該当している必要があります」としています。つまり世帯主の所得が理由で落ちた方は、自分が失業しただけでは届きません。その場合に残るのは、世帯主を審査しない納付猶予のほうです。

却下の通知が届いたあとにできること

処分そのものに納得できないときは、審査請求という手続があります。保険料に関する処分は、それを知った日の翌日から起算して3か月以内に、地方厚生(支)局内に置かれた社会保険審査官へ審査請求ができます。正当な事由でこの3か月以内にできなかったことを疎明したときは、この限りではありません。その決定にも不服があれば、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に社会保険審査会へ再審査請求ができます。郵送で出した場合、送付にかかった日数はどちらの期間にも数えません(疎明の取扱いも同じです)。

ただ、もう一度申請するほうが早い場合もあります。機構は、却下となった期間でも次のようなときは申請できる場合があると案内しています。

  • 失業等の事由で申請したが、申請が遅れたために失業等による特例免除が認められなかった場合
  • 却下のあとに、税の修正申告(または申告)で本人・配偶者・世帯主の所得が変わった、または確定した場合
  • 却下のあとに、離婚や世帯主の変更があった場合

さかのぼって申請できるのは、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)です。なお、免除が通らなかった月の保険料そのものも、納付期限から2年以内であれば納付書で納められます。期限は月ごとに切れていきます。

通らなくても、未納のままにしないでください

いちばん伝えたいのはここです。障害基礎年金・遺族基礎年金には保険料の納付要件があります(遺族基礎年金は被保険者中の死亡などに限ってかかります)。原則は、障害なら初診日の前日、死亡なら死亡日の前日において、初診日または死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。これを満たさなくても、初診日または死亡日が令和18年3月末日までで、そのとき65歳未満であれば、初診日または死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がなければよいという特例があります。免除と猶予の期間はどちらにも算入されますが(一部免除は減額された残りの保険料を納めていることが条件)、未納はどちらにも算入されません。事故や病気が起きてからさかのぼって申請しても、この納付要件には入りません。

老齢基礎年金そのものも、保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間などを合わせて10年以上ないと受け取れません。ここでいう保険料免除期間は、一部免除の場合は減額された残りの保険料を納めていて初めて成立します。猶予や学生納付特例はこの10年に入りますが、未納は入りません。しかも、あとから納めて年金額に反映させられる(追納できる)のは、免除・猶予・学生納付特例の承認を受けた期間だけで、未納の期間は追納の対象になりません。一部免除の期間も、減額された残りの保険料を納めていなければ追納できません(免除・猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納するときは、当時の保険料額に加算額が上乗せされます)。なお追納できるのは、追納の申し込みが承認された月の前10年以内の免除等期間で、さきほどの受給資格期間の10年とは別の話です。詳しくは国民年金の追納は10年以内|猶予と学生納付特例は、納めないと年金額が増えませんにまとめています。

世帯を分ければ免除が通りますか

さきほどの「離婚や世帯主の変更があった場合」は、生活の実態が変わった結果として世帯が変わった場合の話です。免除のために住民票を動かす手続をすすめるものではありません。

半額免除は承認されたのに、残りの半分も払えません

一部免除でいちばん怖い落とし穴です。4分の3免除・半額免除・4分の1免除は、減額された残りの保険料を納めていないと未納として扱われ、年金額にも受給資格期間にも入りません。半額免除で納める額は令和8年度なら月8,960円です。払える見込みが立たないなら、そのままにせず窓口で相談してください。

FPカフェ(無料のお金・保険相談)

免除が通らなかったときこそ、年金保険料を含めた家計全体をいちど見直す時期です。保険や固定費に先に手を付けられる場所が見つかることは多いです。無料で相談できる窓口の一つとして挙げますが、対象年齢や申込条件、相談後に保険の提案があるかどうかは公式サイトで先に確認してください。

おわりに

免除の却下通知は、「あなたには払う力がある」と言われているように読めてしまいます。でも見られているのはあなた1人の所得だけではありません。配偶者や世帯主がいれば、その方の前年所得もあわせて審査されます。次に出せる申請はまだ残っています。通知を引き出しに入れてしまう前に、年金事務所で「ほかに出せる申請はありますか」と聞いてみてください。

Xでも、暮らしとお金の話をつぶやいています。よかったら @tax_kiichan をのぞいてみてください。

※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の判断は、年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口にご相談ください。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です