小規模企業共済の掛金は全額所得控除。経費ではないので書く場所が違います

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「小規模企業共済の掛金って、経費で落ちるんですよね?」

答えは「いいえ」です。小規模企業共済の掛金は経費ではなく所得控除で、帳簿の経費には入りません。控除の正式な名前は「小規模企業共済等掛金控除」。控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です(国税庁 No.1135)。掛金は月1,000円から7万円までを500円単位で決められるので、上限まで払えば年84万円が所得から引けます。

「全額所得控除」という言葉だけが独り歩きして、経費に入れてしまう方が毎年いらっしゃいます。

経費と所得控除は、引く「段階」が違う

経費は、売上から引いて事業所得を計算する段階で使うもの。所得控除は、事業所得が出たあとの段階で引くものです。中小機構の「制度のしおり」(令和8年6月改訂版)にも、掛金は事業上の損金または必要経費には算入できないと書かれています。事業用の口座から引き落とされていても、帳簿では「事業主貸」で処理します。

税金が軽くなる効果はありますが、事業所得の金額そのものは変わりません。青色申告特別控除の額や、消費税の課税事業者かどうかの判定には影響しません。線引きが気になる方はフリーランスが経費にできるもの一覧と家事按分の考え方もどうぞ。

きいちゃんメモ

小規模企業共済等掛金控除は、その年の所得から引ききれなかった分を翌年に繰り越せません。赤字の年に無理をして増額しても、その分の控除は消えてしまいます。

控除の名前は「小規模企業共済等掛金控除」。iDeCoと同じ欄

この控除の対象は、小規模企業共済の掛金のほか、iDeCoなどの確定拠出年金の加入者掛金と、地方公共団体の心身障害者扶養共済制度の掛金です(国税庁 No.1135。旧第二種共済契約だけは生命保険料控除になります)。両方やっている方は、第一表では合算し、第二表では種類ごとに分けて書きます。

社会保険料控除との違いをひとつ。国税庁の申告書の手引きは、配偶者その他の親族が加入者となっている掛金は、あなたの控除の対象にならないと明記しています。生計を一にする家族の国民年金保険料なら自分の社会保険料控除にできますが、小規模企業共済はそうはいきません。

中小機構の試算表では、課税される所得金額が400万円の方が掛金月額7万円(年84万円)を払うと、所得税と住民税を合わせて241,300円の節税になる、とされています(所得税はその年分、住民税は翌年度に効きます)。

きいちゃんメモ

この表の「課税される所得金額」は、売上から経費を引いた額ではなく、基礎控除や社会保険料控除まで引いたあとの額です。税額は令和6年10月現在の税率にもとづき、所得税は復興特別所得税を含めて計算されています(中小機構「制度のしおり」令和8年6月改訂版)。

11月ごろ(一部は翌年2月)届く「掛金控除証明書」の見方

控除を受けるには、中小機構から届く「小規模企業共済掛金控除証明書」が要ります。圧着ハガキなので、ダイレクトメールと一緒に捨てないでください(なくしても再発行できます)。

届く時期は納付状況で2つに分かれます。令和7年分では、9月までに払込みのある方には11月12日〜21日に発送。1月〜9月に払込みがなく、かつ前年12月以前に1月〜9月分を前納していない方で、10月〜12月にだけ納めた方には、翌年2月6日に発送されました。令和8年分の日程は中小機構のお知らせで案内されます。

11月に届くハガキには、掛金月額、1月〜9月の「お払込み済額」、10月〜12月の「お払込み予定額」、前納減額金のお支払額、そこから算出された「控除額」が載っています。10月から12月はあくまで「予定額」だという点が大事なところ。中小機構も、一括納付や月額変更等を申請した場合は年間の「控除額」を記載できないことがある、としています。その場合は年内に払い込んだ総額を自分で計算し、前納減額金を受け取っていればその額を差し引いて申告します。実務でいちばん質問が多いのが、この「ハガキの数字と実際に払った額が合わない」場面です。

確定申告書のどこに書くか

  1. 第一表…「所得から差し引かれる金額」の中の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、支払掛金の合計額
  2. 第二表…同じ名前の欄の「保険料等の種類」に掛金の種類、「支払保険料等の計」に種類ごとの支払掛金の金額。「うち年末調整等以外」の欄には、そのうち給与所得の源泉徴収票に記載されていない金額を書きます(源泉徴収票がない方は全額がこれに当たります)

そのうえで、控除証明書を申告書に添付するか、提出時に提示します。e-Taxで送信する場合は、証明書の記載内容を入力して送信することで、添付・提示を省略できます(原則として法定申告期限から5年間、提示や提出を求められることがあるので、証明書は捨てずに保管してください)。なお、令和8年分以後の所得税に係る確定申告書を令和9年1月1日以後に提出するときは、証明書の添付・提示に代えて、一定の事項の記載がある明細書を添付することもできます(国税庁 No.1135)。

年内に増額したとき、前納したとき

掛金月額は1,000円から7万円の範囲で、500円単位の増減ができます。増額した分も、その年に実際に払い込んでいれば、その年の控除になります。

前納もできます。中小機構は1年以内の前納掛金も同様に控除できるとしています。所得税基本通達74・75-2も、前納の期間が1年以内のものについて、その全額をその年に支払った金額として申告書に記載した場合はそれで差し支えない、としています。ただし年末に間に合わせたいなら、まとめて払う手続(一括納付)の締切に注意してください。中小機構は、締切日を希望月の前月20日(12月は15日、土日祝日の場合は前営業日)としていて、締切を過ぎるとその月には一括納付できません。

ただし、この前納の特例には条件が2つあります。ひとつは年内に現実に払い込んでいること。所得税基本通達74・75-1は、納付期日が到来していても現実に支払っていないものは含まれない、としています。もうひとつは申告書でその年の分として書くこと。この前納の特例を適用せずに確定申告書を提出した場合は、その後に更正の請求をするときにも適用できない、と通達が念を押しています。

きいちゃんメモ

前納すると前納月数に応じた「前納減額金」を受け取れます。中小機構は、その支払いを受けた場合は、所得控除として申告する掛金額から受取額を差し引く必要がある、としています。

なお、掛金は払った年に所得控除で軽くして、受け取るときに課税される設計です。共済金を一括で受け取れば退職所得(死亡によるものは死亡退職金として相続税の対象)、分割なら公的年金等の雑所得。準共済金や、法人成りに伴うみなし解約による手当金も退職所得です。これに対して自分の都合でやめる任意解約の解約手当金は一時所得(65歳以上での任意解約は退職所得)で、しかも一時所得の計算では払った掛金を差し引けません。受け取り方と元本割れの条件は小規模企業共済は掛金が全額所得控除。ただし20年未満の任意解約は元本割れしますにまとめています。

やよいの青色申告 オンライン

掛金は、確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に入れて初めて効いてきます。会計ソフトからは、控除証明書の金額をどこに転記するかが分かりやすいか、青色申告決算書の作成からe-Tax送信までひと続きで進められるかを、公式サイトで確認してください。

おわりに

「経費じゃないなら意味がない」と言われることがありますが、そんなことはありません。引く段階が違うだけで、税金が軽くなる効果はあります。帳簿の経費に入れないことと、証明書の「予定額」を鵜呑みにせず実際に払い込んだ額で計算し直すこと。この2つを押さえておけば迷いません。

秋は増額や前納を考えるのにいい時期。無理のない範囲で、来年の自分に送っておきましょう。

日々の税金の話は、X(@tax_kiichan)でも短く書いています。

※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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