国民年金の追納は10年以内|猶予と学生納付特例は、納めないと年金額が増えません

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「学生のころに猶予してもらった年金、いまから払ったほうがいいですか?」

秋になると増える質問です。答えは「猶予と学生納付特例なら、払う値打ちがあります」。この2つは、年金を受け取るために必要な期間(受給資格期間)には入りますが、年金額に反映されません。いっぽう全額免除の期間は、追納しなくても全額納付した場合の2分の1が年金額に入っています。1年分の追納で増える老齢基礎年金は、機構の説明で全額免除なら年におよそ1万円、猶予や学生納付特例なら年におよそ2万円。同じお金を払っても効き目が2倍違います。ただし追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内。ここに期限があります。

まず「免除」か「猶予」かを確かめる

免除と猶予は名前が似ていますが、年金額への反映が違います。令和8年度の老齢基礎年金の満額(昭和31年4月2日以後生まれ)は年847,300円。40年すべてが全額免除だと423,650円(国庫負担2分の1で算出した場合)です。

期間の種類受給資格期間年金額への反映(追納しない場合)
全額免除入る全額納付した場合の2分の1
4分の3免除(※)入る8分の5
半額免除(※)入る8分の6
4分の1免除(※)入る8分の7
納付猶予・学生納付特例入るなし
未納入らないなし

※の一部免除は、減額された保険料の納付が前提です。

なお、平成21年3月分までの期間は割合が違い、全額免除は3分の1です。

落とし穴は一部免除です。4分の3免除なら令和8年度で月4,480円、半額免除なら8,960円、4分の1免除なら13,440円を、自分で納める必要があります。この減額された保険料を納めていないと、その期間は年金額にも受給資格期間にも入りません。未納と同じ扱いになり、追納もできません。老齢基礎年金は受給資格期間10年が条件なので、受け取り自体に響きます。「申請が通ったから安心」で止まる方が、実務でときどきいらっしゃいます。

自分の期間がどれかは、ねんきん定期便や年金事務所で確認できます。これから申請する方は免除と猶予、どちらを選ぶかのほうが先です。

10年以内、そして翌年度から3年度目で保険料が上がる

追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間だけです。10年は月単位なので、いちばん古い月から順に期限が切れていきます。

もう一つが金額です。免除・納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料額に、経過期間に応じた加算額が上乗せされます。言いかえると、免除等を受けた年度の2年度あとまでに納めれば、当時の保険料のままです。

免除等を受けた年度当時の保険料(月額)令和8年度中に追納する額(月額)
平成28年度16,260円16,850円
平成30年度16,340円16,900円
令和元年度16,410円16,950円
令和5年度16,520円16,770円
令和6年度16,980円16,980円(加算なし)
令和7年度17,510円17,510円(加算なし)

表は全額免除・納付猶予・学生納付特例の額です。一部免除は割合に応じた額になります。平成30年度の1年分は、当時の196,080円が202,800円。6,720円の差です。それでも、待つあいだに追納の期限が来るほうが痛い。納める順序は原則として古い期間からなので、迷ったら古いほうから。

きいちゃんメモ

免除の期間と、納付猶予・学生納付特例の期間の両方がある方は、納める順序を年金事務所に相談するよう機構が案内しています。電話一本の値打ちがあります。

追納した分は、その年の社会保険料控除になります

ここが税理士としてお伝えしたいところ。社会保険料控除は、その年に実際に支払った金額の全額が対象です。追納も、納めた年の所得から引けます。

大学時代の平成30年度・令和元年度の2年分(24か月)を、いま申し込んで令和8年中にまとめて追納すると、406,200円。所得税率10%・住民税10%の方なら、令和8年分の所得税と翌年度の住民税で、合わせておよそ81,000円軽くなります(復興特別所得税は考えていません)。

注意が2つ。1つめは、所得が少ない年に払っても、控除しきれない分は捨ててしまうこと。社会保険料控除は翌年に繰り越せません。働きはじめた年や育休中にまとめて払うのは、税の面ではもったいない。

2つめは控除証明書の届く時期。1月から9月に納付があれば10月下旬から11月上旬に届きます。翌年2月に届くのは、1月から9月の納付がなく10月以降に納付があった方だけです。ただし10月以降に追納した分は、10月の証明書に載らないことがあります。10月の証明書に載る10月から12月分は見込額で、作成した時点の納付方法で見込まれる額だからです。年末調整に間に合わないときは確定申告で受けてください。

なお、生計を一にする配偶者や親族が負担すべき社会保険料を払った場合は、払った人の控除です。お子さんの学生納付特例分を親御さんが追納するなら、親御さんの所得から引けます。

手続きは年金事務所へ。支払いは納付書だけ

  • 「国民年金保険料 追納申込書」を年金事務所へ提出します(街角の年金相談センターは不可)。郵送も可
  • ねんきんネットでも申込書を作れますが、電子申請ではないので印刷して提出します
  • 申し込みが承認されると納付書が届きます。金融機関・郵便局・コンビニ・電子納付(ペイジー)・スマホアプリで納付できます
  • 口座振替とクレジットカードは使えません
  • 老齢基礎年金を受け取ることができる方は追納できません

申込書を期限の直前に出すと納付が間に合わないことがあります。思い立った月に出すのが確実です。

一部の期間だけでも追納できますか

できます。免除や猶予された保険料の全部または一部を納める制度なので、「まず1年分だけ」でもかまいません。

10年を過ぎてしまった期間はどうなりますか

追納はできません。ほかに納付済期間を増やす方法があるかは加入歴で変わるので、年金事務所で確認してください。

FPカフェ(無料のお金・保険相談)

追納するかどうかは、将来の年金額だけでなく、いまの家計と他の備え(iDeCoや貯蓄)との兼ね合いで決まります。自分で全体を並べるのが難しい方は、無料で相談できる窓口もあります。対象年齢や申込条件、相談後に保険の提案があるかどうかは、公式サイトで先に確認してください。

おわりに

免除や猶予を使ったことを、うしろめたく感じている方にときどきお会いします。でもあれは、納められない時期に未納にしないための正しい手続きです。余裕ができたら、期限があるうちに少しずつ。まずは自分の期間が免除なのか猶予なのか、確かめるだけで十分です。

X(@tax_kiichan)でも、年金や税金の細かいところを短く書いています。

※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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