こんにちは、税理士のきいちゃんです。
「単価っていくらにすればいいんでしょうか。周りに聞けなくて、なんとなくで決めています」
独立して1年目、2年目の方が迷いやすい質問です。相場を調べても幅があり、自分に当てはめにくいですよね。
答えは、相場からではなく、「1年で必要な売上」を請求できる時間で割ることです。①必要な売上、②請求できる時間、③時間単価、④案件単価の順に決めます。
会社員の30万円と、フリーランスの30万円は別物
会社員の健康保険料と厚生年金保険料は、原則として会社と本人が半分ずつ負担します。フリーランスには会社負担がありません。所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金保険料を自分で管理し、業種によっては個人事業税もかかります。インボイス登録を受けた場合や、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超える場合などは、消費税の申告も必要です。
月30万円でも残る額が違う理由は、業務委託と会社員、同じ月30万円でも手取りが違う理由で分解しています。
4ステップで必要な単価を計算する
手順1 1年で必要な売上を出す
「手取りで年360万円(月30万円)ほしい」という例です。2026年分、40歳未満・独身・青色申告65万円控除・インボイス未登録の免税事業者・個人事業税のかからない業種とします。比較用として、年金は令和8年度月額の12か月分、国保は年40万円と仮定します。住民税と国保は前年所得をもとに決まるため、同程度の所得が続く平常時の予算として見てください。
- 売上 530万円
- 経費 60万円
- 国民年金保険料 21万5,040円と仮定(令和8年度の月17,920円×12か月)
- 国民健康保険料 40万円と仮定
- 所得税・復興特別所得税 約14万5,000円/住民税 約30万円
- 手元に残る額 約364万円
所得税の計算は、売上530万円-経費60万円-青色申告特別控除65万円=事業所得405万円。そこから社会保険料61万5,040円と基礎控除104万円を引き、1,000円未満を切り捨てると、課税所得は239万4,000円です。税率10%・控除額9万7,500円で14万1,900円、復興特別所得税を含めて約14万5,000円になります。
青色申告65万円控除には、55万円控除の要件(複式簿記、貸借対照表・損益計算書等の添付、期限内申告)に加え、確定申告書等を期限内にe-Taxで送信するか、仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存し、必要な届出をする必要があります。該当しなければ55万円または10万円です。
所得税の基礎控除104万円は、合計所得489万円以下の方に適用される令和8年分・令和9年分の特例です。住民税の基礎控除は最高43万円のままなので、104万円で住民税を計算しないでください。住民税額は標準税率による概算で、自治体の条例や税額控除により変わります。
この前提では、手取り360万円を残すための売上は約530万円です。青色申告特別控除は税金の計算上の控除で、現金支出ではありません。
手順2 請求できる時間を数える
週5日・1日8時間・年48週なら年間1,920時間。ただし、営業、見積り、請求、経理、情報収集の時間は通常、顧客へ請求できません。この記事では請求できる時間を6割と仮定し、約1,150時間で計算します。割合は1か月だけでも記録し、自分の実績に置き換えてください。
手順3・4 時間単価を案件単価に直す
530万円÷1,150時間=1時間あたり約4,610円です。実作業8時間、修正2時間、打ち合わせ2時間なら合計12時間なので、4,610円×12時間=約55,300円。修正と打ち合わせを見積りから落とさないことが大切です。
「修正は何回まで」「どこまでが納品範囲か」も金額と一緒に示します。手取り目標を変えると税率や基礎控除も変わるため、売上だけを比例計算せず、手順1から計算し直してください。
源泉徴収の10.21%は値引きではない
原稿料・講演料・一定のデザイン報酬などは、支払者が源泉徴収義務者であれば、所得税等を差し引いて振り込みます。法人は原則として該当しますが、給与を支払っていない個人などは該当しません。
税率は、1回の支払額のうち100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。5万円なら5,105円が差し引かれ、振込額は44,895円。これは税金の前払いで、報酬の値引きではありません。確定申告で年間の税額と精算するため、源泉徴収分を理由に単価を上乗せする必要はありません。
免税事業者の消費税相当額は、見積りで明示する
税抜4万円で合意した仕事なら、消費税相当額4,000円を加え、4万4,000円とする契約は可能です。免税事業者でも相当額を価格に上乗せできます。ただし、登録番号は書けず、適格請求書と誤認される表示もできません。見積書と請求書では「消費税相当額」と明示するのが無難です。
報酬4万円と消費税相当額4,000円を明確に分ければ、支払者は報酬4万円だけを源泉徴収の対象として差し支えありません。区分がなければ4万4,000円が原則の対象です。10.21%なら、それぞれ4,084円と4,492円になります。
取引先が原則課税で仕入税額控除をする場合、未登録事業者からの課税仕入れについて控除できる割合は、2026年9月30日まで80%、同年10月1日から2028年9月30日まで70%です。登録後の請求書は、インボイス登録後、請求書はどこを変える?で確認できます。
やよいの青色申告 オンライン
決めた単価で実際にいくら手元に残ったかは、帳簿をつけてはじめて分かります。売上と経費を毎月まとめて確認できるか、青色申告の決算書とe-Taxまで同じソフトで進められるかを、公式サイトで確認してください。
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おわりに|新規案件から単価を整える
計算した単価が今より高くても、慌てて全社へ同時に値上げを伝える必要はありません。
- 新規案件から、新しい単価で見積もる
- 既存先には、契約更新や作業範囲が変わる時期に相談する
- 断られたときは、金額だけでなく作業範囲を減らす案も示す
単価を決めるのは、欲張ることではありません。まずは、ほしい手取り、必要な売上、請求できる時間、時間単価の4つを紙に書いてみてください。自分の数字があれば、相場に振り回されにくくなります。
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X(@tax_kiichan)でも、税金や暮らしのお金の話を書いています。のぞいてみてください。
※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。記事中の金額は概算例であり、実際の税額・保険料は所得、家族構成、お住まいの市区町村などによって異なります。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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