会計ソフトで前年の仕訳を直したい|申告済みの年は所得が動くかで3つに分ける

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こんにちは、税理士のきいちゃんです。

「今年の帳簿をつけていたら、去年の仕訳の間違いを見つけました。確定申告はもう終わっています。会計ソフトで去年のデータを直していいんでしょうか」

答えは、去年のデータを開く前に、その間違いで去年の所得(利益)が動くかどうかを見る、です。動かないなら、申告書の数字はそのままなので帳簿の整理だけで済みます。所得が増えて納める税金も増える間違いなら修正申告、所得が減って納めすぎになる間違いなら更正の請求で、申告のほうをやり直します。会計ソフトの操作は、この3つのどれに当たるかが決まってから考えてください。

実務で毎年いらっしゃるのが、「ソフトで去年を直したら、今年の開始残高まで変わってしまった」というご相談です。先に分岐を決めるのは、この二次被害を防ぐためでもあります。

分岐1:所得が変わらない間違いは、帳簿の整理だけで済む

消耗品費と雑費の付け間違い、補助科目(取引先や口座)の選び間違い、摘要の書き損じ。経費も売上も合計は変わらないので、申告書の収入金額と所得金額は1円も動きません。申告のやり直しは不要です。

帳簿の整え方は2通り。去年のデータは触らず今年の帳簿を正しい科目で続けるか、去年の期間制限(ロック)を一時的に外して直すかです。去年を直すなら、直したあとの決算書の収入金額と所得金額が、提出した申告書の控えと一致しているかを必ず見直してください。科目の内訳が変わるだけなら問題ありません。所得金額がずれていたら、それは「所得が変わらない間違い」ではなかったということです。

そして、直す前に貸借対照表の期末残高を控えておいてください。未払金と事業主借のような貸借科目の付け間違いは、所得は変わらなくても期末残高が動き、今年の開始残高がずれます。

分岐2:所得が増える間違いは、修正申告

売上の計上漏れ、同じ領収書の二重計上。納めた税金が少なかったケースです。修正申告を出し、差額の税金を納めます。

気になるのは加算税だと思います。税務署から調査の事前通知が来る前に自分から修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません(事前通知のあとは新たに納める税額の5%、調査を受けたあとは10%が原則。50万円(当初の申告納税額のほうが多ければその額)を超える部分は5%上乗せ)。ただし延滞税は別で、法定納期限の翌日から納めた日までの日数で計算されます。令和8年(2026年)中の割合は年2.8%、修正申告書を出した日の翌日から2か月を過ぎた分は年9.1%。割合は年ごとに変わるので国税庁のページで確認を。期限内申告から1年以上たってからの修正申告では、計算期間から除かれる期間があります。

法定納期限から1年以内なら、見つけたら早く出すほど延滞税は少なくて済みます。修正申告と更正の請求の分かれ目はこちらの記事に書いています。

分岐3:所得が減る間違いは、更正の請求

経費の入れ忘れ、売上の二重計上。税金を多く納めていたケースです。更正の請求という手続きで、納めすぎた分を返してもらいます。期限は、原則として法定申告期限から5年以内。令和7年分(2025年分)の申告なら、2031年(令和13年)3月まで時間があります(確定申告の義務がない方が還付申告をしていた場合は、その提出日から5年です)。

やりがちな近道が、「去年入れ忘れた経費を、今年の経費に入れてしまう」こと。これはできません。所得税は1年ごとに区切って計算するので、去年の経費は去年の経費です。今年に入れると、今度は今年の申告が間違いになります。更正の請求は、出せば自動で還付される手続きではなく、税務署が内容を確認してから認められるもの。入れ忘れた経費の領収書や請求書は手元にそろえておいてください。

会計ソフトでは「申告書を出し直さないなら、去年の収入金額と所得金額は動かさない」

分岐が決まったら、ソフトの操作です。やり方は大きく2つ。

1つは、去年のデータは閉じたままにして、今年の期首日付で直す方法。貸借科目のずれなら、期首日に「未払金/事業主借」のような振替仕訳を1本入れて残高を寄せます。修正申告や更正の請求をした場合も、追加で納めた所得税は事業主貸、還付された所得税は事業主借で今年に受けるだけで、去年の帳簿は触りません。

もう1つは、去年のロックを外して仕訳そのものを直し、次年度繰越をやり直す方法。帳簿と申告書を両方そろえ直す分岐2・3では、こちらのほうが筋が通ります。ただし、クラウド会計では年度をまたぐ修正のあとに開始残高の再取り込みや繰越のやり直しが必要になることがあり、忘れると今年の帳簿が去年の期末とつながりません。開始残高が合わないときの確認手順はこちらにまとめています。

どちらを選んでも、原則は1つ。申告書を出し直さないなら、去年の決算書の収入金額と所得金額は動かさない。科目の内訳や貸借対照表の内訳が変わる修正をしたときは、提出した控えとの差を控えておいてください。提出した申告書と手元の帳簿が別の数字になっている状態が、あとでいちばん困ります。

きいちゃんメモ

青色申告の65万円控除は、事業所得か不動産所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記(複式簿記)で記帳し、その帳簿から作った貸借対照表と損益計算書を添えて期限内に申告し、さらにe-Taxで送信するか、仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件で保存して届出をしていることが要件です。帳簿が正しいことが出発点なので、間違いを放置しないでください。

税理士に見てもらう目安

次のどれかに当てはまるなら、自分で直す前に相談することをおすすめします。間違いの内容・申告書と決算書の控え・期末残高の3点を持っていくと話が早いです。

相談したほうがよい3つ

  1. 動く所得の額が大きい(翌年度の住民税や国民健康保険料にも波及する)
  2. 消費税の課税事業者である(売上や経費の修正が消費税の申告にも連動することがある)
  3. 間違いが複数年にまたがっている(1年分だけ直すと別の年とつながらない)

よくある質問

修正申告や更正の請求は、会計ソフトから出せますか?

ソフトやプランによって対応が分かれます。対応していなければ、国税庁の確定申告書等作成コーナーで修正申告書や更正の請求書を作成し、e-Taxか書面で提出できます。去年の帳簿を直した場合は、その数字と提出書類の数字がそろっているかを最後に突き合わせてください。

金額が小さくても、申告をやり直す必要がありますか?

所得が増える方向は、金額で判断せずに修正申告をしておくのが安全です。放っておいて税務署から更正を受けると、新たに納める税額の10%(原則)の過少申告加算税と延滞税がかかります(新たに納める税額が1万円未満ならどちらもかからず、計算した額が加算税5,000円未満・延滞税1,000円未満なら徴収されませんが、本税を納める義務は残ります)。所得が減る方向の更正の請求は権利なので、手間と戻ってくる額を見て判断してかまいません。

マネーフォワード クラウド確定申告

年度を閉じたあとに前年の仕訳を直すと、次年度の開始残高への引き継ぎと、決算書・申告書の作り直しが一度に必要になります。帳簿と申告書の作成が同じデータでつながっているソフトは、直した結果がどこまで波及したかを追いやすいのが利点です。年度をまたぐ修正と繰越の扱いは、公式サイトで確認してください。

おわりに

去年の間違いに気づけたのは、今年の帳簿をきちんと見ているからです。やることは、所得が動くかを見て3つに分け、申告を直すなら申告を、帳簿を直すなら帳簿と開始残高を、セットでそろえる。気づいた月のうちに手を付ければ、どの分岐でも大ごとにはなりません。

記事の感想や「こんなときはどうする?」は、X(@tax_kiichan)で気軽に声をかけてください。

※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度にもとづく一般的な情報提供です。延滞税の割合は年ごとに見直されます。個別の税務判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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